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【読書会報告】『挑発する少女小説』読書会#2「若草物語」

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

猫の泉 読書会では、『挑発する少女小説』(斎藤美奈子/河出新書)のオンライン読書会(第二回:若草物語)を2021年9月26日に総勢9名で行いました。今日はそのご報告です。

●はじめに

『挑発する少女小説』が扱う少女小説とは?

・魔法使いと決別すること――バーネット『小公女』
・男の子になりたいと思うこと――オルコット『若草物語』
・資本主義社会で生きること――シュピーリ『ハイジ』
・女の子らしさを肯定すること――モンゴメリ『赤毛のアン』
・自分の部屋を持つこと――ウェブスター『あしながおじさん』
・健康を取り戻すこと――バーネット『秘密の花園』
・制約を乗りこえること――ワイルダー『大草原の小さな家』シリーズ
・冒険に踏み出すこと――ケストナー『ふたりのロッテ』
・常識を逸脱すること――リンドグレーン『長くつ下のピッピ』

読書会参加者は、毎回『挑発する少女小説』の指定の章を読むことが必須ですが、原作『若草物語』も読んできてくださる方が大半で積極的な意見交換ができました。

●『挑発する少女小説』の「若草物語」の章の読書会

読書会での議論について、『挑発する少女小説』に書かれた指摘事項をきっかけに議論したトピックをご紹介します。

◎次女・ジョーの苦悩:主人公は「男の子になりたかった」女の子

『挑発する少女小説』で指摘されるまで、ジョーの苦悩がこんなに深いとは思いませんでした。

四人姉妹のそれぞれが、女の子らしい気質で居場所がちゃんとあるのに、ジョーだけが、女の子らしさに反発しつつも、他のものにもなれないことに一人悩みます。猫背なのは女性としてわりと背が高いからです。

従軍中の父が不在の間、一家の「長男」として振る舞おうとしても、隣の家の男の子ローリーに家族に関することで、先を越されたりして挫折を味わいます。

先を越された原因は、知らず知らずのうちに「従順であること」が規範になっていたジョーは、ローリーのようにユーモアと柔軟さのある判断ができなかったためです。大人になって読むと、そんなことにも気がつきます。

◎「大人の男」がいない少女小説

なるほどの指摘です。姉妹の父親は南北戦争に牧師として従軍していて不在です。

唯一、物語の後ろの方で、長女メグの婚約者として大人の男が登場しますが、ジョーにギッタギタに嫌われます。

隣の家の男の子・ローリーはお金持ちの家の子ではありますが、15歳のみなしごで、少女たちに脅威を与える存在ではありません。

ただし、読書会では、15歳の少年なんて実は性欲もあるはずで、このような描かれ方は如何なものか…という指摘もありました…。

◎少女小説にはヘタレな父親がつきもの

確かに!『小公女』のセーラの父親や、友人に「騙されて」心痛で亡くなったのでした。そのせいで、セーラは女中奉公をする羽目になります。

『若草物語』の父親も、友人を救おうとして一家は「貧乏」になったようです。

このように、父親というのは友人を救うがあまり家族を危険にさらすことがあるあるのようです。

でも、そのおかげで少女たちは、自分らしく生きる道を切り拓いてゆくんですよね。

◎(二度目のクリスマスの)マーチ夫妻のしょぼいメッセージ

この指摘には、賛否両論でした。

わたしは賛成側で、子どもの頃にここを読んでもやもやした気持ちは忘れられません。ジョーの努力と苦悩は、なんだったの? 一時の気の迷いということにしてフタをして終わらせるつもりなの? …って思ったのを覚えています。

一方、否定側の方は例えば、
「マーチ婦人のケア労働によって、父親不在の家庭がこれだけ愛情に満ち、子どもたちの経験と試行錯誤を尊重しながら、生き生きと生活する様子に感動した」それなのに、そんな言い方はないのでは? とおっしゃいます。

実はその点については、わたしも否定側の方と同じ様に感動しました。
だから、マーチ夫妻のメッセージを「しょぼい」と感じるかどうかは、物語に由来があるのではなくて、それぞれの読者が日ごろから感じていることや体験からくるものなのかもしれない…と考えました。

◎ハンナについて

家政婦のハンナの人種のことが話題になりました。
ハンナが書いた手紙から、学歴は無くても家政婦としてプロフェッショナルな職業婦人…と受けとめた方がほとんどで、白人と思っていた人もいました。
でも、以前放送されていたアニメ番組ではハンナは黒人として描かれていたそうです。原作を読む限り、ハンナが黒人だと示す記述が無いように感じたので、不思議に思いました。分かる人には分かるものなのでしょうか。

その他、毎度の「痛快な斎藤美奈子節」、そして「メグの結婚問題」「南北戦争」「ローリーとジョーの友情」「若草物語の現代性」等、楽しく議論しました。

その後、10月の読書会では、『ハイジ』の章を読みました。その様子は近日公開いたします…。

■本日の一冊:『挑発する少女小説』(斎藤美奈子/河出新書)

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