初めて恋に落ちた。


中学1年生。長いランドセルを背負う期間が終わって、今度はずっと憧れていた制服にスクールカバン。部活に勉強、恋に友情。これから背負うものはランドセルなんかより、ずっと重たいものと感じていた。でも楽しみが大きかった。少し大人になれた気がしたから。

初めての集会。中学1.2.3年、全学年が集まる。やっぱり3年生は大人だった。私はまだまだ子供。いつになったら大人になれるの?

中学生の頃は、思春期真っ只中であり、スカートは短くしたいし、ズボンは腰パンしたい時期。前髪にピンを止めたい時期。見た目に対して小さなプライドを持つ時期だった。私自身はそんなに意識はなかったが、周りに合わせてスカートを短くしたり、そうしなきゃ着いていけなくなる…!という焦りが強かった。

集会終わり、必ず風紀委員の服装チェックがある。風紀委員の人自体も、この時間に関してはやる気がない。まず、風紀委員の人自体そんなにきちんとした服装ではないじゃない。と心の中でそう思っていた。

でもその日は違った。
一人、みんな腰パンの中、ちゃんとズボンをあげている人がいる。その人、注意してる。腰パンの人を。ダメだぞって。え、そんな人いるの?ってびっくりした。私は顔を見る。

その人は綺麗だった。
とても、綺麗だった。

M先輩。テニス部。1個上。彼女持ち。

その日から2カ月ほどで得た情報。M先輩は、本当にカッコよかった。顔だけじゃない、真面目な姿が好きだった。優しそうな山芋みたいな人。山芋ってふわふわしてて白い。まさにそのような人だった。

恋に落ちていた、13歳。


秋風が吹く頃、放課後の私は部室の窓から見えるテニスコートを眺めていた。

先輩を見ていた。

先輩の彼女はたまたま私と同じマンションに住む、同じテニス部の女の子。年は先輩と同じだ。その子は決して可愛いと言えない気の強い女の子。…いや、もしかしたらとても可愛かったのかもしれない。先輩にとっては、愛おしいほど可愛かったのかもしれない。

きっと彼女も先輩の真面目で優しそうな雰囲気に惚れたのだろう。

大人になった今、気になる人がいたら、飲みに行って、交流して、お互いが合えば、交際する。

でも中学生の私は、先輩を見つけるだけで胸が高鳴った。
胸の奥が熱くなって、もっと話したい。
もっと見つめていたい、と純粋に思っていた。

封印していた恋。

結局先輩と同じ高校には行けなかったけど、先輩と出会えただけで、私は最高に幸せだった。

貴方に出会えて良かった、と心から思える恋。

またどこかで会えたら、
きっと貴方を好きになる。


#小説
#恋愛



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