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トリガー式GMレスについて。


はじめに、

この記事はマーダーミステリーやストーリープレイングの制作者のみに向けて発信しています。
あなたが制作者でないのならば、
読まないことを強く推奨致します。

また、既にGMレス作品を創る技術を確立している方向けというよりは、その方法自体に悩んでいる0→1の方に対して向けた内容になっています。
その点をあらかじめご了承くださいませ。










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 では進めます。

 まずは「この記事の意味について」です。

 この記事で述べるGMレス作品の手法。
 それは全ての作品をGMレス化し作者をGMから解放する魔法ではありません。むしろGMレスに適した作品をよりスマートな"完全GMレス"と呼べるものに昇華するための施策となっています。

 何故なら、GMレス化はプレイヤーの満足度やプレイアビリティを犠牲にして実現するようなものではないからです。順番として思いついたギミックやストーリーなどのコンセプトがあり、そこに対して適した姿がGMレスであった、だからGMレス化するというのが正しい順番です。

 GMレス化は「プレイヤーの満足度が変化しない、もしくはGMレスにすることによってよりスマートに遊ぶことができる」のなら行うべきです。

 そうでなければGMを組み込むべきです。
 その前提で話を進めましょう。

1、GMレスの類型

 GMレスには型というものがあります。
 時間で進むものと、そうでないものです。
 その内後者について、私が個人的に

 「トリガー式

 と呼んで研究を重ねて来ました。
 (ちなみに前者は「時限式」と呼んでいます)

 今回言及するのは「トリガー式」です。

 しかし、これは私個人の発想ではありません。
 様々な方が作品を通じて「よりGMレスでの体験をよいものにしよう」という努力が積み重なって生まれたものです。私自身たくさんの失敗を重ねて来た自覚があります。そして、それらの私個人の範囲で収まりそうなものに関してのみに焦点を絞り今回の記事を書かせていただきます。


2、トリガー式に適した仕組み

 トリガー式とは、その名の通り「何かを引き金にして物語が進行する設計」のことです。これはハンドアウトを追加しながら進むストーリープレイングもしくは協力型に特化しています。

 何故その2つかというと、トリガー式は時間の縛りを設けないため、プレイヤー内部に犯人がいる場合は不利益を被る可能性が高いからです。

 また、複雑なギミックにも適していません。
 ギミックに応じて判定や複雑な操作が必要になるのであればGMを介入させた方が早いからです。LINE@やbotなどを利用する方法もありますが、使用ツールが4つ以上になってしまうのならGMを介入させた方が個人的にはスマートに思います。

 しかしながら、トリガー式をその他の手法(時限式やGM有り)と併用することも可能です。そうすることで追加ハンドアウトの渡し方などがよりスマートになる可能性があるため、GMレスに適していない作品だということが、そのままGMレスの手法が全く使えないという理由にはなりません。

 そして、活用するのはココフォリアでもLINE@やbotでもなくホームページとリンクの移行です。これが最もトリガー式に適した形なのですが、その理由は「プレイヤーの操作が最も簡単でありその先にある内容が全く読めない」からです。

 メリットは全てがプレイヤーのやり取りのみで進むため、より深くプレイヤーたちだけの世界に入り込めることです。当然、そのためには「プレイヤーがほぼ間違いなく進行に迷わない」と言えるレベルのトリガーが必要になりますが。


3、トリガー式の懸念

 さて、トリガー式を創るにあたって個人的に感じてきた懸念を話さねばなりません。トリガー式を導入する際の最も大きな懸念は「プレイヤーがトリガーの奴隷になる可能性があること」です。

 トリガーが設けられている場合、多くのプレイヤーはおそらくトリガーを探したりそれが落ちてくるのを待つことに注意を割きます。そしてトリガーが発動すると、その指示に則った行動や発言を行うだけの奴隷になってしまうのです。

 それではただの読み合わせの下位互換です。

 プレイヤーの自由な議論を阻害しトリガーの操り人形にしてしまう設計に他なりません。それはおそらく制作者自身も望んでいないでしょう。

 それを避けるためには自由度が必要です。

 この場合の自由度とは選択肢のことではなく発言内容のことを指しています。そのためにはシナリオの余白を大きく創った上で「もっと余白で遊んで大丈夫なんや!」とプレイヤーが察することのできるポイントが必要になりますが、その際マーダーミステリーだと余白の使い方や嘘によって情報の正確さを欠いたりしてしまうので、その点を踏まえると最もトリガー式に適しているのはストーリープレイングであると言えます。

 しかし、マーダーミステリーであっても問題なく運用する方法はあるので、その方法については次項で併せて説明させていただきます。


4、トリガー式の創り方

 では、トリガー式の創り方についてです。
 単にトリガーを設けるだけなら簡単です。

「『A』という発言をしましょう」
「『A』と聞いたらBをしましょう」
「Bが行われたらCへ進んでください」

 構造としてはこれだけです。
 しかし、これでは色気がないので、

「『おはよう!』と挨拶をしましょう」
「挨拶されたら相手と握手をしましょう」
「握手をしたら次のページへどうぞ」

 と、こんな風に世界観に落とし込みます。
 この世界観に落とし込む作業が丁寧であれば丁寧であるほどプレイヤーの会話を阻害せずスムーズに世界を歩いてもらうことが可能になります。

 自然なトリガーの見つけ方は日常にヒントが転がっています。会話を始める時、会話を終えて立ち去る時、次の行動を始める時、どんな言葉を使いますか? それがそのままトリガーになります。

