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成長できない愛

「疲れた」と言われたのが決定的で、とても大好きだった人と別れた。
出会いはもう10年も前、エレベーターで階下まで送ってくれた中で連絡先を交換したのをいつも思い出す。
肌が綺麗で歯並びの美しい、優しい声の人だった。彼のために時間的な制約や、大好きなイベントごとも割となあなあになっても彼がいてくれたら嬉しいと思いながら3年くらいずっと我慢してしまった。

彼のことが本当に好きで、ずっと一緒にいたくて、私は私の心をずっと殺していた。最後には結局私は精神的に消耗して、泣いてるのか笑っているのか、怒っているのかわからない状態だった。

最初にできた恋人にも、「君の愛情が重い。もっとさっぱりと付き合えると思っていたのに、疲れてしまう」と電話で別れを切り出された。15歳の時で、20年も前の話なのに、今でも崩れ落ちて眼球が溶けそうなくらいずっと泣いていて、女友達のいないやや娘を育てるには不器用な美人な母からも、不器用で優しい慰めを受けた。

その後星占いで「金星蠍座、しかもノーアスペクトで引力と、人によっては恐怖を与える何か」という鑑定結果が出た。
これは私の仕事にはいい。美しく本質的に価値のあるものに没頭し、愛し抜き、咀嚼して宝石やジュエリーというものに一体化できるギフトだ。

ただ、金星は「恋愛」といったふわふわとした楽しい部分も請け負う星だ。
とにかく演歌みたいな愛し方で、0か100でしか愛が注げない。
「偏愛」なので、私は毎日1週間、1ヶ月同じメニューでも気に入ればそればかり食べるし、好きな本は装丁違い、翻訳者違いなどで数冊所有し時々没頭して何度も何度も読む。

これを恋愛対象にするのである。一応自分の中で「大変な部分だ」と認識しているので、最初はカードでいうところの3、4から出していく。
それでも「もう無理」という人はもう無理なのだ。

そこで「では合いませんね。さよなら」とできればいいのだが、そこからが私の悪いところで「じゃあずっと2くらいをキープして優しくてちょっとヤキモチやきな彼女でいれば一緒にいられる」と自分を作り替えようとしてしまう。まあご想像の通り、限界がきて私自身が壊れて関係も自分の手で叩き潰してしまう。

今回は20年前の「疲れた」と2021年の「疲れた」が完全にリンクしてしまって、ああこの人にも拒絶された、拒絶された、愛されてない、疲れたんだね。私もずっとずっと大変だったけどあなたに合わせていたよ。という後半の分は(記憶が定かではないが)多分…いってないと思う…
疲れた、価値観が違いすぎる、と別れ際すら私に会いに来ないこの可哀想な男の人にこれ以上何かを言ったところで何にもならない。

さっきまで100、いや1那由多あった私の感情は行き場を無くして、
「そう、じゃあ終わりにしましょう。さようなら」
とプツンと意識も電話も切れたのだ。

愛され方も愛し方も何も成長がない20年だということを実感した。
まだ15歳の時の自分が、実家の自室でずっと泣いているような気さえする。
彼を幸せにできなかった。また私は自分の手で壊してしまった。
もう私が私でいるための境界が曖昧になっていた、多分限界でもあった。

少し長くベッドで横になり、お茶だけを飲む生活をしてた。

愛をどうやって捧げたらいいのかわからない。
ずっと一緒にいたいし適度に距離も欲しい。でもやや鬱陶しいくらいに愛されるくらいがちょうどいいような気もしている。
私の愛をうまく伝えられなかった。彼に愛が本当にあったのかも最後はわからなかった。

文章化して少し整理をしているが、まあ思春期を永久に引きずっているような35歳になってしまった私だ。
どんな恋愛メソッドもノウハウも読み尽くした。実践して得られるのは
そのメソッドとノウハウを駆使した女優の私を好きな、よくわからない人だ。

私は上昇志向が強いと昔から言われる。
意識していないし、どういう意味なのかもいまいちわかっていない。
今より良くなるように努力することの、それを自分の力で得ようとすることの、何が悪いのか私には感覚として理解できない。
それを昔の恋人たちは「高望みだ」「自分をなんだと思っているんだ」といってきた。

彼らが幸せになればいい。
どんな相手ができるのかわからないけど、私にはできなかったことをできる人と。

そして私はまた愛を持て余す。しばらく一人で生きていくのも良いかもしれない。孤独は創造力と内省と時間とインストールを効率的にしてくれる。

彼にあげるはずだった、良いお守りがある。
彼の仕事や、いろんなことが上手くいくようにと雨の中遠出して集めたものだ。

そんなものは求められてなかった。
2、1の薄めに薄めた私のことを。きっと彼は気に入ったんだ。

もう少し内省して、なくしたものをぼーっと思い出して消化する時間が必要なのに、ありがたいことに仕事は忙しく、タスクは山盛りだ。気が紛れるが、時々まだふっとフラッシュバックして強烈に不安になる。

今は自分のアップダウンの激しすぎる情緒を加味した上で仕事のスケジュールと解決策を立てて、お客様と仕事先に迷惑がかからないようにしておくことだ。

また深く傷ついて泣いている15歳の自分を抱きしめてあげるのが後回しになってしまう。苦しいね。

ありがとうございます。2020/4/15〜いただいたサポートは日本赤十字社に寄付します。