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初心者お断りじゃない、初心者に優しい対人ゲームって何よ!という話

先日、note購読をしているJiniさんがこんな記事を上げていた。

有料記事なので仔細についてはぜひご自身で確かめてもらいたい。

氏ならではの視点で書かれていて非常に興味深かったが、僕が考えていた初心者に優しい対人ゲーム観・格闘ゲームの初心者お断りな風潮観とは異なるものだったので、自分の考えの整理も兼ねて書き出してみようと思う。

結論から言うと、初心者を受け入れやすいゲームとは、

・(最初のうちは)練習しなくてもノリで勝てるゲーム
・格上にも一発かましてやることができると思わせてくれるゲーム

と考えている。

これらに当てはまるのが、スマブラのアイテムあり乱闘であったり、PUBGに端を発するバトロワ系シューティングゲームであったりする。

本稿でいうところの練習とは、操作を覚える以上の、システムやゲーム理解によるレベル向上を指す。
格闘ゲームのコンボ練習やシステムを利用した防御の研究、FPS・TPSのbot撃ちやキャラコントロールの熟練のことだ。

格闘ゲームの初心者お断り感は、これら2項目を満たすことの困難さから発生していると考えている。

先述の記事やあらゆるところで言及がある通り、対人ゲーム、こと格闘ゲームにおいては、プレイヤーの巧みさがそのままゲームの強さとして顕著に現れるという特性がある。
そのため、格闘ゲームにおける普遍的な楽しさ=勝利をある程度好きなだけ得られるようにするためには、プレイヤー自身の練習が求められる。

格闘ゲームのトレモ籠もりやリプレイ反省会、FPSの的あては、それらを通じて達成したい目標があるならモチベーションをもって取り組むことができると思う。

しかし、ランク上げに関心が持てなかったり、「とりあえず勝ちたい」などのカジュアルな思考でゲームをプレイする場合、それらのカンヅメ行動はあまりにも求めているゲームプレイから離れてしまう。

とりあえずでいいから勝ったの後に、徐々に勝った原因・負ける原因に気づいて、リトライする過程でようやくトレーニングが顔を出す。

そこにたどり着いたプレイヤーは、初心者からすでに一歩踏み出すことができているのではないだろうか。

対人要素のあるゲームとして人気を博すesportsタイトルで、FortniteやApex、LoL、スプラトゥーン、スマブラのようなゲームが一般的な格闘ゲーム以上の初心者を抱えることができたのは、人数差や不意打ち、アイテムや必殺技によって、明確な有利をまぐれでも取れたり、運勝ちとも言える勝利を経験できるゲームであることが一因であると考えている。

これらのゲームは、連携やマップ把握・アイテム管理のような複雑な要素があり、突き詰めればいくらでもゲームを習熟することができる深みがある。
そのため、熟練したプレイヤーたちに操作覚えたて程度の初心者は太刀打ちすることが非常に難しい。

しかし、それはあくまでタイマンである場合だ。

例えばスマブラのアイテムあり乱闘のような場合、上級者が別の敵と戦っているところにボム兵を投げ込んで撃墜を狙うこともできる。
%が溜まっていれば適当に押した強い技のポテンヒットで撃墜できるケースもある。

バトルロワイヤルなら、索敵中たまたま先に発見できてキルできた相手が格上だったりする。
開幕出会ってしまったときは、素手の打ち合いで、チームメイトと囲んで1人を一方的に殴り倒すことができることもある。
撃ち合いになったとき、自分がレアリティの高い装備を拾っていたおかげで相手を上回ることも度々発生する。

スプラトゥーンなら、とりあえず投げたスプラッシュボムやスペシャルが相手を倒したり、インクに隠れて縮こまっていたら相手が気づかず通り過ぎてそのまま背後から……ということも初心者同士ならいくらでもありえる。
なんなら逃げ回って塗っていたら、味方がキル担当をしてくれてナワバリバトル初勝利なんてこともあるだろう。

