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【鉄道ネタ】JR鹿島線〜高速バスに呑まれた高規格なローカル線

日本全国には、個性的な路線が数多く存在します。
今回は千葉県・香取駅から茨城県・鹿島サッカースタジアム駅を結ぶJR鹿島線を紹介します。

1.JR鹿島線の概要

1.1 どこを走行しているか

JR東日本の路線図より

JR鹿島線とは千葉県・香取駅を起点に、茨城県・鹿島サッカースタジアム駅までの17.4km、全6駅を結ぶ路線です。

が、実際の運行上の起点はJR成田線・佐原駅から。
また、反対側も鹿島サッカースタジアム駅はカシマサッカースタジアムで試合がある時のみ営業の臨時駅で、実際の運行はひとつ手前の鹿島神宮駅まで。
カシマスタジアムで試合があるときも
JR鹿島線は鹿島神宮駅までの運行で、
鹿島サッカースタジアム駅に行くには
鹿島神宮駅で鹿島臨海鉄道・大洗鹿島線に乗り換える必要があり、JRの路線の駅なのに
JRの車両で行くことができません。

1.2 使用車両

鹿島神宮駅に停まるE131系

鹿島線では、2021年よりE131系車両が主に使われています。
E131系はワンマン運行対応車両。
ワンマン運行に切り替えられるということは、
利用者が少ないということ。
なぜ利用者が少ないか?
沿線住民が少ないからか?
鹿島への移動需要がないからなのか?
その辺の事情を次章で述べます。

2. 東京〜鹿島の公共交通事情

Wikipediaより、JRバス関東車両の「かしま号」

鹿島周辺には日本製鉄の鹿島製鉄所や水郷筑波国定公園、鹿島神宮、更には先述したカシマサッカースタジアムがあり、
ビジネスから観光まで幅広い移動需要があります。
なのに何故鹿島線はローカル線化しているのか。

それは高速バス「かしま号」が強すぎるから。

かつて鹿島線には東京からの特急「あやめ号」が走っていましたが、
かしま号にシェアを奪われ、2015年に定期運行廃止。
鉄道で東京から鹿島へ行く場合、
現在では途中で複数回乗り換えが必要で、
かつ鹿島線の運行頻度は1,2時間に1本程度。
所要時間も速くて2時間半程度。

対して、かしま号ならば鹿島地区まで乗り換えなしで1本、
かつ1時間に3,4本と高頻度の運行本数。
所要時間は渋滞がなければ2時間程度。

東京〜鹿島の移動をめぐる戦いは
高速バスの圧勝となっています。

3. なぜJR鹿島線はローカル線なのに高規格路線なのか

乗りものニュースより、北浦橋梁を渡る鹿島線車両

さて、このJR鹿島線はいかにもローカル線な路線で全線単線。
にもかかわらず、香取駅を出発した付近を除くと全線の殆どが高架で高規格使用。

それは何故なのか?

調べてみると、元々は1960年代に
鹿島臨海工業地帯の開発に伴って
鹿島〜鉾田〜水戸の貨物・高速輸送が計画される。
1970年に先行開業したのが現在の鹿島線。
しかし、工事が進んでいたのにもかかわらず、
残りの区間は国鉄での開業が断念。
第三セクターの鹿島臨海鉄道が残りの部分を引き受け、
1985年に鹿島神宮〜水戸が鹿島臨海鉄道・大洗鹿島線として開業。

元々は特急列車の運行が計画されていたため、
鹿島臨海鉄道区間も高規格使用。
だけど単線でかつ非電化。
鹿島臨海鉄道・大洗鹿島線もJR鹿島線に引けを取らないネタ路線となっています。

鹿島神宮駅に停まる鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の車両。

4. 実際に鹿島神宮まで往復してみた感想

4.1 千葉から鹿島神宮まで鉄道で移動

2022年、実際に鹿島神宮まで行ってみました。
行きは千葉から鹿島神宮まで鉄道で移動。

まず、自宅の最寄りから千葉駅まで出て、そこからJR成田線で成田駅まで。
以前は千葉駅から成田駅を経由して銚子まで至る列車がありましたが、
現在はその運行が朝晩のみなので、
鹿島線が発車する佐原駅まで向かうには
基本、成田駅での乗り換えが必要で面倒。
ただ、千葉から成田までは成田空港行きの快速や特急もあるので、本数で困ることはありません。

