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近代日本の図書館と「読書習慣ニ乏シキ国民」

『メディア史研究』55号(2024年2月)掲載。2023年9月のメディア史研究会研究集会「メディアとしての図書館」発表内容の活字化です。

私も絶大な影響を受けた永嶺先生の名著『読書国民の誕生』が講談社から文庫に入りましたが、私なりの応答のつもりで書いた論稿です。


明治30年代、帝国図書館も出来、国民の読書環境はよくなっていったはずなのに、図書館関係者は、明治以来、図書館の利用が少ないことを、読書の習慣が定着していない国民性に求めてきたということと、その認識の転回を昭和戦前期まで辿る…という内容になっています。

どういう状態が実現したら、国民の間に読書習慣が根付いたといえるのか。詳しくは本論をお読みいただければよいのですが、ものすごく端的には、図書館から受験勉強している人の割合が相対的に減ることだとされました。

戦時中は日本人はやっぱり読書国民だという言説が一瞬登場するのですが、そのような議論はまた低調になっていきます。

この話は日本人のリテラシーが高いという話と直感的に矛盾するようなのですが、実態としてよりは、図書館関係者の認識を優先させて考察しております。そして、おそらくそのような構造が大きく転換したのが、『中小レポート』以後なんだろうと。もうちょっと細かい実証は必要でしょうが、大まかな見取り図を描いてみた次第です。拙著『帝国図書館』にいただいた日本近代史と図書館の関わりについての考察を深めよというコメントへの応答も込めたつもりでいます。

ご関心がある方にお読みいただければ幸いです。

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