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△55角~73角というニッチな袖飛車があるらしい

 数年前と比較して格段に袖飛車を指す人口が増えており、その影響で多くの袖飛車対策が生まれる事になった。その一つに下図のように▲58金~66歩~67金を急ぎ、7筋の歩を切らせない指し方がある。これは引き角にして高美濃~銀冠を目指す構想だ。しかしここで△55角!といきなり飛び出す手がある。

基本図

1.

 まず最初に横歩を取に行く手順を読むと、以下のような進行になる。

 (基本図より)▲24歩△同歩▲同飛△22銀▲34飛△23金(次図)

以下▲35飛△44角▲25飛△34金
以下▲28飛△26歩打▲38銀△33銀
次の△22飛で先手苦しい

 これは不本意な展開になりそうだ。では横歩を取らずに駒組を進める(=飛車を24に置いたままにする)とどうなるのか?

2.

以下▲56歩△82角▲78銀△33桂
以下▲28飛△42飛▲79角△41飛
以下▲48銀△21飛▲57角△25歩打
以下▲68玉△23銀▲69玉△24銀
これは先手が何の策も講じなかった場合で、▲46角と指せないのが痛い(△88角打があるから)。本譜の先手はその筋を消しつつ玉を囲いにいった。なお、この制約がある関係上、9筋の端歩の突き合いがあると微妙に話が変わってくるのだがそれはまた別のお話。

 △42飛~41飛~21飛のルートは振り飛車を連想させる。袖飛車の影も形も無いが……。上図の形勢で先手が悪いとは思わないが、大駒が使いにくく指しにくさを覚える。

 もう一つ厄介な袖飛車側の途中変化として、▲56歩に△33金!(下図)という阪田王将も顔負けの切り返しがある。

以下▲28飛△88角▲78銀△23銀
ダイレクトに△22飛と回れるのが特徴

 例によって飛車先を逆襲される形になる。この瞬間は僅かながら先手が良いとは思うものの、角の利きでしばらく▲36歩と指せないのでリードを拡大する具体的な手順が難しい。ただ前述の進行(△42飛~41飛~21飛)よりは選びたい変化。

 ここまで挙げた例は先手も戦えなくはなく、玉の固い手前側を持って指してみたい人もいると思う(少なくとも自分はあまり指したくはないが、実戦的には先手勝ちやすいだろうと感じる)。しかし飛車先を詰められているため指しやすさという観点ではやや難がある。個人的な方針として、相手が序盤早々に変な手を指してきたら変化の少ない分かりやすい局面に持っていきたい。
 とすると、飛車先を切るのが局面の複雑さを増して問題だったと言える。
 では飛車先を切らないで指し進めたらどうなるのか?
 結論から言えば、既出の戦型と合流する事にになる。

3.

 まず後手が6筋に争点を求めようと右四間にした時について。

以下▲56歩△73角▲79角△42玉▲57角△62銀
以下▲68玉△64歩▲79玉△63銀▲88玉△54銀
以下▲36歩△62飛▲37銀△44歩
後手側は自然と四手角のような駒組になる。
以下▲35歩から少しずつ模様を良くできそうではある。

 上図局面について形勢をどうみるか。一目、先手は仕掛けに神経を使うのは間違いないが、後手も陣形が立ち遅れているのでまだ余裕がある。玉の固さもこちらに軍配が上がるので中々良いのではと思う。

4.
 次に角道を開けたままにしてきた場合。後手が飛車を使うためには居飛車に振り直す事になる。

以下▲79玉△85歩▲76歩△82飛
以下▲77銀△52金▲78金△31玉▲88玉△44歩
先手が次に指す手が難しい。
例えば▲46角△同角▲同歩は先手陣の方が角打ちの隙が大きく指したくない。が、自陣が土井矢倉ならむしろ積極的にそうしたいまである。
また、▲66歩~36歩~47銀~37桂を目指すのは△64歩~86角~73桂~65歩の仕掛けの時間を与えてしまう(別にこれでも悪いという訳ではないが、先手番としてはやや不満だと思う)。
△73角型の矢倉戦は急いで右銀を66まで繰り出して角頭をいじめるのが急所なのだが57角が邪魔している為それができない。

 先手は元々相手に歩を切らせないというコンセプトなので、相手が居飛車に戻してきたら矢倉を選択。普通の相居飛車戦なので特に語る事はないが、先手は▲65歩~66銀で上部開拓する……のが定説だったはず(うろ覚え)。

 という訳で(ここ周辺を書き出すと長くなりそうだから)今回はここまで!

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