再生医療・免疫療法とは
がん治療には、まず標準的な3つの治療法があります。
手術(外科療法)
放射線治療
化学療法(抗がん剤治療)
これらが基本となることは人も猫も変わりません。ただし、リンパ腫は手術で取り除くことができるものは非常に珍しく、多くの場合は抗がん剤治療が主となります。
しかし、抗がん剤は副作用が出てしまったり、がんが進行して効果が出にくくなったりする場合があります。このような時に、抗がん剤と併用して治療の効果を高めたり、副作用を抑えたりするために再生医療、あるいは免疫療法を選ぶこともできます。
人の医療では、厚生労働省に認定されているものもあり、研究も蓄積されてきています。放射線や抗がん剤治療の効果が出なくなってしまった人でも、再生医療で劇的な効果が得られて回復した事例もあるようです。
猫や犬でも、同様の治療が使われるようになってきました。
しかし、再生医療、免疫細胞治療、免疫療法など、細かいところで呼ばれ方が異なっていたり、がんワクチンという独特の呼び方をしている研究などもあり、違いがわかりくくなっています。今回はそれらをまとめてみます。
リンパ球を増やす方法
再生医療とは、猫の細胞を取り出して体外で培養し、体に戻して治療に役立てるものです。
現在、猫に対して実用に至っている再生医療は主に2つあります。
まず、活性化リンパ球(CAT)療法です。
猫や犬の血液からリンパ球を取り出し、薬剤を加えることでリンパ球の活性化・増殖を行います。そして2週間でリンパ球を1,000倍程に増やし、点滴で体内に戻します。
自分のリンパ球を使うので副作用の心配がほとんどないと言われています。期待できる効果は、生活の質の向上、癌の進行や再発の抑制です。
リンパ球は白血球の一種で、体内に侵入してきた病原体などを攻撃する役割を担っています。リンパ腫は、本来の役割を果たせなくなってしまったリンパ球が異常に増える病気です。そこで、健康なリンパ球を増やすことで、正常な状態に近づけることができます。そして増えた正常なリンパ球が、がん細胞を攻撃します。
樹状細胞を増やす方法
もう一つが、樹状細胞一括性化リンパ球(DC-CAT)療法です。
樹状細胞は、がん細胞を攻撃する能力をもっているわけではありません。がん細胞を認識し、その情報をリンパ球に伝えて攻撃対象とする命令をするのが役割です。
この樹状細胞を、がん細胞(腫瘍組織)と一緒に培養します。すると、より効率的にリンパ球にがん細胞を攻撃させられる樹状細胞になります。この樹状細胞と、活性化して1,000倍に増やしたリンパ球を体内に戻すことで、がん細胞に対して集中的にリンパ球が攻撃できるようになるのです。
がんワクチンはちょっと異質?
上記の2つに加えて、検索していると「がんワクチン」あるいは「自家がんワクチン」と書かれている免疫療法も見つかりました。これはまた少し異なる方法のようです。
自家がんワクチンの説明によると、がんの手術で取り出したがん組織を原料にしてワクチンを作製するとのことです。それを体内に戻すことで、免疫細胞が活性化され、活発にがん細胞を攻撃するようになるという内容でした。
方法や働きを見ると、樹状細胞一括性化リンパ球(DC-CAT)療法と同じようにも感じられます。しかし、専門的なレベルのことはわかりませんが、少し異なるようです。研究されている鳥取大学の岡本芳晴教授に問い合わせたら、関東でこの治療をおこなったことのある獣医さんを2軒教えていただけました。
上記の活性化リンパ球(CAT)療法と樹状細胞一括性化リンパ球(DC-CAT)療法に比べると、まだ研究段階に近く、一般化はされていない方法のようです。
再生医療・免疫療法の問題点
効果があるかもしれない、マヒナにも受けさせてみるべきかと考えました。ただ、何人かの獣医さんに治療内容や実際の効果の例を聞くと、いくつか問題点もあるように感じました。
効果があるかわからない
まず、免疫療法でリンパ腫を完全に治すことはできない、ということです。もちろん抗がん剤などによる治療でも、完全に治すことはできないとされています。病状が落ち着いて普通の生活ができるようになっても、常に再発を警戒しなければなりません。
ただ、免疫療法が効果を示すかどうかは、その猫やリンパ腫の種類・状態、そして相性によるようです。
他の治療との兼ね合いを考慮しなければならない
例えば、リンパ腫を攻撃する効果のある薬は、通常のリンパ球もある程度は一緒に壊してしまう。その抗がん剤を使っている段階でリンパ球を増殖して体に戻しても、効果が見られなくなってしまうかもしれない。現在、抗がん剤治療を始めて、効果が出ているのであれば、そちらを優先すべきかもしれない。というようなお話もありました。
また、マヒナのLGLリンパ腫では、さらに事例がないので判断がつかないということもあります。
費用がかかる
外科的な手法で細胞を取り出し、それを研究所で培養して、身体に戻すわけですから、非常に手間がかかります。まだ研究段階なので、できる人も場所も限られています。確立された技術ではないので、全てがオーダーメイドに近いのでしょう。その結果、コストが高くなります。
これらを調べてみた結果、マヒナには再生医療はしていません。もちろん費用の問題もありますが、実施レポートを見てもはっきりと治癒した例は見られなかったので。一方で、病状が進行しても再生医療を施すことで苦痛が減って通常に近い生活を送れたという報告もあるため、決して無駄なことではないとも感じます。
どんな治療をするかしないか、常に非常に悩ましいことですね。
ここから先は
マヒナの闘病期(有料版)
内容は無料版・有料版ほぼ同じです。もしサポートいただける場合、有料版をお選びください。一部個人情報やプライベートな内容、治療代の詳細などを…
よろしければサポートをお願いします。いただいたサポートはマヒナのお薬代に使わせていただきます。