くずし字を読んでみよう 〜『随感録』へのアプローチ〜
物置から出てきた先祖の歌集を読み解く「ある歌人神官がみた明治」。書くにあたり必要なのが、くずし字を読むスキルだ。
くずし字解読能力ゼロからスタート
先日から少しずつ書き進めている記事ですが、そもそも物置から古文書が大量に出てきた際、何が書いてあるのか、よくわからなかった。
まったく読めないわけではなく、ところどころ読めるけど読めそうで読めない。書道の心得がある人ならお茶の子さいさいだろうな、とは思う。
くずし字が読めない人なら覚えがないだろうか。美術館や博物館に展示されている絵巻の文字を読んでみたい、という思い。私はある。
4代前の先祖「葦の舎あるじ」の水茎の跡を読み解くことで、くずし字読解能力も手に入れたい。というか当初は「葦の舎あるじ」も読めなかった…それくらいのレベルからの話です。
先に結果をいえば、ちょっと慣れたらサクサクとまではいかないが意外と解読できるようになる。そう、要は「慣れ」なんだけど、これは、1.さほどクセのない(というかむしろ端正な)、2.同一人物の手蹟で、3.内容が和歌、という3つの条件に大いに助けられた。
歌集はくずし字入門の教材として最適
くずし字の中でも変体仮名の解読は、ほぼ「字母」の把握にかかっている。字母は、ひらがなの元になった漢字で、ひらがな一文字に何種類かある。
和歌は、ひらがなが多い上に「〜かな」「〜なり」「〜けれ」など、ある程度頻出するし、察しがつく。同じ人物の筆なら、一度判読できた文字はあともおよそ読める。
また、「本歌取り」という独特のお約束のおかげで、古歌の言い回しが出てきて読めるパターンもある。
千本ノックのようにひたすら解読していると、そのうち字母をおぼえることができる。
漢字多めの下知状とか証文とか、条件が違う古文書解読はまた別です。
くずし字解読をサポートするアプリ
とはいえ、もう少し効率よく解読できないものか。文明の利器とかで。
なんとタイミングのよいことか、まさにその頃、AIでくずし字を読むアプリが相次いで公開された。
AI-OCRを活用した解読アプリ
2021年8月30日に正式公開された世界初のAIくずし字認識アプリが、情報・システム研究機構 データサイエンス共同利用基盤施設 人文学オープンデータ共同利用センター(長い…略称はROIS-DS CODH)が開発した「みを(miwo)」。
そしてTOPPANが開発したくずし字解読アプリ「古文書カメラ(ふみのは)」も満を持して2023年6月1日より配信開始。
AIはくずし字をどれほど解読できるのか? 試しに表紙の「葦の舎あるじ」を読んでもらおう。さてお立ち合い。
まずは「みを(miwo)」
続いて「古文書カメラ」
どちらも、「あ」は読み取れたけどちょっと難しかったようです。
ただ本文はある程度の精度で読める時もある。
それと「ある歌人神官がみた明治(5)」でとりあげた煙草の2首
まあまあ読み取れている。どちらも、ひらがなはそこそこいけるが漢字に課題が残る様子。
初心者が読み解こうとする際、とっかかりとしてのサポートにはなると感じている。
くずし字解読スキルを高める学習アプリ
くずし字学習支援アプリ「KuLA(クーラ)」は、ドリルみたいにひたすら字母を覚えるにはちょうどいい。あと、しみまるがかわいい。
アプリは大阪大学文学研究科が中心になって開発したという。そのいきさつやユーザー層の話はけっこう興味深い。
書籍を持っていると心強い
アプリも手軽ではあるが、特に漢字を判読するのはやはり本があったほうがいい。ベストセラーはこちらのようです。
くずし字解読辞典 普及版 付・かなもじの解読(東京堂出版)
最初は使い方もよくわからなかったが、これも慣れるととても便利。結局、慣れなんだ、慣れ。
仮名変体集(新典社)
私が持っているのは、もともと母の蔵書で昭和43年出版の第7版。母の旧姓の記名があり、相当年期がはいっている。
いまだに刊行されているのだから、やはりこれもベストセラーなのでしょう。
まとめ
葦の舎あるじの『随感録』は、225首あると判明したものの、すべてを完全に判読できたわけではない。これからもちまちまと読み解いていく作業は続く。
それでも、少しだけくずし字が判読できるようになって、美術館や博物館に展示されている絵巻の文も、ところどころ読める…というほどではない、わかる文字が拾えるようになった。
個人的なアプローチであまり参考にならない内容かと思いますが、
くずし字を覚えるなら歌集をテキストにするといい(古今集とかなら答え合わせも簡単ではかどると思う)。
くずし字解読アプリの精度はそこそこ。ダメな時はほんと残念無念だがヒントを得るには使える。
くずし字辞典を1冊もっておき、ことあるごとにひいてみるのが効果的
要は慣れ。
こんな感じです。
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