『けむしのはなし』
春の朝、小さな毛虫は草の上で目覚めました。
彼女は周りを見回して、
美しい色の花々と葉っぱたちに囲まれていました。彼女は幸せでした。
毛虫は何か新しいことを始めることを決めました。彼女はずっと前から夢見ていた翼を持つために、たくさんの葉っぱを食べ始めました。
彼女は一心不乱に食べ、成長していきました。
やがて毛虫は、彼女が心の底から望んでいた翼を手に入れました。
彼女は自由に空を飛び、花々の香りを楽しむことができました。しかし、彼女は大切なものを失ったことに気づきました。
彼女は自分が幼虫だった頃の友達や、彼女を育ててくれた葉っぱや草たちとのつながりを失ってしまったのです。
毛虫は、彼女の新しい世界で孤独を感じ、心が虚しくなりました。
彼女は、幼虫の頃に戻りたいと願いましたが、
幼虫に戻ることなどできるはずもありません。
蝶々はきょうもひとりさみしく、ひらりひらりと飛んでいました。