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おいしいローストチキンのつくり方


はじめに


2023年12月3日の「知財系 もっと Advent Calendar 2023」の記事です。

クリスマスにちなんで、FI A23L13/00の範囲内で、かつ特許請求の範囲又は明細書に「ローストチキンのレシピ」が書いてある特許文献を集めてみました。
ご家庭で作れるローストチキンのレシピを調べることが目的のため、調理機器等の発明は除いてあります。

なお、権利が生きている出願(今回の場合は、各特許出願のステージが「審査請求前」、「特許 有効」)のレシピは、業として以下の行為(特許法2条3項各号)をする場合は、特許請求の範囲と各自の実施態様をご確認の上、侵害の回避等の対応をしてください。

1 そのローストチキンの生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為

2 その方法の使用をする行為

3 前述の2の行為のほか、その方法により生産したローストチキンの使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為


調査方法及び結果

1.検索条件

検索年月日:2023年12月3日
使用データベース:J-PlatPat
検索式:[A23L13/00/FI]*[ローストチキン/TX] 40件ヒット
抽出方法:上記の検索式で得られた文献集合に対し、特許請求の範囲又は明細書を対象に、ローストチキンのレシピに関する記載の有無を目視で確認した。
抽出文献数:5件

抽出した文献は、課題の記載に基づき以下の3つに分類した。

(1)主に食感の向上を目的としたもの
(2)主に味の均一化を目的としたもの
(3)その他


2.結果

(1)主に食感の向上を目的としたもの

特表2015-527078
優先日:2012年9月7日
ステージ:特許 有効
イベント:年金の支払い

【課題】
【0011】
上記のような点を考慮して、本発明におけるローストチキンの製造方法では、にんにくと唐辛子粉、塩のような下味のための材料を入れて、生鶏に下味を付けた後、低温冷蔵熟成を通じた肉質軟化過程を経て、鶏肉の臭いを除去した後、小麦粉ととうもろこし澱粉に、塩、胡椒、にんにく粉、丸のままの胡椒、ジンジャーパウダー、唐辛子粉などが混合された天ぷら粉に衣をつけて混合油で揚げた後、油を落とし、グリルで練炭直火焼きするローストチキン製造方法を提供しようとするものであって、酸化安定性があり、油気が除去されてくっつくことがなく、コレステロールを多量に摂取する恐れが解消され、調理後の保存性が良く、肉汁内の水分が保護され、中身はしっとりして柔らかく、かりっとした風味を有するローストチキンを提供することを目的とする。

【解決手段】
【0012】
このため、本発明では、一定サイズの生鶏650~750g基準、最初に添加した叩いたにんにくを4ティースプーン、最初に添加した唐辛子粉を4ティースプーン、最初に添加した塩を1ティースプーン入れて下味を付ける第1段階と、下味を付けた生鶏を0~5℃の低温で12時間冷蔵熟成する第2段階と、薄力粉70wt%、とうもろこし澱粉27wt%、2番目に添加した塩0.5wt%、胡椒0.5wt%、2番目に添加した叩いたにんにく0.5wt%、丸のままの胡椒0.5wt%、ジンジャーパウダー0.5wt%、2番目に添加した唐辛子粉0.5wt%を混合した天ぷら粉で衣を付ける第3段階と、大豆油20wt%、菜種油10wt%、ヤシ油70wt%を混合した天ぷら油を作る第4段階と、165~170℃の天ぷら油で、衣を付けた3段階の生鶏を11~15分間揚げる第5段階と、揚げたチキンから油を落とし、グリルで5~7分間練炭直火焼きする最終段階と、を含むことを特徴とするローストチキンの製造方法を提供するものである。

【レシピ】
【0018】
本発明に適用されたチキン肉は、頭と内臓を除き、胴部の重量が650~750gである7号鶏を基準にして実施し、チキンは食べやすくなるように10~12ピースに切断した。

【0019】
生鶏650~750g基準、最初に添加した叩いたにんにくを4ティースプーン、最初に添加した唐辛子粉を4ティースプーン、最初に添加した塩を1ティースプーン入れて下味を付ける段階における1ティースプーンは1小さじの計量スプーン5ミリリットルとし
て適量であり、味を付ける過程において、生鶏から出た肉汁により、下味のための材料が均一に染み込むようにするものである。

【0020】
大量生産の際には、下味が付けられたチキンを、味付けの代わりに回転筒に入れて攪拌するタッブリング、または真空タッブリング、インジェクション方式の中で選択される方式を取る。

