『Inverted Angel』のプレイ感想
簡単な導入
noteを使ってゲーム等の感想を書こう!と思い立ったのはInverted Angelをプレイしたからなのでした。
この読後感というか、そういったものを感じられたのは久々のものでした。それを思うと、居ても立っても居られなくなりこうしてキーボードを叩いている次第です。
『Inverted Angel』とは
「あなたの入力した推理を"だいたいのニュアンス"で判定するKawaii Future Mystery」引用-Steam作品ページより-
ノベルゲームをプレイした事ある人なら分かると思いますが、こちらの行動を決める時には必ず"選択肢"が出現し、選ぶことができます。
しかし本ゲーム(以後「インバネ」と呼称)では選択肢はありません。代わりに検索エンジンを使う時のように、言葉を入力する欄が出てきます。
上のスクショのようにね。
「ストーカー?実は知り合い?彼女はどんな人物だろう?」
これが問いですね。この問いに対して、僕らプレイヤーは自由に記述できます。普通ならストーカー、知り合い、といった風にいくつか選択肢が出てきますが…。
このような記述をすることさえ可能です。これで決定ボタンを押すと、AIが判定して最も近い選択肢を選んでくれるワケです。
ちなみに上の画像で決定を押すと…。
と、こんな感じに意図を汲んでくれます。しかも確認までしてくれる。このように、ふわっとした推測や思い込みを入力して、彼女の正体を突き止めていくのがインバネというゲームなのです。
この時点で未プレイで気になった!という方はぜひご購入ください。これは声を大にして言いたいのですが。
このボリュームで800円は安すぎます!!!
ネタバレ無しの感想戦
と言ったものの、インバネの感想をネタバレ抜きで言うのは難しいのです。だって全部ネタバレみたいなもんだし…。
あ、Steamの方のレビューにもありましたが、インバネで向き合うことになる女の子(通称"知らない女性")は、確かにヤンデレ属性は入っていますがかなり賢いヤンデレちゃんです。
哲学や、認知科学に近い分野のお話にとても詳しい子です。ぼーっと話を聞いていたら置いて行かれちゃいます。
ある意味では「"相手の事を自分が知らない"と知られないようにしながら"相手の正体"を探り出す」という一対一の知略ゲームでしょう。
地雷系ファッションのストーカーちゃんと戯れるだけのゲームではないのでご注意を。
あとはネタバレ無しで言える事は…。このゲーム、とっても文章が美しいです。詩的な表現が綺麗すぎます!
気になったので作者のSCIKA様の作られてる曲を聴いて観たのですが、いやはや。やはり他の曲の歌詞も綺麗でありまして、であればこのゲーム内テキストも納得できるなぁとなりました。
『Inverted Angel』主題歌 Inverted Angel (feat.中村さんそ)
この曲を聴いて、あるいは他の曲を聴いてみて魅了された方はインバネを買いましょうプレイしましょう。
ネタバレ有りの感想戦
ここからは既プレイの方向けの感想ですよ~。まだプレイしていない人は今すぐ買ってくださ~い!
ではここからは到達したルート(因果律)順の感想を。
①Chocolate Hideout
一番最初に辿り着いた所。
個人的に最もしっくり来たエンドでした。主人公の記憶に問題がある、と。実際、ミラウイルスに気づかずとも、ふんわり回答で「ウイルスの影響で彼女を思い出せない」の選択肢を出してくれますし。
実際ここが最初のエンドの人、けっこう多いのではないのでしょうかね…?
作中で何度か言及され強調もされる「言葉にできることなんて、考えてることのほんのひとかけら」が一番最後の回答になるの、美しいなぁと思うばかりです。
エンド名でもある「Chocolate Hideout」。実績の一言のところを意訳と(勝手に)考えているのですが、直訳すると「チョコレートの隠れ家」
瓶の中に入ってる液体も茶色がかった色。チョコレートのように暗い色だけど、とても甘い色。ハイセンスなタイトルだなぁと舌を巻きます。
これだけでも満足度が高かったのですが、インバネの"凄み"はここからなのでした…。
②Invalid Angel
次に見たエンド…らしい。実績のアンロック時間を見る限りでは…。しかしどうやって行ったか思い出せず、もう一回見てみようとしても別のエンドになってしまう。不思議なエンドでした。
しかしどんなエンドだったかは覚えてます。あの演出で更にぐぐっとインバネに引き込まれましたね。ただの推理ゲームじゃない、と。
本来ならあり得ないような因果のいじり方をしたら、ああなっちゃうのかな~とふんわり思っておきます。彼女ちゃんに怒られちゃったぜ…。
別のゲームの名前を出すのはよろしくない事なのでしょうが、正直『ドキドキ文芸部』を思い出しました。あのゲームもほんっと大好きなんで。
