ファンとして考える、その2(BBCによる故ジャニー氏の性加害に関するドキュメンタリー番組を観ての感想)

【注意】
タイトルにもありますが、故ジャニー喜多川氏の未成年者への性加害に関する話をします。
気分を害される方もいるかもしれませんので、ご注意ください。

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課金してまで番組を観た理由

前回noteで、BBCの記事を読んだ感想を綴りました。

https://note.com/preview/n176c38dd21f2?prev_access_key=a11337afe44e20d75e05fa1594239261

その後、記事元となるドキュメンタリー番組の日本語字幕付き版が公開されました。
正直なところ、毎日自分が生きるだけで精一杯なのに、確実に辛くなるものを観なくてもいいんじゃないの?真剣に向き合って大丈夫?ここで少ないHP自ら削りに行くの?と、観るのを躊躇しました。だけど、毎日生活の中でゴリゴリ削られているHPを回復させる為に推し活をしようとすると、この記事が頭をよぎるんですよ。YouTubeのショート版で見た被害者の方の苦しそうな顔が忘れられないし、推しが被害者である可能性について、もう考えずにいることができませんでした。
もうスルーできないんだから、観よう。HPのゲージはもうずっと真っ赤だけど、このままじゃ回復薬である「推し活」コマンドが使えない。それどころか毒になってじわじわHPを削ってくる。
このままではままならない。どうせスルーできないなら、観なければ。
そう覚悟を決めて視聴しました。

視聴直後の感想

視聴してまず思ったのは、これは私みたいな素人が咀嚼して言葉にして腹落ちさせるなんて、そう易々とはできないぞ、ということでした。
このドキュメンタリーも含めて報道のあり方、被害者の望み、被害者への正しいケア、法律と権利を学ばないと、今持ってる自分の尺度だけじゃ、推しの為にどうすればいいのか、一国民としてどうすればいいのか、判断できませんでした。
調べることが山ほど浮かんで頭が痛い。でも咀嚼できないと、私はもう1円も推しに使えない、とだけ、強く思いました。どんな会社にお金を使うか使わないかは、意思表示の一つだと思っています。肯定できない企業の利益になることはしたくない。応援したいところにはお金を出したい。だからファンとしては悩ましい…。
(この件に限らず、肯定はできないけど自分への旨みは欲しいからお金や労力を提供せざるを得ない、ということは色々ありますね。生きるって大変。)

視聴後、少し置いて考えたこと

でもまぁずっと悩んでいても仕方がない。悩んでいても朝は来ちゃうし仕事もある。しっかり腹落ちさせるには一朝一夕の知識じゃ到底足りない。追々これから発信されるであろう専門家のお話を待ちながら、ファンとしての意見をまとめておこうと思います。
この番組の取材期間は短かったようですが、記者さんはジャニー氏の事件どうこうというより、「未成年者への性犯罪を軽視する日本の法律とマスコミと世間」に1番驚いて、憤って、それを問題提起してくれたんだと思う。

印象的だったことの一つは、番組内で該当インタビューに答えていた通行人達の無関心さ。故ジャニー氏の性加害について知っていますか、どう思いますか?の質問に対して、「故人のことだから掘り返さない方がいいのでは?」と顔をしかめて言ったご年配の女性。それから「自分はゲイだけどLGBTQが認知されたのは日本では最近のことで、ジャニーさんも大変だった面があると思う」と話し始めたので記者に「性的指向と性犯罪は無関係です」と突っ込まれ、それでも最後はカメラにピースサインして手を振っていた男性。どちらも不快で、同じ国民として恥ずかしかったし、心底残念。まともに答えていた人もいたのかもしれないけど。
それから被害者である元ジュニアの方と、被害者がいることを知っていた元ジュニアの方。何名かが顔を出してお話しされていたけど、ほとんどの人が、性的被害を軽犯罪としか捉えていない(自分の人権意識が低い)ように見受けられる話し方をしていたのも悲しくなった。「自分にとっては大したことではない」「自分はそこまで酷いことはされていないから笑って話せる」「売れるんだったら被害を受け入れる」と、それぞれの話があったけれど、みなさん揃って「ジャニーさんのことは嫌いではない、むしろ好きで尊敬している」というスタンスだった。そう言えば活躍しているタレント人も、よくジャニーさんの話をするし、私はそれを見聞きしていたからこそ、「みんなジャニーさん好きだったんだな。変な噂あるけど、みんながこんな風ににこにこ語り継ぐんだから、噂でしかないんだろうな」と思っていたのでした。
でもあの笑顔も、グルーミングによるものなのだとしたら、推しが…タレント達が、不憫過ぎる。そして何十年も黙認してきた司法とマスコミが恐ろしい。気付かずに、または知らないふりをして、故ジャニー氏の加害を受け入れ続ける世間も怖いし、自分もその一員かと思うとおぞましい。

