ビットコインの価値は遠からずゼロになる②
世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がビットコインについてBridgewaterのホームページ上で記事を書いているので紹介したい。
ダリオ氏、ビットコインを語る
コロナ禍において株価を含む様々な資産価格が上昇したが、その中でも突出して上げ幅が大きいのがビットコインである。ビットコイン価格のチャートは次のようになっている。
コロナ相場初期の底値から6倍になった。
ビットコインについてダリオ氏はどう語るだろうか。ダリオ氏は次のように述べている。
ベタ褒めである。実際、ビットコインを発明したサトシ・ナカモト氏の論文はかなり卓越したものだ。ビットコイン賛成派と反対派のどれだけがこの論文を読んだだろうか。論文はここから入手できる。原文は英語で、日本語版もあるようである。
一方で通貨としてのビットコインをダリオ氏はどう評価するだろうか。ダリオ氏は次のように続ける。
ビットコインで多くの人が大金持ちになっているが、ダリオ氏はそれを無から生み出された富だと言う。しかしダリオ氏が広く使われている紙幣もまたビットコインと同じく錬金術だと言っていることに注目したい。
優れた金融家であれば誰もが理解するだろうが、信用創造とは本質的にそういうものなのである。金融の本質を知らない人間だけが紙幣を有難がりながらビットコインを否認する。それらは同じものである。片方を持ち上げて片方を貶める根拠は一切存在しない。
ビットコインは何故使われるのか
しかしビットコイン自体に本質的な価値がないことは単なる事実である。ビットコインはデータの集まりに過ぎないが、ではビットコインは何故買われるのか。ダリオ氏は次のように続ける。
日本やアメリカを含め世界中の政府が紙幣を節操なく印刷し続けている。数が増えれば1つあたりの価値が薄まるのだから、そのコストを払うのは紙幣を持っている人々である。
そのコストは増大する税金として支払うことになるのか、インフレによる貯蓄の実質的な目減りによって支払うことになるのかは大した問題ではないだろう。日本で起こっているのは前者であり、アメリカで起こっているのは後者である。日本の所得税と社会保険料と消費税を足し合わせると何十パーセントになるのか、計算したことのある人はいるだろうか。給与所得者の懐にはほとんど何も残っていないのである。
日本政府のほうが徴収者としては正しい選択をしているのかもしれない。徴税は避けられないが、インフレは避けられるからである。インフレを避けるためには法定通貨を捨ててゴールドやビットコインなど他の何かを買う必要がある。ダリオ氏が需要というのはそういう需要である。
また、ダリオ氏によればビットコインにはもう1つの需要があるという。
ダリオ氏が何について語っているのか読者にはお分かりだろうか。資産に関してプライバシーを守るもので、その市場規模が比較的小さいものとは何か。プライベート・バンキングである。
プライベート・バンキング vs ビットコイン
プライベート・バンキングは富裕層を対象にその莫大な資産の秘匿と節税をアドバイスする産業であり、歴史的にはスイスが有名であった。
当然、こうした産業は政府に狙い撃ちにされる。それは貧困層に再分配するためではなく、例えばオリンピック・スタジアムを建設するためである。(そもそも富の再分配も実際には強奪だが、それはここでは置いておこう。)
政府に狙い撃ちにされるがゆえにプライベート・バンキング業界は顧客を極一部の富裕層に絞り細々とやってきた。しかし実際にスイスのプライベート・バンキング業界はアメリカのIRS(日本の国税局に相当)に狙い撃ちにされて実質的に消滅した。スイスのプライベート・バンキングは別の機会で説明しよう。
さて、ダリオ氏はこれら2つの需要、つまり富の貯蔵手段と秘匿手段としてビットコインは実際の需要があると主張する。彼はビットコインの需要について次のように結論付けている。
ダリオ氏はビットコインが政府から人々を守ろうとしたスイス銀行界の夢を継ぐと見ているのだろうか。それが実現するかどうか私には分からないが、暗号通貨と政府が本気の戦争に突入する未来がどうやら現実のものになってきた気はしている。暗号通貨が多額の資産を秘匿するとき、それは正真正銘の戦争となる。戦争とは資金を奪うために行われてきたからである。
ダリオ氏のこの面白い投稿には続きがあるのだが、ここで一旦切ることにしよう。
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