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関係ない夜

夜の遊歩道を歩く速度は、雲がかかる月の明かりの強さに呼応して、早くなったり、遅くなったりしながら、2人の距離も近づいたり遠ざかったりして、お互いの体温と鼓動にシンクロした。

「関係ないけどさ」とあの人が切り出す時は大抵、関係はあることを私は知っているけど、本人はたぶん、そんな空気自体を振り払いたいだけなんだろうから、うん、とだけ言う。

たぶん彼はもうそれだけでよかったんだと思うし、実のところ、それだけで、よかった。

関係ないよ、ね。


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