【0021】
下味を付けた生鶏を0~5℃の低温で12時間冷蔵熟成して肉質内の水分を抜き出し、肉質軟化過程を経て鶏肉の臭いを除去した。

【0022】
冷蔵熟成過程において、肉内の水分が一部抜いて、次の段階の衣の結着率を改善するようにした。

【0023】
次の段階の天ぷら粉は、薄力粉70wt%、とうもろこし澱粉27wt%、2番目に添加した塩0.5wt%、胡椒0.5wt%、2番目に添加した叩いたにんにく0.5wt%、丸のままの胡椒0.5wt%、ジンジャーパウダー0.5wt%、2番目に添加した唐辛子粉0.5wt%を混合して作る。
【0024】
上記において、最初に添加した塩と2番目に添加した塩と、最初に添加した叩いたにんにくと、最初に添加した唐辛子粉と2番目に添加した唐辛子粉とのそれぞれは同一の材料で調理した順序によるものである。

【0025】
上記において、とうもろこし澱粉は天ぷら粉がチキンによく付くようにバッター剤として作用するようにしたものであり、準備された天ぷら粉に冷蔵熟成されたチキンをぐっと押さえることで落とし、衣が付くようにしたものである。

【0026】
天ぷら油として、大豆油20wt%、菜種油10wt%、ヤシ油70wt%に適正混合したものは、菜種油の比率が大きいほど臭いが激しくなり、最少量を混合して天ぷら油の融点を高めたものであり、ヤシ油は低温の場所では硬くなる性質のためのものであり、特に、ヤシ油に含まれたミリスチックアシッドとリューリクアシッドによる泡が形成され、混合油から発生する泡が衣の周辺に膜が形成され、緩やかで効率的な熱伝達によって、衣の表面にメールラード反応(maillard reaction)を促進し、こんがりと風味を加えるようにしたものであって、混合油の混合比による嗜好度であり、比較例は、韓国内のチキン業界から選んだメーカーの中で1種を選択して、揚げた状態のサンプルで老若男女50人の官能テストにより表1のように評価した。

【0028】
一方、上記のように、温度165~170℃の天ぷら油で衣を付けた3段階の生鶏を11~15分間揚げた段階の比較例と、最終的に揚げたチキンの油を落とし、グリルで5~7分間練炭直火焼きする最終段階からなる本発明のローストチキンの実施例の全体的な嗜好度は、次の表2の通りである。

【効果】
【0030】
以上のように、本発明に係る揚げる段階を経たフライドチキンに比べて、グリルで練炭直火焼きを経る最終段階のローストチキンの場合が、全体的な嗜好度の側面で優れており、鶏肉のしっとりした肉汁としこしこした肉質感が楽しめるようにしたローストチキンであって、さっくりとした食感などの効果がある。

特開2020-103265
優先日:2018年12月27日
ステージ:審査請求前
イベント:公開公報の発行

【課題】
【0004】
本発明は、淡白で歯ごたえに乏しい畜肉を、肉が締まって歯ごたえがあり、且つジューシーで旨味の有る畜肉とするための畜肉食感改良製剤およびそれを用いる畜肉食感改良製法等を提供することにある。

【解決手段】
【0005】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酢酸ナトリウム、リン酸塩類およびカルシウム塩および/又はマグネシウム塩を含んでなり、その水溶液が中性からやや酸性である製剤を食肉に含侵させることで、食肉の締まりを良くして食したときの歯ごたえを向上させ、更に糖質を加えることによりジューシー感を増強して、食感を改良しうることを発見した。

【レシピ】
【実施例1】
【0023】
ローストチキン
(1)ピックル液の調製
砂糖1.0重量%、食塩0.3重量%、水98.7重量%からなる溶液を沸騰させた後常温まで冷却したものをピックル液(pH7付近)とした。
(2)鶏もも肉(国産ブロイラー肉)の処理
鶏肉の皮を剥離し、脂肪を除去したものを約30g毎にカットした。
(3)浸漬液の調製
上記(1)のピックル液に、表1に記載の製剤を指定量上乗せ添加(重量%)して浸漬液とした。
(4)鶏肉の浸漬処理
約30gの肉片に切り分けた鶏肉と、上記(3)の浸漬液をタンブラー(Hollymatic社製 HVT-30モデル)に投入(鶏もも肉:浸漬液=100:35)し、10r.p.m.の条件下、25分間タンブリングした。
(5)鶏肉の熱処理
タンブリング後、液切りした該検体を250℃に予熱しておいたオーブンで250℃、12分間熱処理をした。熱処理後、室温にて自然冷却し、以下の方法でテクスチャー(硬さ)と食感試験(官能試験)を行った。