ERROR, REJECT, などなど機械的なワードが表示され、背筋が凍るようでした。そしてエンド名がInvalid Angel。Invalidは病弱な、とも訳されるようですが、もちろんここでの意味は「無効」でしょうね。プログラム触ってたら何度も目にする単語…。
このエンドを迎えた瞬間から、僕は"知らない女性"こと彼女が何者であるのか、非常に興味を持ち始めました。その答えはゲーム概要欄にも書いてある「最終エンディング」で得られるのだろうと意気込み、また次の世界線の彼女に会いに行くのでした。
③Scarlet Icecream
そして三つ目のエンドです。この間に4つバッドエンド?(実績のアイコンが瓶じゃなくてハートのエンド)を迎えており、ここに辿り着くのにはだいぶ苦労したようです(謎の他人事)。
このエンドを迎えた時の感想として一番大きいのは、「僕に狂気度が足りていなかった…!!!」でした。
「自分の家の中にあるものは?」
に対する回答で、なかなか次に進めず、最後に「いやまさかね…」とスマホのメッセージ欄に書かれている「培養肉」を入れて見たら…あら不思議。気づかないうちに主人公が狂気に陥ってました。その発想はできんかった…。
このエンドもなかなか気に入っており、まさか大学生ではなく大学の先生だったとは。盲点でしたねぇ、綺麗に騙された!(若く、しかも学位しか取ってない人が大学で講義を持てるはずが…とは無粋な考え。そういう世界線なんだから気にしちゃダメダメ)
エンド名はScarlet Icecream、緋色のアイスクリーム。
この因果に近づくにつれアイスを使った比喩が多く使われており、このエンドも綺麗だなぁ(主人公死んじゃったけど)。甘くドロドロに溶けた愛、溶けた赤黒い培養肉、そして緋色のアイスクリーム。なるほどなぁ~。このセンス大好き。
(これはOpenAI君の方の問題だけど、例の被害に遭った子を「その子」って記入するとダメで、「その女性」ってやると正解するようになってて、危ういなぁと思っちゃいました)
④Rusty Caramel Cage
このエンドもなかなか狂っていて好きでしたね。
この辺で、最初の方でふんわり回答で出て来る選択肢の量に驚き始めました。ただの知り合いにも種類あるんだもの…。
このルートで大変だったのは「彼女が気づいていることは?」のふんわり回答でしたね。何度もバックログを読み返して、「何を口滑らしたんだ…?」と10分くらい悩んでました。
次第に監視カメラについて怪しくなってきて、一旦主人公の境遇に立ってみると「なんで監視カメラの信頼性を知っているんだ?」と思って着地できたわけです。あの閃きは楽しかった…!
そしてエンド名のRusty Caramel Cage、錆びたキャラメルの檻。
錆びている、茶色がかった檻。時間が経ちすぎてしまった檻。この檻を壊して外に出るのは簡単かも知れないけど、それは自身の破滅を示す。なぜなら檻の中こそ一番甘い香りがするのだから。
っていう想像。
⑤Cheesecake Hallucination
(最終エンドを除いて)1, 2を争うほど好きなエンドです。
実はかなり最初の方で「未来人説」を推してたのですが、因果が足りないって言われちゃってたんですよね。そして色々こねくり回しているうちに、別エンドの時に見たワード「ジャンバラヤ博物館」に辿り着きました。いやぁ、これは見落としていた…。ネズミ捕りランドを検索して特にこれと言った情報を得られなかったので、軽視しておりましたわ…。
でも真実が二三転して、辿り着いたエピローグ。エンド名にもあるHallucination(幻覚)にピッタリ当てはまる…。この後味、好きすぎる!!!
それにHallucination、AIの生成文に対して「それっぽい嘘をあたかも事実かのように生成する現象」を指すそうで。まさに嘘と幻想で塗り固められたチーズケーキのようなお話でした。マジで好き。
きっと明日は彼女の夢を見る事でしょう。
⑥Fool on the Sugar Board
⑤のエンドと良い具合に争ってる好きなエンドです。この後味もめっちゃくちゃ好き。
途中までは「主人公、やっちまったな…」と思って呆れてプレイしてたのですが、交換殺人の線が見え始めてから画面に前のめりになって読み進めてました。なので最後の回答欄が出てきた時は「食らえ!!!」って感じで一発で叩きつけてましたね。
エピローグで綴られる本来の恋人との関係を見る限り、ホントこの恋人さん頭良い人なんだろうなぁと思いました。それに主人公も今回のことで懲りただろうし、いい関係性になったなぁと感想を抱いたわけです。一つの映画を見終えたような感覚に浸れました。生八つ橋焼いちゃったか…
そしてエンド名。砂糖の板の上の馬鹿。この場合、馬鹿は主人公とその恋人さんの二人になるのですかねぇ。本屋の女の子も元通りの人生に。そして馬鹿二人は砂糖の上で転がっていくエンド。ああ、好きだなぁ~!
