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「少女終末旅行」について

こんにちは水バケツです。少女終末旅行を読み終わったので最終回の感想を書きます。

最上層に向かうために旅を続けてきたチトとユーリですが、螺旋階段を登りついに最上層にたどり着きます。しかしそんな最上層にあったのは黒い石だけ。食糧もない。そんな状況で絶望するわけでもなく、登り切った記念にと水を飲む2人。もう上から何か降ってくる心配もないのでヘルメットを脱ぐチト。そんなときふとチトが言います。

「…ねぇ 私たちこれで正しかったのかな」「もっと早く引き返した方がよかったんじゃないかとか」「もっと別の場所に進んだ方がよかったんじゃないかとか…」

そんな言葉に雪玉を投げて応えるユーリ。

「……何もわかんないけど…」
「生きるのは最高だったよね…」

このユーリの言葉は生きるのを諦めたような、最期を悟ったような風に聞こえます。こんな言葉に僕はハッとしました。チトとユーリが旅をしてきたような何も無い終末世界でも、生きるのは最高だったというのです。僕たちが生きている世界は娯楽に溢れています。好きなことをしようと思えばできる。好きなときに好きなものを食べられる。いつでもお風呂に入れる。いつでも洗濯ができる。そんな娯楽に溢れる世界です。でもチトとユーリが生きてきた世界は真逆。食べられるものは限られていて、自由に洗濯や、入浴もできません。そんなふたりきりの終末世界なのに生きるのは最高だったと言うのです…。いや、ふたりきりだったからこそ、最高だったのかもしれませんね。僕はそんな2人が少し羨ましく感じてしまいます。それほどの友情といいますか、愛情といいますか、どうであれとても素敵な絆ですよね。もうこの世界にはきっと誰もいない。だから2人は世界一幸せなんです。そんな会話を交わした2人は残っている荷物を確認します。残っているのはナイフ、ランタン、ロープにワイヤー、ひとつだけ残しておいた爆薬、弾薬。ユーリも爆薬を持ってると言いますが、それは爆薬ではなくレーションでした。ケッテンクラートを失い、銃を捨て、日記や本も燃やした。ほとんど何も残っていない2人ですが、微笑み合いながら最後のレーションを食べます。

「ねぇ…これからどうする?」「とりあえず食べて…」「少し寝て…」「それから考えよう」

そう言って眠りについた2人。徐々にフェードアウトしていき、物語は終わります。最後のページでは黒い石に図のようなものが描かれています。最後のページに2人の姿は描かれていないので、もしかしたら黒い石が何かしらの装置でチトとユーリは月まで行っちゃったとか、考察のしがいがありますが、正直よくわかりません…。

チトとユーリの2人は死んでしまったのでしょうか?死んだのであれば食糧も無いわけですし、そのまま黒い石のそばで亡くなるでしょう。もし生きているのなら前述したように黒い石の力でどうにか生きている、くらいしか考えられません。単行本にはあとがきと一緒にチトとユーリが草原のような場所でボーっとして立っているイラストが添えられています。この草原は黒い石の中なのか、はたまた天国なのか。生きているか死んでいるか、それは読者の解釈に任せるってことなんでしょうね。正直生きていてほしいですが、多分死んでるでしょうね…。あそこから生き残るのは考えにくいし…。

余談ですが、つくみず先生の別の作品、「シメジシミュレーション」の1巻にチトとユーリに似た人物が登場しています。生まれ変わり、みたいな感じでしょうか?ユーリと思われる人物はパフェを2つも食べています。食べるものが芋やレーション、魚くらいしかなかった世界で生きてきたユーリがおいしそうにパフェを食べているのを見ると、なんとも和みますね。

いろいろ考えさせられる最終回であり、考えさせられる作品でした。なぜチトとユーリしかいないのか、カナザワやイシイはどうなったのか、いろいろ考察できそうですが僕にそれほどの考察力はないのでやめておきます。拙い文章ですが最後まで読んでいただきありがとうございました。


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