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【本】[第四章 カリュプソー] 『ユリシーズ 1-12』(ジェイムズ ジョイス、柳瀬 尚紀 (翻訳)/河出書房新社)

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

引き続き『ユリシーズ 1-12』の4章を読みました。
いま、どんどん面白くなってきまして、このまとめ書く時間を、むしろ読むのに回してどんどん先を読みたい気がするのですが、一方で、こんなにこんがらがった物語は、ゆっくり丁寧に読んで、そのときどきの感覚をメモするのもきっと楽しい…と悩みながら進めています。

第四章から「第二部」です。
1904年6月16日、時刻は午前8時~8時45分
場所は、リアポウルド・ブルーム(38歳)の家。
エックルズ通り七番地言われてもちょっとわかりませんけれど、市の北西部ですって。
時間が巻き戻っていますね。第一章のスティーヴンの朝ごはんと同じ時間にあたります。

章タイトルの「カリュプソー」は、ギリシア神話に登場する海の女神。意味は、覆い隠す者で、伝説的なオーギュギアー島の洞窟に暮らし、島に漂着したオデュッセウスを愛したそうです。また、オデュッセウス関係者です。つまり、スティーヴンのお父さんの愛人が登場する…?

〇第四章 カリュプソーの感想と粗筋

ブルーム氏は自分で朝ごはんを作っています。
人なつっこい猫の相手をしながら。わたしも猫好きいなのでここの場面が楽しい。作者のジョイスはきっと猫が大好きなんじゃないかな。

外出するときは帽子をかぶる習慣なんですね。
暑くなりそうな朝に、喪服を着てちょっと出かけるようです。

ブルーム氏はラーリー・オロークの店で、バーテンと話をします。
そういえば、日露戦争は、1904年(M37)2月~1905年(M38)9月だから、この日は日露戦争はじまったばかりの頃ですね。

ブルーム氏のお友達でサイモン・デッダラスという名の人がでてきます。この店での常連同士のようです。スティーヴンと同じ苗字で、Sがつく名前。お父さんかな?
今日はお葬式があって、亡くなったのはディグナムさんのようです。

ドルーガックという豚肉屋で買い物するため並びます。
前に並んでいる隣の家のもりもりしたお尻の女中が好みのタイプなんですね。勝手な妄想がどんどん膨らんでいっています。面白い。

女中さんは買い物を済ませて、ちらりとも自分を見ずに去ってゆきます。そりゃそうでしょう。後ろに並んだ人なんか普通視界に入らないもの。なのに「無視された癪な思いが火照る」のですって。ずいぶんな「かまってちゃん」だなぁ。

ブルーム氏はつねに、商売に関すること、食べ物に関する事、女に関することを考え続けているタイプのようです。

なにか思い出したくないこと、考えたくないことがあって、気をまぎらわしているようにも感じます。というのは、時々怖いイメージが混ざるので。38歳にして早くも老いへの恐怖かな。友人が亡くなったからかしら。

ブルーム氏が帰宅すると葉書と手紙が届いていました。
手紙は自分と妻に1通ずつ。ひとつは娘からの手紙で、もう一通は妻へのボイランという男からの手紙。ブルーム氏はちょっと気にしています。
それからブルーム氏は妻のいる寝室に食事を運びます。妻は歌を歌うようです。

妻はベッドに横たわったまま夫に指図しています。女神と下僕な組み合わせに見える夫婦です。もしかして、カリュプソーに割り振られているのはこの妻ですかね。

妻はベッドで、夫は別のテーブルで朝食をとります。ブルーム氏は、娘からの手紙を読みます。遠くで暮らしている。15歳の娘、生まれてすぐ死んだ息子が生きていたら11歳。

トイレは離れにあるようです。ブルーム氏は庭を通りぬけます。あの時代は、水洗じゃなかっただろうからね。トイレの中で新聞を読みます。
マッチャムって誰でしょうか。太字で2回も出てきたなら結構関係ある人ですよね。
ブルーム氏もスティーヴン同様になにか書くのが好きなようです。
妻の言葉をカフスに書きつけたことがあるといいます。
新聞の懸賞小説の出来、それとも懸賞金、いずれなのか両方なのかわかりませんが、ブルーム氏は深く嫉妬してそれを破いて便所紙にして拭きます。

ボイランという男の存在がブルーム氏の心の中で大きくなってきます。
8時45分の鐘が鳴ります。

〇気になった言葉など
・スカプラリオとはワンピみたいな修道士用の服のようです。
・葬式の時間は、新聞に告知されるようです。亡くなったディグナムは有名人だったのかな。
・図書館の本の貸し出しに保証人が必要らしい。 
 
〇まとめ
スティーヴンとはまた違うタイプのブルーム氏の心のつぶやきを読みました。
スティーヴンのお父さんぽい名前が出てきました。友人の物まねなんかをして、結構愉快な人っぽいです。
浮気を「隠して」いるっぽい妻がカリュプソーなのか、女神的な存在がカリュプソーなのか、今後が気になります。

■本日の一冊:『ユリシーズ 1-12』(ジェイムズ ジョイス、柳瀬 尚紀 (翻訳)/河出書房新社)


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