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多重人格商店街 「悪魔と審判」

◆NEFNEに関わる人たちによる自由連載《汽水域の人々》。雑貨屋&フリースペースのお店「NEFNE」で交わるひとびと。多様な執筆陣がリカバリーストーリーをはじめ、エッセイ、コラム、小説など好きなように書いています。

おはようこんにちはこんばんは。
今日はいい自責日和かい?
自分を裁きたくてたまらないなら
俺が与えてやろうジャッジメント

「同世代より頭一つ抜けている気がする」
なるほどね
おい掴みかかるな
じゃれあいでも興じたいのか?
そこまで言ってないなんて
そこまで言っていいじゃないか
自分を誇って何が悪い
周りの奴らを使えないと思って何が悪い
ついついしてしまうほどの
自慢話ほど気持ちいいものは無い
自分に酔いしれることの
なんと心地のよいことか
酒がなくても酔えるなんて
健康的だな
それにあんたのルックスで
着飾らないなんてもったいない
自分がどれだけ稼げているか
見せつけてやれ
とんがったあんたのほうがかっこいいや

「物欲が止まらない」なんて
金を貯め込むなよ
その方が人のためにならないってもんだ
あんたが買い上げた品々のおかげで
どこかの誰かが潤うんだ
社会に貢献してんのさ
善人の行いさ
それに欲しいって思いはさ
あんたを賢く強くする
原動力 いわばエンジン ガソリン
それなくしてあんた
なんのために働いてんのよ
空っぽのままあくせく働くより
人間らしくいこう
親しみやすくなっていいと思うぜ

「自分とあの人じゃレベルが違う」
はぁ
ちょっと待とうか
さっきは他より優れてるつもりじゃなかったの
急に人が変わったのか?
心配になるね
歴然たる実力差
人望の差
そいつの恋人モデル並み
できるなら変わってよこの人生と
わかるぜその気持ち
だったらこうしよう
モデル顔負けの恋人の前で
犬のうんこ踏ませようぜ
ガキみたいってそりゃあねぇ
遊び心がありませんといけませんよ
奴の加齢臭半端なくなって
実は不倫していたなんてことがバレてしまって
騙されて借金背負うとかどうよ
不幸を望むくらいどうってことないさ
なんせ叶うかどうかはご本人様か
カミサマでしか決められないんだから
それはそうとあんたの力で
地位を奪って崩すのはどう
資本主義に則るだけさ
ルールを守って気に入らないやつ蹴落とすのに
必死になろう
エンジンかけよう
ちなみにネガティブキャンペーンは
法律で禁止されてないぜ
まあ言ってみただけ

「人に怒鳴ってしまった」と
注意はされるわな
感情の蓋がどっかいっちまったことは
災難だったな
泉から湧き続けるように
薪をくべられた火のように
留まらないその怒り承りましょう
小出しにしないのが悪いのさ
決まらない服装
遅れる電車とタクシー
声のでかい若者
無愛想な接客
店で走り回るガキ
しょうがなくないさ
言っちゃいけないと思うからでかくなるんだ
こっそり舌打ちしよう
心がスッとするだろう
苛立ちが止められない
気が立ったあんたの姿
色気があるね
人の形した犬は
喜んであんたにしっぽを振るよ

「最近食欲に自制がきかない」
よっぽどやってらんないのさ
褒美が欲しくて堪らないんだ
頑張ったあんたを誰が労った?
なあ誰だ
それが悪さしてんのさ
自分で自分の機嫌を取ろうとしただけ
バランス取ろうとしただけ
周りの奴らに変わって
自分を労っているだけ
なんなら今からピザパーティーと洒落こもう
あんたの武勇伝聞かせてよ
この特等席で聞かせてよ
明日もあんた頑張っちゃうんだから
旨いもん食って元気出そうや

「怠け癖がある」
見えないけれどね
本当はやりたいアレやコレ
称賛の妄想を現実に
頑張ったで賞を受賞せよ
残したい結果結果結果
残さなければならない結果結果結果
ちょっと水飲んでいい?
聞くにはつらい話だねぇ
自分に厳しいのねぇ
もう充分なのでは?
現状維持でいくら入るよ
食っていけりゃあいいじゃない
止まらない欲のまま働くのもいいけれど
の〜んびり力抜いて
深呼吸して生きていくのも悪くない
俺は人間差別しない
どんなあんたでも大歓迎だ

それであんたさ
いくつか人格があるみたいな言い分で
俺を試したのかな
俺はあんたをまるっと肯定したいだけさ
心の友になりたいのさ
なんでも話せる相手
欲しくはないか?
無法地帯の駄弁り場が
あるとないじゃ人生違うな
あんたを支えたいのさ
あんたかっこいいからさ
振り向かないみんなの目が悪いんだ
曇ってんだ
俺は目がいいからね
あんたという一等星
このままにしたくないんだよ
プロデュース業さ
一銭も懐に入らないけどね

さあ!
心を開いてくれたかい?
信じてくれるのかい
聞かせてあんたの話を

他人の恋人狙ってんのかい
教えてくれてありがとう
大丈夫
あんたを断罪しようとする奴は殺
すとかは物騒ね
自宅のトイレ破壊に
留めとくよ
他人のものほどよく見えるものはないし
本当は自分の方が先に好きだったかもしれないし
他人と好きな人が被るなんてあるあるよ
ラブコメ見たことないの
綺麗も汚いもない
あんたの中で輝く恋心
封じ込めるなんてもったいない
あんたが恋い焦がれる人は
あんたの良さに気づくのが遅れたから
あんたじゃない奴を選んだのさ
応援してるよ
今この瞬間想い人は
あんたじゃない奴と人に言えないようなことして
あんたじゃない奴だけ見つめてるんだ
その目があんたに向けられるのを
手伝うさ
親友みたいなもんだろう?

あんたの残りの人生を
俺とその想い人と暮らそう
あんたは無罪!
普通の人間
俺の友達
想い人の 将来の恋人

お返ししてくれるのかい
それ目当てだろうって人聞きの悪い
でも確かに
安々と渡せるもんでもないだろう
死ぬまで友達でいてくれ
死んでも友達でいよう
親友になろう
なんでも話してくれ
隣の席は俺のもの
あんたが死んだ時おおいに悲しんで
肉体から抜け出たあんたの魂抱いてやるからさ
俺といてくれよ
輪廻転生
極楽浄土
抜け出して
俺と 俺たちといこう
聖なる光の届かない場所で
歓迎パーティ始めるぜ


【今回の執筆担当者】
青嵐柘榴(あおあらし・ざくろ)/20代。人生の3分の2ほど思い出しだくないけれど、今は人との縁に恵まれました。偏りがすごい。柘榴は誕生石の柘榴石から。尖ったものからネチネチ系、ほのぼの、祈りまで色々書きたいです。本作りたい!

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