【0024】
【表1】

【効果】
【0022】
本発明の畜肉用食感改良剤は、あくまでも畜肉の食感改良剤であり、日持ち剤とは本質的に異なるものである。更に言えば、日持ち剤が、食肉を腐敗、変質から守る静菌剤又は殺菌剤であるのに対して、本発明の畜肉用食感改良剤は畜肉を引き締め、歯ごたえを高めることにより、肉質を地鶏や放牧牛馬の肉質に近いものにするための肉質改良剤である。本発明の畜肉用食感改良剤は、その目的を達成させるものであり、結果として畜肉に高い付加価値を付与するものである。


特開2001-224336
出願日:2000年2月10日
ステージ:特許 消滅
イベント:年金不納による特許権の消滅

【課題】
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、近年の食感のソフト化指向の中で、重合リン酸塩添加による特有の強い弾力の食感ではなく、肉汁感がありソフトな食感となり、かつ、加熱時の歩留まりが良い食肉加工食品を提供する事を目的とする。

【解決手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、乳清蛋白質、増粘多糖類及びアルカリ性塩類を含むことにより、出来上がった食肉加工食品は、重合リン酸塩では出すことのできない肉汁感があり、ソフトな肉感を有する食感となり、かつ、加熱歩留まりがよくなることを見つけた。

【レシピ】
【0035】実施例2 ローストチキンの調製
下記処方に従い、水に1以外の原料を加え充分攪拌溶解した後、1を加え溶解し、調味液を調製した。 鶏胸肉100部に対し、調味液30部を加えタンブラーで2時間タンブリングを行ない加水させ、170℃のオーブンで中心75~80℃程度まで焼成しローストチキンを調製した。

【0036】
処方 130%加水用調味液 pH9.62 部
1.食塩 1.8
2.砂糖 1.2
3.調味料 0.6
4.乳清蛋白質(ゲル強度0.3N/cm2) 2
5.カラギーナン 1.5
6.クエン酸三ナトリウム 1.1
7.炭酸水素ナトリウム 0.7
8.炭酸カリウム 0.7
水にて調整 全量 100 部とする

【効果】
【0037】
このローストチキンは、非常にソフトでジューシーであり、適度な肉感もあって、おいしいものであった。


(2)主に味の均一化を目的としたもの


特開2023-115872
出願日:2022年2月8日
ステージ:審査請求前
イベント:公開公報の発行

【課題】
【0006】
上記のような点を考慮して、本発明における表皮を剥離する方法を用いたローストチキンの製造方法では、鶏肉の部位による味としっとり感の差が生じることのないローストチキンを提供することを目的とする。

【解決手段】
【0007】
このため、本発明では、末端骨部及び余剰脂肪部を削除した一定サイズの若鶏2000gを基準とし、調理人の手指を若鶏の腰部から表皮と肉の間に差し入れて、表皮を肉から剥離する第1段階と、水83.5w%を沸騰させ、おろしにんにく漬け濃口醤油5.8w%、諸根菜(網入り)4.2w%、岩塩2.9w%、薄口醤油1.3w%、料理酒1.3w%、グルタミン酸0.8w%、醸造酢0.1w%、乾燥オレガノ0.1w%を投入し、中火にて再沸騰させ、諸根菜(網入り)を取り除き自然冷却したピックル液に24時間漬け込む第2段階と、若鶏1羽につき、秘伝の調味料120gを表皮と肉身の間に均等に詰め、調理用糸にて両脚、両手羽を結ぶ第3段階と、若鶏全面に料理酒を噴霧し、280度オーブンにて1時間焼いたあと、30分庫内にて余熱調理する最終段階と、を含むことを特徴とする表皮を剥離する方法を用いたローストチキンを提供するものである。

【レシピ】
【0013】
本発明に適用された鶏肉は、鹿児島県出水市産のいずみ鶏を鶏末端骨部及び余剰脂肪部を削除した、一定サイズの若鶏2000g全量を基準とする。

【0014】
調理人の手指を若鶏の腰部から表皮と肉の間に差し入れて、そのまま五指を肉の上に広げながらすべらせるように全面各所に移動させ、鶏全体の表皮を肉から剥離する。

【0015】
寸胴鍋に水10リットルを沸騰させ、おろしにんにく漬け濃口醤油700g、網入り諸根菜500g、岩塩350g、薄口醤油150g、料理酒150g、グルタミン酸100g、醸造酢10g、乾燥オレガノ10gを投入し、中火にて再沸騰させ、網入り諸根菜を取り除き自然冷却したピックル液に、上記の鶏肉を完全に沈ませて24時間漬け込む。

