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多重人格商店街 「慣れていく」

◆NEFNEに関わる人たちによる自由連載《汽水域の人々》
雑貨屋&フリースペースのお店「NEFNE」で交わるひとびと。多様な執筆陣がリカバリーストーリーをはじめ、エッセイ、コラム、小説など好きなように書いています。


悪ノリに慣れた
少しの意地悪に慣れた
陰口に慣れた

笑われることに慣れた
見下されることに慣れた
口をつぐむことに慣れた

明日に光を見ないことに慣れた
昨日をぐるぐる思い出すことに慣れた
心にかさぶたを作ることに慣れた

罵倒に慣れた
怯えることに慣れた
暴力に慣れた

慣れたことがいっぱいなのに
大人になった気がしないのは
別に慣れが成長をくれたわけではなかったから

挨拶を当たり前にされることに慣れてない
感謝されることに慣れていない
人を手伝うことに慣れてない

人のために料理を振舞おうなんて発想にない
人類みな敵で
そうした世界に慣れていたから

人に感謝することに慣れてない
人と共にいることに慣れてない
裏を読まず話すのに慣れてない
親友や恋人という言葉に慣れていない

これらもきっと
わたしに馴染んで
いつかは慣れていくのでしょうか
これを人は成長と呼ぶのなら
わたしのこれまではなんなのでしょうか
ただ
思うのは

明日
わたしに笑いかけてくれたみんなに
挨拶するのに慣れてみたい


【今回の執筆担当者】
青嵐柘榴(あおあらし・ざくろ)/20代。人生の3分の2ほど思い出しだくないけれど、今は人との縁に恵まれました。偏りがすごい。柘榴は誕生石の柘榴石から。尖ったものからネチネチ系、ほのぼの、祈りまで色々書きたいです。本作りたい!

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