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猫が私の不妊治療のサポートになってくれた話

 毎日のジョギングとして通っていた公園には猫がたくさん住み着いていた。

この公園は都が管理している公園で管理事務所にはこっそり猫の餌が置いてあって、公園内には10匹くらいは猫がいたと思う。

東京湾を一望できるこの公園は平日人も少なく、不妊治療の結果が出るたび、気持ちを全て吐き出すために海に向かって大声で叫んでいた。

猫は夕方から夜の決まった時間に決まった場所に現れて座っていることが多かった。雪の日も、痩せた白い猫が掠れた声で自分はここにいると呼びかけてくる。声を頼りに猫を探すと、木陰から現れてご飯を求められた。

診察で胚移植後、陰性の数値を見せられた日。
10個の受精卵どころじゃない、20個は必要だと、10個貯めて臨んだ1年近くに及ぶ移植の最後の移植の結果を受けてそんなこと言われた日。(そんなん言われるなら移植せずにせっせと採卵に時間費やしたわ)
そんな日は、一生懸命今日を食い繋ごうと、生きるだけの猫を見て、
涙が止まらなかった。

 そんな10数匹での猫社会の中、ある雄猫キジトラは、気が強くていろんな猫を追いかけていた。
餌やり歴10年という毎日この公園に通うご婦人もこの猫には手を焼いていて、雌猫はもちろん、気の弱い雄猫も怖がって暮らすようになったと、顔見知りになった私に愚痴っていた。

ただこの雄猫は元飼い猫かのような人への馴れ方で、私と夫はこの猫が好きだった。ちょうど1年前、猫を迎え入れる準備を整えて、この猫を家に連れて帰った。

猫が来てから、夜泣きはするし、大事な睡眠は削られることもある。でも何か理屈ではない心の支えになってくれている。
雄猫だからか、私を母親扱いしてくれるのだ。
夫が猫に、自分のことをもっと好きになってほしいと嫉妬するくらい。

私の小さな夢はお嫁さんを迎えた猫家族と、人間の子供1人が加わって支え合う生き方をすることだ。


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