復活のきざしが見えてきたシェアハウス運営

今現在、流行っているとは言えないけれど、シェアハウスが好きで運営を長くやっているので、シェアハウスの良さを紹介したい。

最初のハウスを開業したのは10年以上前になる。
そのころはシェアハウス自体、日本ではあまり知られていなかったので、競合はあまりなかった。
もともと、私が以前NZに留学していたときにシェアハウスで快適に楽しく生活していたので、将来はシェアハウスを作りたいと思っていたのだ。

あるとき、たまたま理想的な場所と間取りで手頃な値段の戸建てが売りに出ているのを見つけたときに、「これはシェアハウスにぴったりだ!」と思い、即買いした。

間取りを変更し、外壁と屋根の塗装もした。新しい壁紙や床材を自分で選んだ。バルコニーにはウッドデッキを敷いた。工事が終わると、家具家電や備品をそろえた。
入居者募集のため、当時唯一のシェアハウス検索サイトだった「ひつじ不動産」に掲載した。
この間、3ヶ月ぐらい。

「シェアハウス開業当初」

満室になるまでは自分がハウスの一室に住み、他の部屋に入居者を入れていった。入居シーズンの関係もあって、オープンさせてから満室になるまで4ヶ月ほど掛かった。

せっかく入ってもらった入居者には長く住んでもらうため、入居者同士の交流を深めてもらおうと、テラスでBBQをやったり、リビングで飲み会をやったりと、いろいろ働きかけた。しかし、東京の中心部という場所柄のせいか皆忙しく、初期メンバー以降は、入居者間で頻繁に交流することはなくなった。

その後、私はブラジルに行くことになり、帰国後は石垣島に住むことにしたので、完全な遠隔運営。最初だけ手間が掛かったけれど、満室になってしまえば運営は楽。

退去が出ない限りは、清掃以外することはあまりない。
清掃は外注が可能だ。
入居者の平均入居期間が軽く2年を超えているので、あまり入れ替えがない。そのため、遠隔運営でも問題ないのだ。

「管理が良ければ頻繁に物件に通う必要もない」

入居者同士がたいして仲良くなくても、居心地がよければ長く住んでくれる。
互いに他人を気遣いハウスルールを守れる入居者ばかりなら、大きな問題は起きない。
管理者が、入居者同士の交流を持たせようと、頑張る必要は全くないことがわかった。

長く入居してもらい、なるべく退去が出ないようにするには、入居者のストレスが大きくならないよう、問題が発生しないように先回りしていくこと、問題が発生したら素早く対処していくことだ。

「シェアハウスで起きたトラブルいろいろ」
居心地の良いハウス運営を目指していても、当然なんらかのクレームは起こる。
ハウスをオープンしてから今までに、入居者から以下のようなクレームがあった。
 隣の部屋からタバコの臭いがする
 部屋に異性を連れ込んでいる人がいる
 夜中に洗濯機を回している
 リビングルームから夜中に大きな声がする、等

いずれもハウスルール違反なので、クレームが出た同日のうちに当人にやめてもらうよう注意したり、悪質な場合は退去を促したりしてきた。

そのほか、危ない人が入居したこともあった。

面談のときにはまったくわからなかった。日本在住10年超、定住ビザを持ち、職場は新宿。日本語が上手く、フレンドリーで他の入居者とも仲良くしていたので、入居者としてはまったく問題がなかったのだ。

しかし、「六本木交差点で良くない物を売っている人に似ている」と、友人から指摘された。友人は六本木で昔から働いているので、その入居者をよく見かけていたのだ。

それで本人に「あなたに関する調査会社からのレポートで、問題が見つかった。六本木のことで」と、ブラフを掛けたら
ビンゴだったらしい。あっさり出ていった。

もし気付かなかったら、ヤバいことになっていたかもしれない。今後はもっと入居者審査に気を配ろうと思った事件だった。

「シェアハウスが優れている理由」
シェアハウスの利点は、他にもある。
入居者と管理者の距離が近いので、滞納、ゴミ屋敷、孤独死、などの可能性が低い(と思われる)点だ。

