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【100分de名著】『論語と算盤』(渋沢栄一) #4

こんにちは、『猫の泉 読書会』主宰の「みわみわ」です。

4月の100分de名著は渋沢栄一『論語と算盤』でした。
第4回目「対極にあるものを両立させる」の録画を見ました。

これまで、渋沢の説く「高い志を持つこと」「世界に対して信用を得て経済を回すこと」「資本主義ではない合本主義」について学んできました。

でもね、渋沢栄一(1840-1931)は太平洋戦争も終戦も知らないで亡くなっているので、現在の日本の状況を見たら、どんなことを言うでしょうか。「こんなはずじゃなかった」なんて言うような気もします。

テキストを読んで、面白かったところをまとめます。

〇長所と短所をよく知って使う

〇「論語」
・長所:道徳を学ぶためだったら、宗教でも良いようだが、宗教には奇蹟がつきもの。理性や現実を超越した、論理的に説明のできない出来事は「論語」には無い。
・短所:技術の進歩や社会の変化によって、時代に合わなくなっている部分がある。男尊女卑など。

〇「算盤」
・長所:強くて繁栄した日本をつくることができる。
・短所:優勝劣敗が進み、貧富の差が拡大してゆく。

〇「論語」は「理想的な政治家や官僚になるため」の道徳

渋沢はそれを商業用の論語として読み替える。つまり、

ー孔子は「正しいと認められた富」ならば追及して良いと言っている

わたしは、ここはちょっと不安要素なんですけれど。
だって、「誰が」正しいと認めるのでしょう。「どのように」追及するのでしょう。曖昧ですよね。曖昧だからこそ、志の高い人には向いているということでしょうね。


〇「論語」を「算盤」で補う例
 男尊女卑を正すために、渋沢は「経済合理性」という方便を使ったという。実は渋沢は女性の社会進出を、経済合理性という視点だけではなく、女性参政権にも同意していたのだが、「算盤」的視点で言ったのだという。

でもわたしは、ここも気になります。
渋沢が女性活用を「算盤」視点で利点を述べた。それが「方便」だと渋沢本人はそう思っていたとしても、「方便」だと思わなかった人が多いのでは。

現在もなお女性活用が基本的に「算盤」目線なのは、渋沢の方便を方便と受けとめず、本気に取ってしまった人が多いのが原因なのでは…なんて思いました。
そして、生産効率でのみ女性を評価することに慣れてしまえば、やがて男性同士も生産効率で評価するのが普通になって、現在にいたるのではないでしょうか。

〇一つの考え方だけをすべてにあてはめるのは危険
 純粋であることは危険
 ドラッカーは純粋な人としてヒトラーを挙げている(オーストリアで雑誌記者としてヒトラーに何度も取材をしていた)
 場合によって必要となる考え方は異なる。

〇どっちつかず
「論語」だけ、「算盤」だけ、ではなく、
場合に応じて両方をバランスよく使い分けることを渋沢は提唱しています。
例えば、ビジネスの敗者を救済する手立てを用意することですね。いまでも、なかなか寛容だとはいえません。パイの奪い合いになっているのは貧しさへの悪循環に見えます。

■本日の一冊:NHK 100分 de 名著 渋沢栄一『論語と算盤』(守屋 淳/NHK出版)


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