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【映画レビュー】アニメーションを盛り込んだ狂気の古典作集結『チャーリー・バワーズ発明中毒篇』の感想

古典作品のレビュー。

『チャーリー・バワーズ発明中毒篇』の感想

大阪・シネヌーヴォさんで『チャーリー・バワーズ発明中毒篇』を観てきました。

本プログラムは、アメリカの映画監督チャーリー・バワーズ氏の作品から中編4作品を選出して上映するという試み。1920年代のサイレント時代末期に生まれたチャーリー監督の作品は、コミカルな内容ながら、随所にアニメーションの技法を盛り込んだ奇抜な内容となっています。

日本でもあまり知られていない監督で、私も今回の企画で初めてバワーズ監督のことを知ったのですが、作品を見てびっくり。卵から生まれる車、猫のなる木、怪人vsスコットランド人(?)などなど、実写にアニメーションを掛け合わせた映像が盛りだくさんで衝撃が走る内容の連べ打ちに、なぜ彼が知られていないのかと疑問に思うほどの面白さでした。

今回上映された4作品それぞれの感想を個別で綴っていきます。


『たまご割れすぎ問題』(1926)の感想

たまご割れすぎ問題(原題:Egged on)
制作年:1926年 / 制作国:アメリカ
23分
監督:チャーリー・バワーズ

https://eiga.com/movie/95918/

卵が割れやすいのはおかしいと感じたバワーズが、卵を割れない素材化する発明に挑むという話。

発明はあっさり完成して、よくわかんない工程から卵がゴムボールのようになり、ハサミで切り落として中身を取り出すという、“そこそこ有用”な卵を生み出すことに成功するのも笑えるのですが、本題はここから。

売り込みのための披露用卵が見つからず、なんとか手に入れた卵が、火薬鶏の卵だったので、大事なパフォーマンスのタイミングで爆発してしまうという、この頃すでに爆発オチがあったとは!という衝撃を受ける作品。

全然どうにでもなりそうなことに苦心する姿も笑えるし、アニメーション要素として、卵を車の中で温めたために、卵から大量の車が産まれるシュールな映像は必見。見事な秀作でした。


『全自動レストラン』(1926)の感想

全自動レストラン(原題:He Done His Best)
制作年:1926年 / 制作国:アメリカ
23分
監督:チャーリー・バワーズ

https://eiga.com/movie/95919/

愛する女性の父親が経営するレストランを爆破(またかよ)してしまったバワーズが、レストランを全自動化する話。

当時の未来観が体験できるかと思いきや、牡蠣が自立してスープに飛び込んだり、木から缶詰が実ったりと、随所にアニメーションで狂気の味付けを加えてくる、こちらもコミカルな秀作中編。

当時の未来感を感じられるのも、“今”観る面白さでもあります。


『ほらふき倶楽部』(1926)の感想

ほらふき倶楽部(原題:Now You Tell One)
制作年:1926年 / 制作国:アメリカ
21分
監督:チャーリー・バワーズ

https://eiga.com/movie/95920/

ほらふき倶楽部(すでにこれが謎)の披露会に招かれたバワーズが、万物が実る木を生み出したり、拳銃を持ち出したネズミに対抗すべく、大量の猫を生み出した“事実”を披露する話。

必見は、木から猫が実っていく姿を克明にアニメーションで描くところ。ここの絶妙な気持ち悪さが本当に素敵で、地味ながらしっかり本作の見所になっています。

クライマックスにはガンマンネズミと、無限増殖猫のバトルになるところとか面白いだけに、オチの弱さが惜しい佳作でした。


『怪人現る』(1928)の感想

怪人現る(原題:There It Is)
制作年:1928年 / 制作国:アメリカ
22分
監督:チャーリー・バワーズ

https://eiga.com/movie/95921/

とある屋敷に突如として現れた“怪人”に対抗すべく、スコットランドの探偵バワーズが呼び出され、怪人には怪人をぶつけるんだよ精神で対決していく話(文にしても意味不明だが実際意味不明)。

編集芸で壁から怪人が現れたり、何もないところから大砲を取り出したりとむちゃくちゃなことをし続ける珍作。

今作、興味深いのは、マスコットキャラクターが登場していること。

バワーズの相棒として虫なのか妖精なのかよくわかんない珍獣マックが登場し、ストップモーションアニメーションで可愛く動きます。彼が活躍するのかと思いきや......奴はマジでただのマスコットとしてしか機能しないのが残念。

とはいえ、1920年代にはすでに主役とは別にこのようなマスコットキャラクター的な立ち位置の存在が、映画界で登場していたのは驚きでした。


意外と古典作品は“見辛い”印象が強いのですが、チャーリー・バワーズ監督の作品はストーリーは明快だけども、絵的な面白さが溢れていて、とても見やすい作品ばかりでした。今でこそ日本では知られた監督ではないですが、今後時間をかけて、チャップリンやキートンのような著名な古典監督になっていって欲しいです。

あと、伴奏音楽を担当した塩谷楽団+Sollaの活躍は大きい
サイレント映画だということを忘れてしまうぐらい、自然に観れたのも大きい体験でした。“今”の人に見せる工夫の力の大きさも実感しました。

チャーリー・バワーズ、面白い。
知れて良かったですよ。


公式サイト


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