番組内では、1999年、ジャニー氏の加害について被害者から訴えを聞いて報道したジャーナリストにもインタビューしていた。このジャーナリストは当時報道したことによって、仕事の妨害や嫌がらせもかなり受けたと話していた。「23年間絶望したままです」という言葉が重い。心中をお察ししきれない。想像しただけで心臓が痛い。

有権者として、ファンとして

一人一人の意見が社会をつくっているなら、その一員である有権者として、意見を主張したい、と私はこの件に限らず思っています。「未成年者が被害者である性犯罪」や「被害者へのケア」については、なんの勉強もなしに軽率なことは言えないな、と思います。でも、BBCが「日本では大手アイドル事務所の社長が未成年者に性犯罪を何十年も続けていたが法的に裁かれないし会社も潰れないしマスコミも黙っているしタレントもファンも世間も何も言わない」と世界中に発信したことについては、ファンとしては、なるべく早く意見を出しておかなきゃいけないんじゃないかと思いました。
推しの為にはならないかもしれないけど。「私は故ジャニー氏の犯罪も、裁かなかった司法も、動かなかった警察も、報道しなかったマスコミも、知ってたのに無視してきた社会も許さない」と断言します。しばらく悩んだけど、これが有権者としてできることなんじゃないだろうか。
一人一人が「性犯罪を許さない」スタンスでいることで、日本が「性犯罪を許さない」空気の強い国になる。そうなれば新しい犯罪の抑止力になるし、世間が許さなければ司法も動く。マスコミも報道せざるを得ない社会になる。風潮が変わればお金の流れも変わる。パワーバランスが正される。言いたいことの言える世の中になる。被害者が泣き寝入りも、自分の被害を軽視して正当化する必要もなくなる。
私はそんな桶屋が儲かるピタゴラスイッチを望みます。風よ吹け吹け。

そんな国になれば、仮に推しが被害者だったとして、ずっと黙認し続けてきた自分の被害を認識して、ケアできるような環境になるんじゃなかろうか。
推しが被害者として「忘れたい」「無かったフリしてこのままでいたい」と希望するなら、ファンは何も言えない。でも医学的にそうするのがベストなのかは、ただのファンには分からない。もしカウンセリングが必要なら、してほしい。誰にも知られず治療したいなら、被害者であることも言わなくていい。知られたくないことを暴くような関係各者は許さないし裁かれる司法システムであってほしい。

もし推しが「ファンに余計なこと考えさせて悲しい気持ちにさせたくない」と思っているのなら、なめないでいただきたい。知ってしまったもんはもう遅いし、そもそも犯罪犯した故人が悪い。ファンより先に被害者のことを考えて欲しいし、黙認OKな社会を野放しにしてたら、現ファン・未来のファンが被害者や加害者になる可能性が高まるってことも、忘れないでほしい。ただ、推しも被害者である場合、簡単な話ではないはずなので有識者の話が早く聞きたい。

最後にやっぱりファンとして

どうしても「ファン目線」が入って、問題の見方が偏りがちになるけど、専門家視点にはなれないので仕方がない。かと言って黙認するのだけは絶対嫌だし、しちゃいけないと思う。数多くいるファンの中の1人に過ぎないけれど、たぶん1番意見を出さなきゃいけない立場なんじゃないかと思うんです。だって課金してるし恩恵受けてるし。
故ジャニー氏が犯罪者であるにも関わらず、こんなにジャニーズ事務所を繁栄させてしまった責任は、課金してるファンや、課金してないにせよアイドルを有り難がって喜んだ大衆にもある。だって知らなかったんだもん、なんて、私は被害者の方々にも、絶望したままのジャーナリストさんにも、黙ったままの推しにも言えない。

推しよ、そんな事務所見捨ててくれ。そしたら全力で応援するから。コネも財力もなくて大きな後ろ盾にはなれないけど、ホールツアーできるくらいには応援するから…

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