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ニコニコ動画にはサヴァイブして欲しい――個人情報流出には我慢するしかない

クレジットカード以外の情報漏洩をKADOKAWAが認めた。今のところ、従業員と契約者が主な被害者であるようだ。

NewsPicksの暴露はどう働いたのか? NewsPicksが明かした栗田COOとされるメールによれば、どのみち決裂しそうな文面ではあった。ただし、暴露が追い風となったのか、クラッカー側はダークウェブにて犯行声明と支払い期日が7月1日であることを明らかにした。

想像以上に深刻な事態であり、NewsPicksのすっぱ抜きの功罪をどう判断すべきなのだろう?

ニコニコ動画の利用者にとっては、以降のカドカワ人事も不安要素になる。内部告発が社内政治を反映してのことであるなら、ドワンゴとニコ動の将来も危ういかもしれないからだ。

岐路に立たされたKADOKAWA。要求に従わなければ、ニコ動利用者の情報が流出される。ちなみにプレミアム会員は住所や生年月日を登録している。N高利用者もひょっとすると無傷では済まないのではないか…… 利用者を保護するためとして要求に従った場合、今度は犯罪組織に莫大な資金を与えたとして非難される。どちらに転んでもただでは済まない。

夏野社長はどちらを選ぶのだろう? 顧客からの信用か、それとも社会正義か? カネの問題で考えると、犯人に支払った方が安く済むかもしれない(これについては後述する)。

利用者情報が流出されてしまった場合、ニコニコ動画としての信用は失墜するものの、ドワンゴが存続を希求すれば、付いていくユーザーは一定数いるのではないか。さらに数年経てば、この事件も綺麗さっぱり風化することだろう。したがって、事件後のロードマップをどう描いていくのかと、どのように引責するかが、非常に重要だと思う。

私の予想では、KADOKAWAはブラックスーツの要求を呑まないだろう。NewsPicksのせいもあって同情票がどのていど集まるかは未知数だが、ニコ動は有効会員数9800万人を擁する歴史あるサービスであることから、潰そうとする社内人事さえなければ、完全終了とはならずにリブートできるはずだ。だから、利用者は今から流出を覚悟しておくしかない。

ところで、NewsPicksが投稿したyoutube動画で表示された暴露メール、および、ダークウェブで公開されたクラッカー・ブラックスーツの犯行声明(公開されたスクリーンショット)を読んでみて、気が付いたことを記しておきたい。

ブラックスーツがダウンロードした1.5TBを説明するリスト中に、暴露メールでは「クレジットカード情報」とあったが、今回の犯行声明では除かれている。したがって、KADOKAWAが主張する「クレジットカード情報は保存されていない」は正しいのだろう。

犯行声明はNewsPicksが暴露したメールとほぼ同じ内容だった。要求全額を払わないつもりなら、入手した機密データを全て流出させると脅している。ただし、ブラックスーツが要求したとされる「金額」については、犯行声明文では伏せられている。

ブラックスーツは「夜にしていることを赤裸々にされたい人はいない。我々は日本国民のプライバシーを握っている」と言って、ニコ動の閲覧履歴が醜聞を呼ぶだろうことを匂わせている。しかし、ニコ動ではアダルトコンテンツは削除対象であることから、そのような理解に対しては疑問が浮かぶ。

ブラックスーツは「ウホッ」や「やらないか?」系の、いわゆるホモ動画を誤解している可能性がある。LGBTQをせせら笑うような内容だから、世界的に非難を受けると考えているのかもしれない。蛇足ながら、クレジットカード会社のVISAが手を引いたのも、もしかすると同じ理由によるのかもしれない。

ここからは下世話なネタである。ご容赦願いたい。

栗田COO宛てとされるメールによると8,250,000+2,980,000=11,230,000ドルが犯人の要求額である。現在の1ドル160円の為替レートで約18億円。

ニコニコ動画のプレミアム会員数は、2024年3月期第3四半期の決算によると、125万人と公表されている。ニコニコ動画の有効会員数は9796万人。楽曲収益化サービス利用者などはニコ動利用者と重なるだろう。

KADOKAWAの従業員数は1,998人と公表されている。DWANGOの従業員数は約1000人だという。N高等学校・S高等学校・R高等学校の生徒数は、公表によると28,942人。

漏洩した情報がセンシティブなものを含まずに二次被害もなく、一般的な連絡先情報程度である場合、慰謝料は3千円~5千円が相場だそうだ。

住所などの個人情報が流出してしまうケースは、プレミアム会員125万人に加え、従業員3千人と、N高・S高・R高の利用者2万9千人に上るのではないか。

18億÷128万2千人=約1404円。一人当たり、このくらいの慰謝料になるのではなかろうか。あとはケースバイケースで二次被害が確認された方は万の額になるのかもしれない。

ただし、N高・S高・R高の利用者が今回の被害者に当てはまるかどうかは現状では定かでない。

ニコ動の有効会員数からプレミアム会員数を除いた9671万人の被害はメールアドレス程度の流出で済むと思われる。

昔、ソフトバンクが会員のメールアドレスを漏洩した際に渡された慰謝料はたしか800円だった。ニコ動の一般会員への金銭的なお詫びはそのくらいかもしれない。

……ということは、犯人の要求を呑んだ方が安上がりになりそうだ。

付け加えておくと、追加の要求額が支払われなかった場合、犯人は既に支払われた298万ドルを返すと栗田COO宛てのメールには書いてあった。

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