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no.32:雨



大雨はブラームスで乗り切る


今日は朝から大雨で
「満員電車は心を揺らさず無の境地で過ごそう」
ブラームスの「交響曲第1番ハ短調」を微動だにせず
ジッと車内で聞いていました。

「SEIJI OZAWA指揮 / The サイトウ・キネン・オーケストラ」で聴きました。
もう名曲中の名曲、壮大な曲を聞いて
このグチャグチャでビチャビチャでギューギュー
とんでもない"DISGUSTING!"な状況を
「たいしたことない」ってやり過ごしたかったのです。

ブラームスの苦労と情熱が内包されたこの交響曲は、
完成に20年の長い月日を費やしたそうです。
思った通り、
大雨でひどい満員電車、
楽勝に乗り切れました。


八木重吉の『雨』

恋人が男声合唱にとりつかれていました。
その彼が所属する男声合唱のコンサートで初めて、
『雨』という曲を聞いて、
心が打たれました。

雨の音がきこえる

雨が降っていたのだ

あのおとのようにそっと世のためにはたらいていよう

雨があがるようにしずかに死んでいこう

八木重吉の4行だけの詩に
多田武彦という作曲家が
メロディーを乗せた『雨』


男性合唱にピッタリな曲です。

八木重吉の詩『雨』は彼の詩集『貧しき信徒』に収録されています。
この詩集が発表された1925年頃は、どんな生活を日本人は送っていたのでしょうか?まったく想像ができません。大正デモクラシーの影響を受けた時期で、政治的な自由や市民運動が活発だったと思います。そして今よりも男性が外で働くという使命を持って、お金を稼ぎ、一家を支えていた大黒柱だったと思います。

「あのおとのようにそっと世のためにはたらいていよう」
「雨があがるように静かに死んでいこう」

晴耕雨読ではなく、雨のように断続的に静かに働き、雨が上がれば死んでしまうのです。
雨はいつか上がります。
死もいつかは訪れます。

これらの自然の流れに、抗わず穏やかに受け入れるべきものという精神世界に心が打たれました。

雨が降ると、恋人は思い出さないけど
いつも『雨』の詩を思い返します。

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