見出し画像

ピアノ

毎日ピアノを弾く。

ピアノといっても、電子ピアノで、
古いクラビノーバだ。

夫はこれをピアノと呼ばない。
エレクトーン、と呼んでいる。

グランドピアノがある家で育った夫にとって、
電子ピアノは、ピアノではないのだろう。

音は出さない。
ずっとヘッドフォンで聞いている。

音は怖くて出せない。

弾き始めた頃に音を出してみたら、夫が、
そんな曲、姉が子どもの頃に弾いてた、とか、
ちょっとでも間違えるとバカにしたから。

義姉は高校から音大で、
ピアノなんてなんでもスラスラ弾くだろうし、
完璧主義っぽいから間違えもしないのだろう。

こっちは雑草育ちだ。

ピアノを習っていた小学生の時の4年とちょっとの期間には、
自分のピアノを買ってもらえず、

借り物のピアノはテレビの後ろに置いてあったし、
練習って、どうやってしたらいいのかわからないままだった。

借り物のピアノが家からなくなって、
通っていたピアノ教室もやめることになった。

そのあとなぜか母親が、
エレクトーンにしなさいと言い出して、
買い与えられたのは、型落ちの中古だった。

今思えば、エレクトーンを始めた時、
自分の希望は一つも入ってなかった。

それでも、中学生から高校生のあいだ、
エレクトーンは3年くらい習った。

社会人になってから、
自分で新しい機種を買って、ヤマハに通っていた。

趣味とか、特技になること、

自分にできそうなことが、
ほかに思いつかなかったのだ。

実際は、できていない。
能力になっていない。

やったことがある程度。
浅い経験だけだ。

エレクトーンは、
まったく上手にならなかった。

習い事として年数ばかり経っていたけど、
級の検定試験は1度しか受けれていない。

本当に弾きたかったのか疑問だ。

本当に、
自分にできそうなことが、
ほかに思いつかなかっただけだった。

エレクトーンを手放したとき、
すっきりした。

部屋もすっきりしたし、
気持ちもすっきりした。

エレクトーンより、
ピアノが弾けるようになりたかった。

本当は、ピアノの音のほうが、
ずっと好きだった。

でも、本物のピアノには手が届かなくて、
エレクトーンを売ったお金で買える、
電子ピアノを買ったのだった。

結局、音は出さずに弾くから、
電子ピアノで正解だった。

今は、
子どもの頃に弾けなかった曲を、
ちょびちょび練習してるに過ぎない。

それでもやっと、小学生に追いついた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?