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アジア初の長編アニメとは!?『西遊記 鉄扇公主の巻』の感想。

※この記事は過去にアメーバブログで投稿した記事の再編集版として無料公開としております。
https://ameblo.jp/nejimakikoibumi/entry-12326520695.html

2017年の新千歳空港国際アニメーション映画祭で観た『西遊記 鉄扇公主の巻』の感想。

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西遊記 鉄扇公主の巻(原題:铁扇公主 )
制作年:1941年 / 制作国:中国
監督:万籟鳴、万古蟾

本作は1941年のアニメ映画。

中国初の長編アニメーション映画であり、さらにアジア初の長編アニメーション映画でもあり、戦時中のためディズニーやフライシャーの長編が公開されていなかった日本において、日本で公開された初のアニメーション作品でもあるという歴史的な作品です。東京国立近代美術館フィルムセンターの共催で上映が実施された企画となっていました。

観てきた感想をざっくり一言で言うと

興味深い

けど

面白くはない

という、古典物でよくありがちな感触の作品でした。


もうちょっと詳しい感想を書いていきます。

映像の状態は良くないけどそこがまた良いんだ(という自己催眠)

1941年の作品と言うことでノイズ交じりの白黒フィルムの状態で、見栄えは決して良くないのですが、今回上映されたのはしっかり日本語吹替えされたローカライズ版。声優という職業があった時代ではないので、活動弁士さんが声をあてているという状態のものでした。

映画のタイトルや劇中に出てくる文字は右から左読みであったり、映画の冒頭ではこの映画がどういうコンセプトで制作されたのかが作中で紹介されたり、オープニングやエンディングがなかったりと、今一般的になっている映画とは明らかに違う随所のデティールに感動しました。

また、当時はアニメーション制作のノウハウもそれほど整っていない時代ということで、キャラクターの動きもロトスコープ方式(実際の人間の動きをトレースしてアニメ化)を活用したであろう“ヌルヌル”した動きで、変に写実的な動きになっているバランス感が面白く、興味深かったです。

時代を知るという意味では、学びの非常に多い作品でした。

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ちなみにタイトルには出てこないけど大ボス・牛魔王との戦いもしっかり描かれております。

話の方やテンポには違和感あり

一方で、今のアニメや映画に慣れ親しんでいる身としては、話の流れやテンポ、見せ方には拙さを感じてしまうことは多々ありました。

ロトスコープ方式が生きていないキャラクターの動きがもたついて見える瞬間や、変に無言のシーンがあるために話の流れがもっさりしてしまったりすることもあれば、突然場面が切り替わったり、話が突然進んだりと、現代から観るとアニメーションの運転がめっちゃへたくそ(しょうがない)

今観るには、観づらいことはは間違いない映画でした。

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こちらは中盤大活躍の猪八戒さん。
弁士の方の演技の味、私は嫌いじゃなかったです。

猪八戒の活躍も面白いといえば面白いのですが、西遊記の映画なのにどっちかというと猪八戒の方が主役を食っているような気がするのも、なんだか変な感じ。今作のレーズンみたいな顔の悟空のデザインが結構好きなので、もっと孫悟空にクローズアップして活躍して欲しかったなぁとか思っていたりします。あと沙悟浄が出番があまりない割に、口下手という謎のキャラ付けがされているのは何なんだろうな。

クライマックスの牛魔王との対決も、黙々と戦っているシーンが続くので、最近のアニメーションの派手な戦闘シーンなどを思うと、対照的に本作の悪い部分の方が気になってしまいました。

そもそも古典作品・・・しかも最初期のものなんて、そんな感触になってしまうのはしょうがないんですよね。来場者には眠っていびきをかいている人も数人居ましたが、それがマナー違反ではあるとはいえ、やむを得ないという気持ちも分かります。普通にエンターテイメントと楽しむには敷居が高い映画ですよね、これ。

驚きの西遊記映画の歴史の長さ

あと今作を観て思ったのが、中国って本当に昔から西遊記ばっかり作っているんだなぁということ。

アニメーションだけでなく実写作品においても今でも年間数本の西遊記関連作品が中国では制作・上映されています。中国に住んでていたころから「どれだけ西遊記好きなんだよ」って思っていましたが、まさか中国の長編アニメーションの歴史の最初に巻き戻っても、西遊記が出てくるとは思いませんでした。西遊記アニメの歴史の厚み、ハンパないですね。

加えて意外に思ったのが、中国で生活をしていて、この西遊記のシリーズを見かけることがなかったことです。この映画の存在すら今回の上映で知ったぐらいでした。とりわけ中国における西遊記アニメ映画の古典として表に出てくるのは、1984年に公開された『金猴降妖』ばかり。

中国でみかけるアニメの西遊記といえばどちらかというとコレのイメージが強いです。かつて日本の烏龍茶のCMでも活躍してたこの子ね。

せっかくなら『西遊記 鉄扇公主の巻』のレーズンみたいな悟空もフィーチャーしてもいいのになぁって思うんですけどね。可愛いのに。

で、そんな西遊記アニメ映画の歴史の最新版でもある『西遊記ヒーローイズバック』が2018年1月13日に日本でも公開され、U-NEXTなどで配信中です。

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もっと気軽に『西遊記 鉄扇公主の巻』が多くの人が見られれば、本作と一緒にその歴史の厚みも体験できると思うのですが・・・需要自体はそんなにないのかな......なんてことを思ったり。個人的には非常に良い体験ができた上映プログラムでした。貴重な機会をありがとうございました。

こっちは老若男女楽しめるエンターテイメント映画です。

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