そんでもって「死んで治すほどでない馬鹿でありたい」という一文。正に勘一発のところで命を繋ぎとめた主人公に当てはまる言葉であり、このエンドに辿り着いたご褒美の一文って感じがして大好きです。
⑦Higher Girl Pudding
てっきり全部ハズレなのかと思ってこのエンドに辿り着くのが遅くなってしまいました。因果が無理に捻じ曲げられたけど、このエンドもなかなか良い味を出してます。
なるほど、そういう運命の収束もあるなぁ、と作者さんの物語作りの上手さに感嘆しました。
あの先、あの二人の女の子は大親友として仲良くあり続けて欲しいなぁ~。(あるいはそのまま百合ップルに)
エンド名のHigher Girl。高みを目指す女の子とも読めるし、這い上がる女の子とも読める。それらひっくるめて女子力として訳したのだとしたら、センスが良すぎて僕が禿げます。
⑧Inverted Angel
最終エンディング。こればかりは解放条件を調べてから辿り着きました。3つくらいエンドを回収した辺りで、どのルートでも女性が「天使」というワードを使っているのに気づいたんですよね。
でも「彼女は誰だろう?」で天使を入れても特にそれと言ったルートに行かないので、最終的に調べて、他のルートを回収しないと行けないと知ったわけです。
いやぁ、このエンドにはあらゆる感情が乗っかっちゃって…。どう言語化したものか。
ともかく一番胸を打たれたのは、作中でもあった「色」に関わる話ですね。あくまで個人的な考察にはなっちゃうんですけど。
全部の色を混ぜたら黒になるけど、白は全部色が混ざった色。この表現にはホント驚かされましてね…。
黒になる方の色って言うのは、例えば絵の具とかですよね。あれは任意の色を吸収して、それ以外を反射しているって仕組みなんですよね。赤は赤以外の光を、緑は緑以外の光を吸収している。だから全部混ぜてしまうと、全部の光を吸収する黒色に近づいてしまう。つまり反射した光を見る時の話なのです。
この色が混ざるって演出、ゲーム中でも見られましたよね。瓶の中の液体の色で。つまりあれは反射された色。こちらから彼女に色を与えて、それを眺めていたのだと思います。
対して、全ての色を含んだ白色。これはさっきの、色という要素を吸収しなかった全反射の光のことですね。太陽光(白色の光)をプリズムに通すと色が分裂するというのは多くの人が経験済み。
つまり黒に近づく色は、こちら側から与えられた要素によって出来上がった色。そして天使の羽である白は、何者にも影響されない純粋な色。純白というのはそういう意味なのであって、何者でもある彼女と、何者でもない彼女を言い表しているのかなと思いました。
あとはエンド名、そしてゲームタイトルであるInverted Angel。Invertedは"反転した"という意味なので、直訳すれば反転した天使、逆さの天使。
これの意味はずーっと考えてますが、これだという答えはまだ僕の中に見つかりません。しかし気になったのは、Inverting Angel(反転している天使)ではなく、Inverted Angel(反転された天使)であることでした。能動じゃなく、受動体なんですよね。
加えて、何度か作中で出ていた、吊るされていた糸が切れた…のような表現。そこから僕が考えたのは、天使は吊るされて逆さになっているのかな、と。あるいは吊るされているから足音が鳴らない(天使に見える)。
舞台装置に吊るされて、こうして僕たちの前に現れて何者でもあってくれた子。浮いているから誰にでもなれるし、その糸が千切れたら地に足をつけて何者かになれる。時には本当の天使にもなれる。
まだこれと行った答えにはたどり着けていませんが、今のところの見解はこんな感じ。
彼女が明日を目指さず、明後日を目指した理由もこれと行った正解を出せていないですし、まだまだこのゲームに僕の脳は支配されそうです。
(もしかすると、"明"けが来た"後"の"日"の出という意味で明後日と言っていたのかな…とかね。朝焼けの後を彼女は見たかったのかな)
曲の方の『Inverted Angel』の歌詞もなかなか考察の余地がありまして…。というか噛めば噛むほど味がしてェ…。
「言葉はいつだって 聞きたいように聞かれて」
「お眼鏡にかなう色眼鏡で」
の辺りなんかはこのゲームの要素を色濃く表してますよねぇ…色だけに。
そういう奥深さもあり、やはり最後に観た楽曲のMVは本当に読後感が半端なかったです。語彙力がない己が憎い。最後の選択肢の仕様もあいまって…。
作者様のTwitter(頑な)を見てみると、他の楽曲と一部エンドにも親和性があるようで、またゆっくり曲を聴いてみなきゃな~~~と思うばかりです。
最後に(ネタバレ無し)
と、いうわけでインバネの感想の記事でした。これだけツラツラと感想を書き殴りたくなったのは久しぶりでした。
本当に言葉の言い回しが素敵すぎるゲームでした。色んな人に勧めたいゲームですし、実際また一人プレイさせることに成功しているのが現在です。
作者であるSCIKA様には多大なる感謝を。もし他ルート追加のDLCが出るなら絶対買います。そしてこのゲームをプレイするきっかけをくれた名取に感謝を…。
あとインバネってひらがなで書くのがいいのかカタカナの方がいいのか、これも分からない…。
それではこの記事はこの辺りで。いくら感想を書いても全部の気持ちは収めきれない!
だって言葉にできることなんて、考えてることのほんのひとかけらなんだも~ん!!!
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