見出し画像

金森徳次郎と柳田国男

国立国会図書館「近代日本人の肖像」より金森徳次郎

前に、柳田國男が濫読の弊害を戒め、自らの学をやや自嘲気味に語っていて意外だった話を書いた(それも、ポーズかもしれないけど)。

しかし、官界において、貴族院書記官長まで歴任した人物。その仕事ぶりは周囲から脅威の目で見られていたことが、金森徳次郎の『私の履歴書』に出てくる。金森は柳田か法制局から貴族院書記官長に移った後に、大蔵から法制局に入った。

柳田さんのあとを埋めたというのがすこぶる厄介だ。当時に聞いた法制局のルーマーでは、柳田さんは頭が早い、判断が早い、したがって口が早い。何か一種の人造機械があって、いろいろの問題点を詰め込んでハンドルをぐるりと回すと、直ちに妥当な答が相当早い速度で自動的ともいうべき形でどんどん出てくる。だから柳田さんと議論をすると、こちらの提出する議論はまだ終っていないうちに、先生は結論を下してしまって討論終結を宣し、座を立ってしまうと聞かされていた。聞いてみるとこわくなる。

『私の履歴書』第8集(日本経済新聞社、1966)p.64-65

おそろしい「ルーマー(rumor)」があったもので、いわんや金森徳次郎ですら怖いのに、我々においてをや。

『明治大正史世相編』を読んだときにも感じるような独特な直観は、やはり機械の如き高速の判断力に追っているのだなとこの話を聞いたとき思ったのであった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?