4歳児が自発的に指しゃぶりをやめた

4歳になった息子は、実はまだ指しゃぶりをしている。保育所からは3歳になったすぐの段階で「指しゃぶりが問題ですね」と言うようなことを言われた記憶がある。3歳児検診の時も「指しゃぶりはやめさせたほうが良いでしょう」と言われた。

うちでは本人の意思に反することを無理やり親が押し付けることをNGにしている。その方向で子育てしていると、言葉や力で威圧して物事を進めることができないので、いちいち時間がかかる。さらに妹が生まれてからは生活に関する色んなこと、歯磨きとかお風呂とか就寝とかの時間が倍ぐらいかかるようになった。

息子に集中するためにと思って娘を寝かしつけると、息子が起こす。娘の相手をしていると、今度は息子が畳にお水をこぼしたりクレヨンで壁に絵を書いたり高くて危ないところから飛び降りたり娘の口を手で塞いたりし始める。一つ間違えば、あっちも泣くしこっちも泣く、みたいな地獄絵図にすぐ、成る。私もその絵図に出てきそうな死人の顔にすぐ、成る。

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あまりにそれが続いて、とうとう私の背中から鬼が飛び出して、大きい声を出したり殴ろうとしたり首を閉めようとしたこともある。その度に私は「必殺深呼吸の術」とか「必殺100から3ずつ引いていく術」時には「必殺その場から離れる術」を使って、鬼を私の背中にそっと仕舞い込むことを繰り返してきた。怒らずに幼児を育てるのはほぼ修行といって良い。

それでも私たち夫婦はここは踏ん張り時、と思って「押し付けない」ことをがんばっている。何度も書くが、親の方が何もかも、圧倒的に強いからだ。子供がどれだけ「ダメなこと」をしても、家庭内における圧倒的強者である私たちは、子供たちを抑圧してはならないと本気で思っている。なぜダメなのか、なぜ自分がそれをやってしまうのか、自分で気がついてもらわないと何度もでもやるし、親が力でやめさせれば隠れてやり始めるからだ。自分で気がついてもらうためには、親は子供の声に耳を澄ますべきであって、子供の生態に詳しくなるべきであって、どうしても怒ってしまうならそれは自分のアンガーマネージメントに問題があると考えたほうが良い。

だからこの指しゃぶりにしても、歯並びが悪くなるとか、口ポカンが加速するとか、色々問題が起きることもわかっており、私も「なんで指を吸うのかなあ?」とか「指を吸うのを100数える間だけ我慢してみようか」とか色々働きかけはしていたものの、息子は息子で「だって吸いたいから」とか「ムーリー」しか言わず、中々、止めるには至っていなかった。しかし実を言うと、近頃いよいよ保育所のお友達が、息子のよだれが汚いと言い始めたことを目撃したこともあって、私はちょっと不安になっていた。息子は指を吸っていない時は、口がぽかんと開くので、よだれが垂れまくるのである。

ええい、誰になんと思われようと良いでは無いか!人の目なんか気にするな!

と他人が言うのは簡単で、どんどん自意識を育っていく子供時代に、好きな人たちから「よだれきたねー」とか言われたら、息子はどれだけ傷つくだろうか。そう思うと居ても立ってもいられなくなった。とはいえできることは限られている。心配で口からカエルが飛び出しそうな過保護ママを背中に隠した私は、「よだれは自分でふこうか」とか「口閉じてね」とか声かけをするだけに留めていた。

そして唐突に昨日の夜。

我が家のいつもの夜の段取りは、風呂から上がったら裸のまま歯を磨き、読んで欲しい本をいくつか持ってきて、本を読み終わったら裸のまま眠ろうとする息子に服を着せる、と言う流れである。とはいえ息子が全部自分でこなすことはほとんどなく、この4歳2ヶ月になるまで、私も夫も、絵本選びに付き合ったり、おむつを履かせたり、パジャマを着せたり、ベッドでピクリとも動かない息子の歯を磨いたり、お風呂に抱えて連れて行ったり、とにかく本人が「やってー」と言ってきたことは全てやってきた。

そんな息子が突然、「自分で」パジャマに着替え、おむつをゴミ箱に持っていき、なぜか赤ちゃんの頃に読んでいた本を3冊持ってきて私に読ませたあと、突然、指を吸わずに目を瞑ろうとし始めたのである。

口に持っていきそうになる指を、口から離し、「うー、うー」と言いながら必死で眠ろうとする息子。なぜ突然、指しゃぶりを、自分から止めようとしたのか。それを聞くのも野暮だと思ったので、私は何かできることはないかと、背中をぽんぽんと叩き始めた。息子はとにかく頑張る。踏ん張る。だけど指を吸うことで4年間眠りについてきたのに、指なしで眠るなんて到底できない。でもそれを、やろうとしている。とても、とても辛そうだ。それをみていたら私、恥ずかしながら涙が出てそうになり、必死で堪えていたらついに私の中の甘やかし大魔王が背中からはみ出してきて「ジウくん、もし指チュッチュしないで寝れたら、明日お菓子いっぱい買おうな」と言ってしまった。息子は爽やかな笑顔で「お母ちゃん。ありがとう」という。

その笑顔に再び涙を誘われた私は、さらに続けた。

「ジウくんが頑張ってるのすごいと思うわ。お母さんもジウくん見習って頑張るわ」

「うん、お母ちゃんも元気いっぱい、強くなってね」

そしてついに、息子は指を吸わずに、眠りについたのである。時計を見れば、寝ようとしてから30分が経過していた。彼は自分で、指しゃぶりをやめた。私は、あまりにも感動してしまって、しばらく寝付くことができなかった。4歳が、自分の意思で、癖を手放した。

次の日、てか今日、私はまだ興奮していたみたいで、朝から廊下を何度も何度も雑巾掛けした。夫はおもちゃの部屋をせっせと掃除していた。息子はいつも通り「YouTubeみたい」と言って起き出し「お菓子食べたい」と言い出した。当たり前だが、突然パーフェクト・ガイ(ブレディみかこさん風に)になったわけではない。でもそれが、なんだか、嬉しかった。

息子ちゃんありがとう。私も自分の力で、元気いっぱい、強くなるからね。

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