管理者がハウスの点検をしたり、入退去の対応をする際に入居者と挨拶をしたりする。そのため、異常があればすぐにわかるし、入居者からも報告してくれるので、大きなトラブルが発生する前に解決することが多いからだ。

「賃貸よりも建物を長持ちさせられる」
もうひとつの利点は、まるごと賃貸に出すよりも建物を長持ちさせることができる点だ。
例えば天井に雨染みができていたり、歩くと床がギシギシ言うようになってきたりしても、全部の入居者が管理会社や大家に報告するわけではない。

実害が発生するまでは、言わない人のほうが多いだろうし、実害がでてきても、家に立ち入られたくないから報告しない人も少なくないと思う。
そんな長期入居者が退去したあとは、雨漏りやシロアリがみつかる等、建物の状態は相当酷いことになっている。民法には、善管注意義務があるので貸主に損害賠償の権利はある。しかし、入居者が「まったく気付かなかった」と言えば、義務違反を証明することは難しいと思う。

その点、シェアハウスなら入居者だけでなく、管理者や清掃スタッフも中に入るので、建物の異常を見つけやすいだろう。早急な対応ができるから、その分建物を長持ちさせることができる。

「利回りだけを求めたシェアハウスは上手くいかない」
数年前、テレビドラマで取り上げられたこともあり、高利回りだと注目されて、シェアハウス投資が大人気になった。たしかにシェアハウスは投資として、かなり高利回りだ。
例えば、家賃20-25万円が相場の3LDKの戸建てなら、9畳以上の部屋を分割し、5部屋か6部屋を作る。すると各入居者から入る賃料の総額は40-50万円ぐらいになる。

多額の資金を投入するのだから、ビジネス的にも高利回りのほうが良いに決まっているのだけれど、利回りしか見ていないハウスが乱立するようになってしまった。

そのようなハウスは、狭い部屋がやたらに多く、その割にトイレやシャワーが非常に少なくキッチンは狭い。
新築で作るなら、3人につき1つはトイレが欲しいところだけれど、ひどいところだと6人に1つとか10人に1つとかの割合になっていた。

部屋数を多くして水回りを少なくすれば簡単に高利回りの箱ができる。
しかし、トイレが一つしかない家に、家族以外の人が4人以上で住むことには大きなストレスが溜まる。
したがって長く住んでもらえず、結局は空室ばかりになってしまうのだ。
利回り追求のため入居者に我慢を強いるハウスは、結局はうまくいかない。

近所に激安賃料のハウスができたときは、どうなることかと少し心配したものだけど、結局、賃料を下げる必要はなかった。いくら安くても、不快なところに長く住むことはできないからだ。むしろ、そういった不快なハウスからウチのハウスに移り住んだ人は結構な数になる。

「シェアハウスビジネスの落とし穴」
そんな、高利回りでつねに満室。良いことだらけのシェアハウス運営だったが、乗り越えられない大きな試練にぶつかった。

2020年コロナ発生だ。

そもそも入居者は全員30代以下なので、万一コロナ感染し発症したとしても、基礎疾患や何らかの病気をもっていなければ死亡する確率はほぼ0だ。
必要以上に恐れる必要がなかったので、退去する人がいなかったのだろう。

幸いコロナ前に入居したほとんどの入居者が退去しないでくれたのだけど、所属する会社の業績が急激に悪化して収入が激減したために、賃料が払えなくなって滞納し、結局は退去してしまった入居者もいた。
幸い、誠実な人だったので、滞納した賃料は後日全額払ってくれた。

問題は新しく入居してくれる人がなかなか見つからなかったことだ。

以前は空室がでても2ヶ月以内には次の入居者が決まることがほとんどだったのに、まったく問合せが途絶えてしまった。

当然ながら競合シェアハウスも同様の状態なので賃料相場がどんどん下がってくる。しかし、下げても埋まらない。
こんなリスクがあるとは、想像もしなかった。

この記事を執筆している現在では満室に戻っているけれど、戻るまで結構長かった。
ほとんど借金をしていなかったので乗り越えられたけれど、めいいっぱい借金で運営している人は耐えられなかっただろう。

このような、「自分の努力や才覚ではどうにもならないこともある」ということは肝に命じておきたい。

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