寺山修司 『新・病草紙』

眼球のうらがへる病

「ある女、まなこ裏がへりて、外のこと見えずになりたり。瞠らむとすればするほどにおのが内のみ見え、胃や腸もあらはなる内臓の暗闇、あほう鳥の啼くこゑのみきこゆ。

女、かなしめども癒えず、剃刀もて眼球をゑぐり出し、もとのやうに表がへせむとすれど、眼球に表なし。耐へがたきまゝ、表なしの眼球を畑に埋めたり。

女、四十にして盲目のまゝはてしが、畑には花咲かず。
たゞ、隣人たちのみ、女を世間知らずとして遇せしと伝ふ。

鶏頭の首なしの茎流したる川こそ渡れわが地獄変」

持て余る才能を持ちながら、若くして大病を患ってしまい、常に死と、残された少ない生の時間を意識していたであろう寺山修司。
全速で全力でこの世界を突っ走って行ったように思います。

よく時代を挑発していたと言われていますが、早く俺に追いついて来いと、ぐいぐいと引っ張って行ってくれていたように感じます。

#寺山修司
#新病草紙

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