 今度はここに発言内容の自由を創ります。

「『おはよう!』と挨拶をしましょう」
「挨拶されたら相手が今朝は何をしていたのか訊いてみましょう。今朝の行動について十分に話が訊けたなと思ったら握手をしましょう」
「握手をしたら次のページへどうぞ」

 こうすることにより、プレイヤーは「今朝の行動についての話」という完全に自分たちに委ねられた会話の場を得られます。これが事件性がなさそうな「朝食について」なら、内容の一切をプレイヤーに委ねることさえ可能になります。

 ストーリープレイングならば、その自由をワンシーン毎に広く設けることによってプレイヤーに自分たちだけその回限りの記憶を創ってもらうことも可能になります。そこに「相手の好きなところを伝えてあげましょう。(照れ屋なので恥ずかしがってしまうかもしれませんが)」などと加えるとロールプレイが好きな方は「このくらいふざけてもOKなんやな!」と察することができます。

 もちろんより直接的に「この時間はめちゃめちゃ自由にやってもらって大丈夫やで!!」と書いてしまってもいいかもしれません。そのあたりは制作者がどんなプレイヤーにどんな空気感で遊んでもらいたいかと擦り合わせてください。

 前項で懸念があると述べたマーダーミステリーで活用する場合ですが、質問の起点と次のトリガーを発動するプレイヤーを同じにしてください。

 質問をしました。
 回答をしました。
 その回答がトリガーです。

 では、読み合わせの下位互換です。
 また、複数人が複雑なトリガーを持つ状態を創るのも得策ではないように思います。何故なら、そのうちほとんどのプレイヤーは今か今かとトリガーを待ち続けて議論の内容が全く頭に入っていない可能性があるからです。そして、その場合は大抵相槌を入れる余裕すらありません。

 質問をしました。
 回答をしました。×人数分
 回答が一巡したら「A」と言いましょう。
 (そして全員次の追加ハンドアウトを得ます)

 こうすると発言の自由度が担保されます。
 この場合の「A」は指示を見た瞬間に「あ、これは一区切りついた時の言葉だ」とわかるようなものが好ましいです。もちろん、それはトリガーを待つプレイヤーたちに余裕を創るためです。

 さらに言うと、個人的にはトリガーに関する記述はシステムだとひと目でわかるものが好ましいように思います。何故なら、指示を溶け込ませてしまうとプレイヤーは「指示を読み取るためにエネルギーを割く必要」が生まれるからです。

 以下は私の使っている実際の進行説明文です。

 記憶を読んでいくと、
 そのうち【行動】【選択】のように墨付き括弧で囲まれた部分が出てきます。その墨付き括弧で始まる部分は物語を進めるのに必要な指示になります。よく読んで、それに従ってください。
 それでは、
【行動】キャラクターが決まったら、それぞれの記憶を読み始めましょう。時間などは設定する必要はありません。読むべきところまで読んで自分が何をするべきかがわかったら、その行動を取りましょう。また、沈黙の時間はお互いのことに想いを馳せる時間に使ってください。

 いかがでしょうか?
 こうすることにより、おそらくほとんどのプレイヤーが開始の直前に指示の受け取り方のおおよその形を把握することができます。この場合の感想として個人的に最も嬉しいのは「なるほど、読み進めてみりゃわかるんだな!」です。


5、テストプレイの心構え

 GMレス作品のテストプレイに挑むにあたり制作者として必要な心構えがあります。それは「プレイ中に決して口を出さないこと」です。

 さらに言えば「その場に制作者がいる」という安心感があってはいけません。何故ならそれはGMがいない不安やプレイヤー同士の進行相談による解釈揺れについて検証できていないからです。

 GMレスをより完全なものとして出すのであればテストプレイ時に制作者が言うことはこうです。

このテストはGMレスによる運用が全く問題ないものであるかの確認を含めます。私のことは完全にいないものとして扱ってください。大変心苦しいですが、進行に躓いても私が口を出すことは基本的にありません。また、BGMの変更なども決して行いません。あらかじめご了承ください

 基本的にとしたのは「完全に進行が不可能となった場合は補助をせざるを得ない」からです。
 しかし、それ以外は何があっても絶対にこちらから補佐をすることはないとプレイヤーに感じていただけない限り、それはGMレステストプレイと呼べるものではないと個人的には思います。


6、まとめ

 私が"完全GMレス"と名乗る際に使用しているトリガー式GMレスの創り方や懸念点などを述べてみましたがいかがでしたでしょうか?(twitter上でGMレス全般に関する質問を受け付けておりましたが、そちらはまた別に記事にしたいと思います)

 トリガー式GMレスは言い換えると「プレイヤーを場面に合わせてGM化する」方法です。

 そうしてGMに回っていた楽しみもプレイヤーに還元するのが目的の1つではありますが、前提としてプレイヤーとしての楽しみが担保されていなくてはなりません。また、プレイヤーはGMでないが故に「全体像を把握している」という余裕がなく、その部分についても楽しみを損なわないようにしつつ慎重に担保しなければなりません。

 そして、あくまで「GMレス化はプレイヤーの満足度やプレイアビリティを犠牲にして実現するものではない」というスタンスは変わりません。

 これはGMレス化に関しての失敗と成功を積み重ねて改めて感じたことであり、その上でさらに「プレイヤーだけで遊べることがこの作品に存在する新たな価値の1つである」と言える作品創りを体系化していくことが現在の目標です。(そのうちの1つと呼べる作品が既に私のストーリープレイングにあるのですが、実際に遊べばすぐにそれであるとわかるためこの場での言及は避けておきます)

 もしこの記事やGMレス全般に関する質問があればtwitterアカウントなどでご連絡ください。

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