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長部田海床路|マジックアワーの出会い

水平線に夕陽が吸い込まれ、空が金色に輝く時間帯をマジックアワーというそうだ。日本語では逢魔が時ともいって、昼と夜の交わる時間は古来から不吉なものとされていたらしい。現在でも交通事故が多発するのはこの時間帯だ。

しかし、私はこの昼と夜の交差するこの時間が昔から大好きだ。

なぜなら、まるで魔法のような出会いがあるのもこの時間帯だから。マジックアワーという名前のとおり、不思議な魔力を感じることがある。


この日、私は長部田海床路(ながべたかいしょうろ)の夕陽を写真に収めようとここを訪れた。大分麦焼酎「二階堂」のテレビCMにも登場し、広大な干潟と雲仙普賢岳を真正面に臨む、ロケーション撮影にはもってこいの場所だ。実際に、結婚式の前撮り写真をここで撮影するカップルもよく見かける。

ちょうど潮が満ち始め、夕陽と共に海の散歩道も海へ沈もうとしているとき、ひとりの男性と目が合った。

彼は私の父親と同年代で、趣味のバイクツーリングがてら長部田海床路の夕陽を撮影しに訪れたという。ピカピカの大きなバイクにまたがり、エネルギッシュでガタイの良い男性だ。ハードボイルドな衣装に身を包み、どこからどう見てもワイルドである。

しかし、彼は見かけによらず人懐っこくソフトな語り口で、ツーリングのことや近隣の撮影スポットのことを楽しそうに話してくれた。そして、どちらからともなくお互いに言い出した、「あなたを撮らせてください」のひとことで意気投合。マジックアワーの魔力も相まって、私には父親ほど年の離れた友人ができた。

年の離れた友人の彼が、愛用の立派なカメラで撮影してくれた一枚がこちら。

水平線に沈む夕陽と、金色に染まる空のグラデーションが印象的で、彼と私の不思議な出会いを記念する写真となった。

お互いに写真を撮りあった後、年上の友人からコーヒーをごちそうになった。そのときの写真は撮らなかったので残っていないが、二人で語り合った話の内容はよく覚えている。

私たちは二人とも、マジックアワーの空の色が好きだということ。

どんなに高価なコーヒーよりも、最高のロケーションで飲むコーヒーが何より美味しいこと。

そんなことを二人で話し、マジックアワーの長部田海床路を二人で静かに見つめた。この出来事があってから、私はまたいつでも彼とコーヒーが飲めるようにとコーヒーセットを持ち歩くことにしている。

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