見出し画像

今日のひとこま

今日は職場で月に数回ある入居者の訪問診療日でした。

最近はコロナの兼ね合いで、なるべく手短に診察など行っていますが、そんな中、採血をする方が数名いまして、そこでドラマが始まります。

今日の主人公をAさんとします。Aさんは毎回採血時は大変で、とにかく看護師泣かせで、今日も看護師からのあいさつから始まり、採血に入る前にまずはスタッフ一同で盛り上げて、盛り上げて気分を挙げます。

盛り上げを終え、Aさんニコニコですが、看護師の手元から採血用の注射針などが見えた瞬間、突然笑いの場から戦慄の悲鳴に館内が変わります。

館内ではうたたね中の方や、穏やかに談笑している方、静かにTVを観ている方など、それぞれが思い思いの時間を過ごしています。

やめてー!死ぬー!助けて!!
繰り返しこだまする。

悲鳴から罵声、抵抗、スタッフのブロック、これも当人のためのことなんですが、当の本人からはまさに何が何だか分からない世界にいざなわれ、まさに恐怖の何物でない訳です。

私何も悪いことしてないのにー!どうしてー?助けて!!」      
館内の入居者はびっくり。私もびっくり!
(昼食作りで台所にいて)

時間にして2,3分のことですがAさんにしたら果てしない時間。

毎回のことですが、この採血など医療行為に対して落ち着ける人と、そうでない人がいます。

Aさん、きっと健康だった(認知症発症前の)頃は、我慢できていたことでも、今のAさんは本来の自分に戻り注射なんて死ぬほど嫌だったのか、 もしくは遠い記憶の中、トラウマなぞが湧き出たのか?

こちらとしては分かりかねます。
私は淡々と昼食のカレーを作ります

何はともあれ採血は無事?に終わり、しばらくはAさんの暴言や叫び声が 館内を轟かせていましたが、次第に元の静かな日常へと変わっていきます。

私は認知症介護の場で働いていますが、

”一般の人がこの世界に入り込んだらどうなのかな?”

と思うことが有ります。

もはや私自身が、この世界に入る前の記憶が定かではないので、感覚がマヒしていますが、この病気の世界観は毎日新しい発見と驚きに満ちています。

認知症の世界
人それぞれ違います

それは今を生きている私たちの世界が違うのと同じで、認知症により各個人が歩み、その人の生きてきた歴史の埋もれし記憶の断片を垣間見ます。

その記憶は決して表面化しなかったであろう
恥ずかしい思い
嫌なこと
激しい怒りなど…

記憶の奥底に封印されたものが、死を前に改めて表出した、本人を現すもうひとつの世界。

そしてまたその行動は
滑稽で
笑えて
切ない
世界でも有ります。

今回はこれまでです。

最後まで読んでいただきありがとうございます。 

また次の記事で会いましょう。

サポートしていただける方へ、大変ありがたく思います。今後の創作、記事への執筆活動の励みと勇気を頂けると思いますので、よろしくお願いします🎵