多重人格商店街 「猫になろうと思います」
わたくし今から
猫になろうと思います
猫というのはおさかなが好きなのだと
たいていのひとに思われています
なのでわたくしシェフに
おさかなのレシピを所望します
淡白な白身魚のソテーは
わたくしの舌に合いませんでしたが
作ってくれた人がいるので
ごちそうさまを言いました
猫というのはおひるねが好きなのだと
たいていのひとに思われています
なのでわたくし窓のそば
カーテンの内側に潜り込んで
日光浴しながらおひるねします
太陽がオレンジ色になるまでねてしまい
おひるねではなくなってしまいました
なにもかぶらず寝ていたのに
布一枚わたくし被っています
被せてくれてありがとうなのです
猫というのは自由気ままだと
たいていのひとに思われています
なのでわたくし朝10時
知らない街の知らない駅に降り立ちます
改札を出てぶらぶらと
それこそ気の赴くままに歩いていき
喫茶店のパフェをおひるごはんにしました
同伴者はオムライスを食べました
その半分をわたくしにくれました
飼い猫はひとからごはんをもらって当たり前なので
おお猫してると言うと
同伴者は笑いました
猫というのはじゃれるのが好きだと
たいていのひとに思われています
家主にたいあたりをして
髪の毛を引っ張ってみたり
靴下の臭いを嗅いでくさっと言ってみたり
目の前に糸を垂らされそれを無視したり
家主の服を集めてベッドに散らかして
片付けさせないよう服の上に乗ってみたりしました
家主は呆れて言いました
「はい、ひとに戻ってください」
そしてわたくしに服の片付けを指示しました
シェフに
布を被せてくれたひとに
同伴者に
家主に
あなたに
わたくし言うのです
「わたし、あなたと結婚してよかったです」
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