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「この世しかない」の帰結が「生命尊重主義」に至るのは自然なことだ

 このところのSNSなどでは、おそらく疫病禍や社会保障費の増大などの世相を反映してのことだと思うが、「生命尊重主義」や「お命大事」という(これまでは当然のこととして一般にはあまり疑問視されなかった)現代日本社会の基本的な思想態度(傾向)が、「あまりにもそればかりが強調されすぎている」として、批判の対象となっている様子をしばしば目にするようになった。私としては、たしかにそのような社会の傾向がもたらしている弊害のほうに目が行く人々の気持ちはわからないではないけれども、しかし他方でその批判は、むしろ批判者たち本人の基本的な思想態度の性質そのものによって、躓かざるを得ないものなのではないかと思う。

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