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妄想を掻き立てる魅惑のSSW、ケイト・デイヴィス

ライター:滝田 優樹

今回は敢えて、自分の中でのタブーであるアーティスト名を多用してレビュー。そして1周しか聴かないで、瞬発力だけで執筆した実験的な内容でお届けします。

本題へ。

元々はニューヨークを拠点にジャズボーカリスト/ベーシストとして活動をはじめたケイト・デイヴィス。

最近では、同じくニューヨークを拠点とするシンガーソングライター、シャロン・ヴァン・エッテンの最新アルバム『Remind Me Tomorrow』の収録曲「Seventeen」を共作したことで注目を浴びた。

ちなみにシャロンのこの曲もだけど、アルバムが年間ベスト級に最高だったのでまだ聴いてない人は是非。

そんなケイト・デイヴィスが今度はシンガーソングライターとしての再出発を告げるデビューアルバム『TROPHY』を昨年発表し、自主レーベルにて再リリース。そして、私の耳に届いたというわけだ。

内包するサウンド自体は、ジャパニーズ・ブレックファストやスネイル・メイル、クレイロらと共振するインディ・ロックな佇まい。

ただ感覚的に「Daisy」あたりは、ノイジーからフォーキーまで幅のあるアレンジワークやサイケデリックかつキュートな歌い回しを取り入れる遊び心、もといポップセンスはジェイ・ソムに近いものを感じる。

はたまたクラシカルでサッドコアな「Salome」、「Rbbts」なんか聴くとキャット・パワーやジェニー・ルイスからの影響を、かと思ったら「Trophy」ではケイト・ブッシュばりのガーリーなヴォーカルを聴かせたり、と多くの引き出しも持ち合わせている。

そして全編にわたってベースが主軸となり、低音域を意識したプロダクション。ウッドベースもしくはコントラバスのようなどっしりと、でも温もりのあるアクセントが際だつ。

それもこれも彼女のジャズボーカリスト/ベーシストというキャリアに直結するものだというのはほぼ間違いないだろう。

そんでもって彼女が今回、インディ・ロックを鳴らすに至った経緯。それはビーチ・ハウスとデス・キャブ・フォー・キューティーに感化されたからだという。

ビーチ・ハウスはドリーム・ポップの雄。2000年代以降で、彼女らより素敵なドリーミンを聴かせるアクトには出会ったことがない。それ以前だとコクトー・ツインズ、ディス・モータル・コイル、スロウダイヴ…、おっと閑話休題、閑話休題。

デス・キャブ・フォー・キューティーは、完全にギターが主役なバンドで、ガツガツくるんだけどメロディアスなもんだから涙腺にきちゃうよねっていう。雑に紹介しちゃったけど、こちらもシアトル、いやUSインディ・ロックを代表するレジェンド。

少々周りくどくなってしまったのだけど、今作からは上記2バンドのテイストをあまり感じない。エッセンスとして加わっているのかもしれないがほんの風味程度だ。

つまりのところ、今回ケイト・デイヴィスが公言するシンガーソングライターとしてのデビューを後押ししたバンドたちからの影響を敢えてモロに表面化させない、そのしたたかさに彼女なりの流儀を感じるとることができる。

その分、彼女がこれまで辿ってきた音楽遍歴を次々と妄想してしまう魅力とキャリアを存分に活かした確かな実力とセンスの集合体となって本作は輝きを放っている。

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