【0016】
ピックル液から取り出した鶏肉1羽につき秘伝の調味料120gを表皮と肉身の間に均等に詰め、調理用糸にて両脚、両手羽を結び整形する。

【0017】
表皮焦げ付き防止と色味効果を目的とした料理酒を全面に噴霧した鶏肉を、280度に熱したオーブンで加熱し、1時間経過後に加熱停止後、30分間庫内に放置し、完成とする。

【効果】
【0008】
本発明に係るローストチキンは、若鶏の表皮を肉から剥離する段階を通じたローストチキンに関する製造方法であって、鶏肉全面の肉部に直接ピックル液と秘伝の調味料が浸透することにより、鶏肉の部位によって味の濃度としっとり感の差が生じることがないという効果がある。


(3)その他

特開平02-145172
出願日:1988年6月4日
ステージ:査定なし
イベント:未審査請求によるみなし取下
課題として廃鶏肉の使用

注:廃鶏とは採卵期間を終えて鶏舎から出される雌鶏のことで、肉が硬いため正肉利用には適さないとされています。
(出典 畜産ZOO鑑 http://zookan.lin.gr.jp/kototen/tori/t321_5.htm 2023年12月3日アクセス)

【課題】
「本発明が解決しようとする問題点」
廃鶏肉は他の畜肉に比較し筋肉が小さく、皮や鍵、靭帯等が非常に強靭であるため軟化処理するには、これらをあらかじめ除去しておく必要があり、解体や整形に要する手間がかかるために作業効率や正肉歩留まりが悪く、工業的にはミンチ肉やペースト状の練り肉としての利用や罐詰食品として一部で応用されているにすぎず、その加工利用はごく限られているのが実状である。

以上の観点から本発明は筋肉組織を破壊しない方法で、中抜きの屠体や皮付きまたは骨付きや骨なしの腿肉や胸肉を肉塊のまま軟化処理するとともに、過剰な脂肪をも同時に除去する方法を解決することによって、これまで食肉として利用性の低かった廃鶏肉を若鶏肉並みの品質に改善し優れた食肉素材として提供しようとするものである。

【解決手段】
「問題点を解決するための手段」
上述のごとく廃鶏肉を骨付きのまま、またはできるだけ大きな筋肉のまま利用しようとする場合、圧力釜等により加圧蒸煮する方法が一般的であるが、かかる高圧加熱による方法では蛋白質の変性が大きく、皮や筋肉の収縮が著しいため保水性の低下による歩留まりが悪くなる。

また筋繊維が脆くなるため柔らかいが、欠点としてザラツキ感や、罐詰食品に共通してみられる、いわゆるレトルト臭が認められるなど、成鶏肉が木来有している旨味を充分生かした加工方法とは考えられない。

本発明はかかる欠点を解決するため加圧しない条件で、廃鶏肉を若鶏肉並みの品質に改善する方法を検討し、以下の方法を開発した。
具体的には、廃鶏肉の緒、靭帯、筋膜などを筋引きすることなく皮付きの肉塊のままのもの、例えば生肉や塩漬したもの、もしくは香辛料や、各種調味料で味付けしなものを原料として、耐熱性のあるプラスチックフィルムに充填後、真空バックし65℃~85℃の範囲の温度で10~16時間加熱することにより、肉塊を均質に軟化させる事を特徴とした廃鶏肉の軟化処理方法である。
加熱器具は温度制御の出来るものであれば、温熱または乾熱方式のいずれでも構わない。
加熱温度は65℃以下では加熱ロスは低下するが、軟化が十分でなく、また一方85℃以上では加熱ロスが増加し好ましくない。
加熱時間は10時間以内では軟化が不十分であり、14時間以降はほとんど変化しないが16時間以上加熱するとしだいに褐変化が進行し、色調と風味が低下する。
加熱処理後、直ちに使用する場合は開封し分離した脂肪と水分を廃棄すれば、調理素材として利用できるが、貯蔵する場合は開封せずにそのまま冷蔵または冷凍することによって保存性の高い食品素材として応用出来る。

【レシピ】
(5)、中抜きの丸鶏を整形し5%の食塩水に1晩塩漬したものを材料として、丸のまま真空バックし80℃の循環式の熱風乾燥機で約16時間加熱した後、開封し約250°Cのオーブンで10~20分間、表面を焼くことにより廃鶏肉のローストチキンが得られる。

【効果】
「発明の効果」
本発明によればこれまで食肉として利用価値が低かった採卵鶏やブロイラ一種鶏等の廃鶏肉を、原料の形態に制約されることなく、肉塊のまま均質に軟化させることができるため簡便で利用性の高い食肉素材として高度利用が可能である。


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