このような、地形差や人数差・運などのシチュエーションによる、どうしようもない有利不利やラッキーヒットが含まれるのが昨今の多対多の対人ゲームであり、運良く有利側に回れたプレイヤーは、たとえ初心者であっても勝利の喜びを比較的簡単に味わうことができる。
(ちなみに熟練者はキャラコンに加えてこれらの場面管理も非常に巧みだ)

しかし、格闘ゲームやスマブラのアイテムなしステージ制限ありのタイマンのようなルールでは、これらのような体験を得るのは難しい。
あくまでプレイヤーは平等な状態で向かい合ってゲームが始まり、一挙手一投足を相手が見て、それに勝とうと試行錯誤してくるからだ。

格闘ゲームは相手に向き合ったやり取りの面白さがウケてここまでジャンルが続いてきているのだが、その分蓄積された対人スキルはジャンル内であればある程度つぶしが利くし、「おじ」と呼ばれるプレイヤーも年数の経過によって着実に増えてきている。

また、昨今のオンラインマッチングが主戦場となった影響もあり、村を超えていきなり国の単位で見知らぬ誰かと対戦するのは、心理的にも敷居が高い。初心者だと思って対戦した相手が別のゲームをやり込んでいたエセ初心者だなんて、余裕であり得ることなので。

なので、格闘ゲームの敷居の高さというのは、プレイヤーのタイマンと平等さによって、「対人で勝つ」という面白さを得るためにプレイ中の運要素が極限まで少ないゲーム性からくると考えている。

これを解消するために、格闘ゲームは
・ストーリーモードを充実させる
・変わり種対戦ルールを入れる
・トレーニングの機能を増やす
・キャラ対を学べるミッションをいれる

などの施策を通して、「普遍的なガチンコルールで対人でしっかり勝つ以外の楽しみ方の提供」や、「しっかり勝つための練習の負担を軽減すること」に挑戦している。

しかし、どうしてもタイマンでガチンコするのがマジョリティである(風潮がある)格闘ゲームは、操作を覚えただけの初心者が見知らぬ誰かと相対したときに勝利・成功体験を得難いことからは逃れられず、これが格闘ゲームの初心者お断り感からは逃れられない。

その一方で、練習を積み、死力を尽くして「目の前の相手にしっかり勝つ」ことができたときの面白さは、なんとも筆舌に尽くしがたいものがあることも確かだ。

だからこそこのゲームジャンルは確かなファンがいるし、日夜魅力にとりつかれたプレイヤーが研鑽し、対戦を行っているのだと思う。

では、冒頭で僕が提示した

・(最初のうちは)練習しなくてもノリで勝てるゲーム
・格上にも一発かましてやることができると思わせてくれるゲーム

のようなゲームが初心者を受け入れやすいのだ、という考えが真だとするならば、ガチンコがマジョリティな格闘ゲームはどうすればいいのか。

・攻めが強いゲーム性
・やってみたくなるビジュアル
・人口を増やすことに尽力する

これらが直近の格ゲータイトルの方針のようだ。

1つ目の攻めが強いゲーム性は、今まで述べてきた操作を覚えた初心者でもタイマンで勝てる要因になる。

とりあえず強い技や行動を振って、それに対応できなかった格上がなんだかんだ負けてしまった、ということが起きるようなバランスの対戦ゲームが最近の風潮だ。

スマブラシリーズにおいて、SPはゲームスピードがシリーズの中でも速めで、ガードの削りや漏れが激しく、振り得な技が多い。
今作は特に攻めっ気の強いゲーム性をしている。

ギルティギアの最新作STRIVEでは、一撃の重さが今まで以上に大きく、また画面端を破壊することによってプレイヤーにボーナスを与えつつ立ち回りに戻すシステムを採用、コンボ・ハメゲーの要素を減らすデザインとなっている。