成田駅で銚子行きの列車に乗り換え。
成田から佐原までの移動が思いのほか長く感じました。

そして、佐原駅で2両編成の鹿島線に乗り換え。
先述の理由のため、どうせガラガラだろうとたかを括っていたら、
車内はぎゅうぎゅうで満員電車状態。
周りを見ると鹿島アントラーズのレプリカユニフォームを着た大勢の人達が。
どうやら鹿島アントラーズの試合の日とバッティングしてしまったようです。

ゲキサカより、スタジアムに集うアントラーズサポーター

当日は鹿島線の車窓を楽しむことを期待していましたが、満員状態のため窓からの景色を楽しむことができず。

当日の千葉から鹿島神宮への移動はまず、
「疲れた」というのが率直な感想でした。

4.2 帰りは鹿島神宮から海浜幕張まで高速バスで移動

関東鉄道の2階建てバス

帰りは鹿島神宮から鉄道で帰る気がせず、
かつ丁度良い時間に海浜幕張を経由する高速バスがあったので、そちらを利用。

鹿島神宮駅から東関東自動車道・潮来ICまでは
鹿嶋市内の要所に停まりながらの走行。
高速道路に乗るまでが長いな、と感じました。

しかし、高速道路に入ってからはあっという間。
東京駅へ向かうかしま号でもきっと同じように感じるでしょう。

以上、鹿島までの移動で鉄道と高速バスの両方を使ってみて、
自分は高速バスの方が圧倒的に楽だと感じました。
他の人もそう感じる人が多いのだろうか、
高速バスが鉄道に圧勝している理由を体感できたように思います。

5. 鹿島線のこれからの可能性

5.1 かしま号の弱点

ということで鹿島線の現状を述べてきましたが、
果たしてこの先の鹿島線に未来はあるのでしょうか。
少なくとも高速バスからシェアを取り戻すのは無理でしょう。

ではどうするか?

ここで、かしま号の弱点を考えてみます。
かしま号は東京駅を出発した後、
次に停まるのは茨城県は潮来。
千葉県内は東関東自動車道を吹っ飛ばすので、
千葉県内の客を拾うことができません。
(それともあえて千葉県内の客を無視しているのか)

このまま何も方策を打たず放置すれば、
鹿島線は更に衰退の一途を辿るでしょう。
千葉県内から鹿島への移動需要をいかに拾うことができるかが鍵のように思います。

5.2 千葉県内のアントラーズファンをいかに拾うことができるか

先ほど、「千葉県内からの鹿島への移動需要」と述べましたが、果たしてそんなものはあるのだろうか、と思われる人も多いと思います。

ここで思い出してほしいのは、
アントラーズファンで埋め尽くされた鹿島線車両のくだり。
東京から向かうファンは絶対にかしま号を使うでしょう。
当日鹿島線に乗っていたアントラーズファンはおそらく千葉県在住の方たちだと思われます。

ここで推測されるのは、
アントラーズファンの千葉県民は実は多いのではないのかと。
千葉県内のJリーグのチームはジェフ千葉と柏レイソルがありますが、
成田市等、千葉県北部ではそれらのチームより鹿島の方が近い。
また、ジェフ千葉が長年J2にいて弱いので、
だったらジェフの次に近くて、かつ強いアントラーズを応援するか、ということも起こり得る。

カシマスタジアムでの試合開催日限定で
千葉駅あるいは成田駅から臨時の特急か快速を鹿島神宮まで往復で走らせれば需要があるのでは、と素人の私は考える。

しかし、JR東日本はジェフ千葉の筆頭株主。
千葉県民には(千葉県民以外も)ジェフ千葉を応援してほしいと思っていると思われ、
その辺はあまり乗り気にならないだろうということも考えられる。

それでは。

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