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【映画レビュー】すごすぎる!ピクサーやっぱり上手すぎ!『マイ・エレメント』の感想

今年ベスト級の一本が来ちゃいましたよ。

『マイ・エレメント』のざっくりとした感想

『マイ・エレメント』を観てきました。

マイ・エレメント
制作年:2023年 / 制作国:アメリカ
101分 / ピクサー制作
監督:ピーター・ソーン

https://eiga.com/movie/98389/

ピクサー最新作は“元素”がテーマ!
水や炎、大気といった性質の違う種族が暮らす世界で出会った炎と水のキャラクターの恋愛ストーリーが展開される作品となっています。
監督は『アーロと少年』ぶりのピーター・ソーンさん。8年ぶりに長編監督に登板です。久しぶりの同時上映短編は『カールじいさんのデート』です。

本作を観てきた感想をざっくり一言で言うと……

すごすぎる!
ピクサー恐ろしい!!

と脅威を感じるほどの出来でびっくりでした。
今夏、ぶっちぎりの一本かもしれません。

ネタバレ含むもっと踏み込んだ感想を書いていきます。


『マイ・エレメント』のもっと踏み込んだ感想


■意味の乗せ方がうますぎる!ピクサーの本領発揮!

『ソウルフルワールド』『あの夏のルカ』『私ときどきレッサーパンダ』と最近のピクサーは絶好調だなぁと思ったら、ついにもうとんでもない映画が来ちゃいましたね。

すごすぎです!
話がよくできすぎている。
やっぱり質ではピクサーに次の黄金期来てますよ。

本作、物語の導入から元素の違いを民族の話に見立てたのかなぁという世界観から魅せていくのですが、話が進んでいくと親子の話であったり、男女の話でもあったり、しっかり恋愛の話でもあったりといろんな方向に触れさせながら、結局は全部を詰めこんで成立させました、という神業でした。
ホントなんだよこれ。

(C)2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

そもそも文化や人種といった、容易くは絶対に越えられない“違い”を炎と水に見立てたというのが上手すぎる。アイデンティティとしてあまりにも相容れない関係性というのを、ここまでわかりやすく、描けてしまうのが天才的ですよ。

(C)2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

この制作、多分水と炎だけでスタートして、世界観のパッケージングのために後で空気と土を足した感じはします。それぐらいこの二元素は居ても居なくてもって感じの話になっていました。そもそも土の概念はこれで合ってるのか?ってぐらい、土属性はほぼ木でしたよ。

まぁ、それがどうでも良くなるぐらい最高だったんですけど。

民族や文化といった違いや親子や男女の関係性などをあまりに上手すぎる表現で描くことに成功している。


■映画史上一番のハグシーン?恋愛映画としても大好きすぎる!

ここまで直球な恋愛映画もなんだか久しぶりな気がして、余計にしびれました。

感情的になってたまに暴発してしまうエンバーと、すぐに共感して泣き出してしまうウェイドの二人の凸凹感がまた良い。女性的・男性的のメタファーとしても炎と水って表現がまた上手く刺さる瞬間が多々。炎のエネルギッシュさであったり、水の寛容性だったり、炎と水という表現が本当に二人の性格を際立たせる性質につながっていて、こういった部分も上手い。

(C)2023 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

そして山場であるついに炎と水の二人が触れ合う瞬間ですよ……

絶対にダメ、絶対にダメ……と溜めに溜めて、ついに二人が抱き合った時のあの瞬間は、映画史上でも一番のハグシーンじゃないかと思うぐらいの感動に襲われました。

私の大好きな映画で『蛍火の杜へ』という作品があるんですが、これも人間に触れたら消えてしまう妖怪との恋愛話でして、この映画のことを思い出しました。こっちは割と切ない映画だったので、『マイ・エレメント』の優しい着地がまた愛おしいですね。

恋愛映画が主軸にはありつつ、話の着地としては家族を真にわかり合う様子など、「他社への理解」で終わるところも時代的に合っていて良かったですね。これが“結婚”してめでたしめでたしじゃないところなんかも、現代的な価値観に合っている気がします。

恋愛映画としての見せ方や着地のバランス感なども素晴らしい


■ローカライズも意外にも見事だった?

結構意外だったのが、散々言い続けていたローカライズ問題。

『バズ・ライトイヤー』など日本語書体が不自然に登場したり、余計なローカライズが気になることが多かったピクサー映画ですが、今回の『マイ・エレメント』についてはかなり自然な日本語化が施されていて、「ついに気づいてくれたのか」と嬉しかったです。『トイストーリー3』ぐらいから言ってる気がするから、10年越しぐらいの改善だよ。

日本語主題歌のSuperflyさんの「やさしい気持ちで」も作品にマッチしていてとても良かったですよ。余計な仕事と感じる瞬間も多い日本限定主題歌ですが、しっかり作品に合った曲を持ってきてくれると、映画を見た後の余韻が良い方向に増しますね。

エンバーの川口春奈さんやウェイドの玉森裕太さんたちも上手かったです。文句なし。

日本向けのローカライズも徹底して作品のノイズにならない良い仕事になっていた。


まとめ

●作品の中にいろんなテーマを上手すぎるレベルで包括できている。
●炎と水の恋愛物語というアイディアや演出が上手すぎる。
●ローカライズも完璧。

というわけで、ホントぐうの音も出ないほど上手くできている映画でした。
『アーロと少年』のピーター・ソーン監督かぁ……と観る前はそれほど期待していなかったのですが、反省ですよ反省。参りました。素晴らしすぎます。

海外でも大ヒットしているようで、ついに『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の記録を超えたよう。今年の賞レースもわからなくなってきましたね。

本当に良い映画なので、まだ観に行ってないという人はぜひ行ってください。最高です、この映画。


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