森ときのこ

月が綺麗な夜にさんぽしながら、森のことを考える。

霧のフィルタがかかった緑に差し込む光の影のコントラスト、穏やかにたたずむ岩はうっすらと苔むしているのだけれども、近づいてみると、小さな苔は確かに植物で、そのひとつひとつにとっての地面にしっかりと根を張っている。

きのこは岩から少し離れた樹木の側にさりげなく生えていて、そのかわいらしい傘を少し畳んだり、広げたりしながら、とおりかかる生物が存在を意識したとたん、その記憶に滑り込む。

役目を終えたきのこは、もうそれまでのきのことは違うモードに気配を変え、次の生物がやってくるのを、ただ、待っている。

そして、森の木々も呼応するように気配をほんのすこしに変える。それはちょっとしたフィルタの深度かもしれないし、光の加減かもしれない。

ただ、そういう、他愛もない遊びを繰り返しながら、こんな月の夜にも、きのこはそこにたたずむ。

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