2つ目については言わずもがなだが、上記タイトルはIPの知名度はもちろん、3D演出や派手なエフェクトを使った目を惹くビジュアルでプレイヤーの注目を集めている。

直近のタイトルだと、バーチャファイターesportsもドラゴンエンジンを全面に出してビジュアルを一新、初見の印象の改善や、龍が如くシリーズのビジュアルのファンや、評判を知っているプレイヤーを呼び込もうとしているのではないだろうか。
このゲームも攻めっ気が強いゲーム性で、初心者同士ならガチャプレイでもテンポよく勝った負けたできると思う(ちょっとやっただけであまりこのゲーム詳しくないですごめんなさい)。

3つ目の人口を増やすことについては、人口の多さがそのまま初心者の多さに繋がり、初心者に対する健全なオンラインマッチングの維持ができ、それがそのまま格闘ゲーム初心者の受け皿・プレイヤー人口に直結するからだ。

昨今のゲーム販売側が主催・スポンサードする公式大会が増えてきたのも、大会の様子やトッププレイヤーの活躍が初心者にもゲームに興味を持ってもらうことに繋がるからだろう。このあたりの詳しいデータ読みたいな……社外秘かな……

また、先述のバーチャファイターesがPSPlusのフリープレイでいきなり無料提供したのも、既にパイの取り合いとなっていてギルティ新作が待ち構える中で、プレイヤー人口を獲得するための思い切った施策だと思う。
Youtubeでタレントや素人をゲストに呼んで対戦する様子を投稿しているのも、間口の広さを見せるためだろう。
ちなみに、このシリーズめちゃくちゃおもしろいのでぜひ見てほしい。


少し脱線しつつ例を出していったが話をまとめると、格闘ゲームの敷居の高さは、気楽に人間に勝利しにくいゲーム性そのものにある。

なのでゲームシステムの改善や多彩なモード・施策によって、初心者お断りではない風潮をしっかり作り、まずは手にとってもらい、初心者でも最初は勝てて、上級者は練習すればソレをいなしてしっかり勝つことができるゲーム性を作ることに、各社は尽力しているのだろうな、というのが僕の考えだ。

そして、格闘ゲームの上級者や攻略記事が、初心者に対してわかりやすい強キャラを勧めるのも、まずは最小の練習量で気楽に勝てるようにするためである。

格闘ゲームが持つ、勝つ楽しさを最短距離で経験してもらうのが大事なのは、ゲーム側もプレイヤー側も同じなのではないだろうか。

確かに敷居が高めのゲームジャンルだが、比較的新しいタイトルなら勝たせるための準備がゲームの中にもインターネットにもあるので、初心者でも友達を誘ったり、一人でもいいので、ぜひ手にとってほしいなあと思う。
比較的新しいタイトルで人気作であればあるほどオススメできる……はず。

書ききれなかったが、子供世代への格ゲーが満足に遊べるゲーム機の普及率や、同時に遊べるプレイ人数の差、国産の良質な格闘ゲームがPCに展開するまでに時間がかかったこと、ゲーセン衰退やラグ耐性あたりも、世界的な他ジャンルと比べたプレイヤー人数の少なさに繋がってるかもな、などと考えている。

大好きなゲームジャンルなので、これからも末永く発展してほしいし、できることは自分でもやっていきたい。
みんな一緒に対戦してくれ~

P.S.

Jini氏のスティグマについての言及は非常に重要で、何度も例示するがスマブラSPにおいては、負けても笑って次のゲームを始められるようにするゲームデザインをしたという桜井ディレクターの話が、電ファミさんのインタビューで取り上げられている。これは敗者の立場を軽減してゲームを離れにくくするための重要なデザインだと思う。
純粋な格闘ゲームではない、対戦アクションゲームプラットフォームであるスマブラだからこそ為せる業なので、格闘ゲームはこのスティグマとこれからも向き合い続けていかなくてはいけないだろう。
桜井ディレクターのインタビュー記事:該当部↓
https://news.denfaminicogamer.jp/projectbook/181221#i-4


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