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リンパ腫、LGLリンパ腫とは

リンパ腫とは

リンパ腫は「血液のがん」とも言われます。血液の中にある白血球の一種であるリンパ球が、がん細胞になってしまった病気です。
がん細胞とは、元々は正常だった細胞に遺伝子の異常などが起こり、正常な機能を持たないまま、過剰に増殖するようになってしまったものです。がん細胞はいろいろな臓器や器官にできるので、そのできた場所によって性質や呼び方が変わります。胃がん、肺がんなどは臓器にできたもので、リンパ腫はリンパ球ががん化した病気ということです。

リンパ腫の症状

リンパ球は骨髄で作られ、リンパ管を通って身体中を循環しています。そのリンパ管の途中途中にリンパ節という節目があり、関門のような働きをしています。そして、がん化したリンパ球が見つかると、そのリンパ節で止められるのです。そのため、リンパ腫になると全身のリンパ節にリンパ腫の細胞が増えて、リンパ節が大きくなります。
また、リンパ節にがん細胞が溜まると、そこから周囲に悪影響を与えます。シコリを作ったり、臓器の正常な組織をがん細胞にしてしまったり、血液の中で増えたり。そして、場所ごとにさまざまな症状が現れてきます。

人間の場合の図ですが、参考図。

( 武田薬品工業株式会社ホームページより )

代表的なリンパ腫として、以下のような分類がされています。

縦隔型リンパ腫

胸の中のリンパ節に発生するリンパ腫です。胸に水が溜まる、呼吸困難になるなどの症状が見られます。また、猫白血病ウイルス感染症を持っている猫に発症することが多いとも言われています。
うちの先代の猫もリンパ腫だったのですが、いま思えば最初に出た症状はこれでした。ぐったりして、口で息をして、病院に行ったら胸に水が溜まっていました。猫白血病も持っていたので、典型的なものだったのでしょう。

消化器型リンパ腫

胃や腸管、特に小腸や腸間膜での発症が多いリンパ腫です。嘔吐や下痢、食欲不振などの症状があり、体重も減っていきます。猫のリンパ腫の中で最も多く見られるもので、猫白血病とはあまり関係なく、歳を取ってから発症する場合が多いと言われています。

多中心型リンパ腫

リンパ節は全身にあるので、いろいろな場所で発症します。中枢神経、腎臓、皮膚、鼻腔などに現れることが多く、多中心型とされます。リンパ節が腫れたり、食欲不振や発熱を伴うこともありますが、無症状ということもあるようです。
猫白血病ウイルス感染症を持っている猫に発症例が多く、若くても罹るようです。

マヒナの場合、症状が出たのは、黄疸、肝臓、膵臓でした。上記の代表例とは異なり、猫白血病ウイルス感染症にもかかっていないこと、まだ5歳と若いことから、当初はリンパ腫の可能性は低いと考えられていました。

そのため、わりと呑気にしていたのですが。

リンパ腫の原因と予防方法

猫のリンパ腫の原因は分かっていません。人間の場合でも原因ははっきりしないことが多く、ウイルス感染、免疫不全、細菌感染、化学物質の過剰摂取、生活習慣、タバコなどが疑われていますが、特定はできない段階のようです。
猫の場合、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスがリンパ腫の発生率を高めること、高齢の猫ほどかかりやすいことは知られています。また、シャム猫の発症率が高いとも言われています。しかし、マヒナのようにそれらの条件に当てはまらなくても発症することもあります。

したがって、予防方法も確実なものはありません。もちろん、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスのワクチンを打ち、感染原因となるワクチンを持った猫との接触を避けるために完全室内飼育にする、といったことはできます。ただ、それで100%防げるものではありません。

人間の場合、日本人では、2013年の国立がん研究センターの調査によると、年間で10万人に対して男性13.2人、女性9.8人ほどが発症しているそうです。0.023%ほどでしょうか。
おそらく猫の方が人よりも発症率は遥かに高いとは思われますが、運としか言えない気もします。

LGLリンパ腫とは

今回マヒナが罹ってしまったのは、リンパ腫の中でもLGLリンパ腫という種類のものです。
LGLというのは、large granular lymphocyteの頭文字で、大きな粒状のリンパ球というような感じでしょうか。大顆粒リンパ球と訳されることが多いようです。したがって、LGLリンパ腫は、大顆粒リンパ球性リンパ腫ということになります。

通常のリンパ腫はリンパ球が正常な機能を持たずに過剰に増殖するものです。LGLリンパ腫の場合、それに加えて、リンパ球が肥大化して大きくなり、その中に粒状のアズール好性顆粒というものが入っていることが特徴とのこと。
また、通常のリンパ腫は白血球がガン化するのに対して、LGLリンパ腫はT細胞やナチュラルキラー細胞がガン化するものであることも特徴とのことです。

見た目もなんとなく憎たらしい。

Large granular lymphocytes (LGLs)

説明もしてもらい、写真も見せてもらいましたが、『動物のお医者さん』と『はたらく細胞』程度の知識しかないので、違いや特徴はなんとなくしかわかりませんでした。

しかし、LGLリンパ腫は通常のリンパ腫と比べても悪質で、悪化が早いらしいのです。
猫のLGLリンパ腫では寛解した例もあるものの、生存期間の中央値は数週間とも言われています。そのせいもあり、最初に検査をしてくれた病院の担当の獣医さんは非常にネガティブな説明に終始していました。お手上げ、諦めるしかない、というような態度でした。

ただ、それほど治療が難しい種類のリンパ腫であることは確かなのでしょうけれど、そのネガティブさは治療した事例すらほとんどないことにも原因があるようでした。

その後、数人の獣医さんに話を聞くと、そこまでネガティブな反応ではなかったのです。LGLリンパ腫だからといって一般のリンパ腫と全く違うわけではない、やってみなければわからないけれど道がないわけではない、というような雰囲気。
また、過去の事例の生存期間には安楽死を選んだものも多く含まれている、特にヨーロッパではその傾向が強いため、実際に治療をした子のデータだけが集計されたものではない、ということもわかりました。
しかし同時に、実際にLGLリンパ腫を見たことがほとんどないので、手探りの治療になる、とも言われました。獣医腫瘍科認定医Ⅰ種を取得している、がんに関して知見の深い獣医さんでもそのような話でした。

悪化が早いということに加えて、研究が進んでいないことも、LGLリンパ腫を厄介なものにしているのでしょう。

ともあれ、厄介なことには変わりありません。しかし、LGLリンパ腫に勝てれば、治療法を探すお手伝いにもなれます。論文にも載れるかもしれません。

同じ病気にこれからなってしまう猫たちのためにも、マヒナはがんばるのです。
たまに怒るけど。

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