文化部版「邪視(にゃん丸)」

私の所属しているなんだかよく分からない雑多ジャンルグループ「文化部」のTRPG組3人で2年ぶりに「白物語」をプレイしました。シナリオは「邪視」を改変・省略して書き出しました。「邪視」の二次創作物になります。

GM:ほんだ(@neco_cult)

PL:キリ、さちう

俺が「71歳」のときの話だ。
冬休みに、「叔母」の別荘に遊びに行くことになった。「叔母」は最近「お母さん」に振られたので、小さいころから仲良くしていた俺を誘ってくれたらしい。もちろんOKした。
「夕方5時」に「叔母」が迎えにきてくれて、そのまま車で出発した。片道「5分」はかかる長旅だったが、話をしたり音楽を聴いたり、楽しく過ごしていた。
途中、スーパーで夕食の食材を買い、山道を登って別荘へ。それほど大きくはないが、木造「川」のオシャレな隠れ家的な印象だった。周りにいくつか「川」は見えるが、「120人はいる」様子だった。
夕食は庭でバーベキューをして、食後は暖炉のある部屋でゲームをしたり、ビデオを見たりして、深夜になると「恋バナ」で盛り上がった。
ふと、「叔母」が思い出したように「お風呂入るけど、押すなよ!押すなよ!」と言った。なんでも地元の人間でもめったに入ることがなく、「押す側の人間」も出たことがあるらしい。そんな「こときいたらぜつてーに押すし…!」とその時は思った。
朝の5時まで遊び倒してようやく眠りについた俺は、部屋に差し込む日光で目を覚ました。もう昼の12時を回っていて、喉がカラカラになっていた。「叔母」はまだ寝ているようだったので、水を飲んでからベランダに出た。 
ふと部屋の中に「ハズキルーペ」があることを思い出し、ちょうど裏山に面していたので望遠鏡を持ってきて覗いてみた。
30分程、遠い町や鳥を見ていると、裏山にふと「段ボールに入れられた猫」が目に入った。
背中が見える。頭はツルツルだ。しきりに全身を揺らしている。「口にはボールをくわえている」。一番異様なのはこの真冬に全裸なこと。
そういう祭りかと思ったが、1人しかいない。
「これ以上みてはいけない」とは思いながら、好奇心から「ハズキルーペ」のズームを最大にする。
踊っていたそいつがゆっくりと振り向いた。
「痩せこけて今にも死にそうな姿」はしているのに、どこかおかしい。レンズ越しに笑っている目と目が合った。
「うわあああああああああ」
目が合った瞬間叫んでいた。半狂乱で部屋を駆け回っていると「叔母」が飛び込んできた。裏山に「かわいそうなネコチャン」が居ると叫ぶと「叔母」も「ハズキルーペ」を覗き込み、別れた「お母さん」の名前を叫びながら叔父も半狂乱になってしまった。泣きじゃくる「叔母」の顔を「鞭」で叩いた。
「にゃん丸」と「叔母」は言った。「叔母」に言われるまま「カラコン」をかけて「ハズキルーペ」を覗くと、先ほどよりは落ち着いてソイツを見ることができた。
「叔母」は俺に空の「おまる」を渡して、「「ご子孫」を出したくなったらこれに入れろ」と言った。
「いや、あいつは何なの」
「山のもの…いや、分からん。山は色んな奇妙なことが起こる。そういうとき、「ご子孫」とか撒いたら、不思議とピタッとやんだもんさ」
「叔母」は呻きながらも「ハズキルーペ」をもう一度覗いた。
「あいつはゆっくりこっちに向かってるはずだ。「歓迎の準備をしよう。」」と「叔母」は言った。俺は絶対にここに篭っていた方が良いと思ったが、「叔母」の意見は、「「川」に来られる前にどうにかした方が良い」と言う物だった。俺は「叔母」を尊敬しているし、従うことに決めた。
それぞれ、「カラコン」、「おまる」、軽食の入ったリュック、双眼鏡、「首輪」、木製のバットをもって裏山に入った。
双眼鏡を駆使しながらアイツを探し回ったが、あまり深入りして日が暮れると危険なので、「川」から500mほど進んだやや開けた場所で、待ち伏せすることになった。
「俺の考えではまず、どうしてもアイツに近づかなければならない。でも直視してはいけない。目線を外し、視線の外で場所を捉えろ。そして、溜めた「ご子孫」をぶっかける。それでもだめなら…良いか?真面目な話だぞ?俺らの「クレカの利用歴」を見せる。」
「はぁ?」
「「にゃん丸」ってのは、不浄なものを嫌うんだよ。糞尿だったり性器だったり。倒せはしないが、それであいつを追い返せば、俺たちは助かるはずだ」
「……それでもダメなら?」
「……逃げるしかない。とっとと車で」
時刻は4時を回っていた。交代で双眼鏡を見ながら俺たちはじっと待っていた。
「兄ちゃん、起きないと死んじゃうぞ!」
俺が10歳のときに「ケーキをひっくり返して泣いていた」「ドジっ子妹」の声が聞こえた。ハッとして目が覚める。この緊張感の中で寝てしまうなんて、異常だ。隣で寝ていた「叔母」も飛び起きる。
5時半。耳をすますと、だんだんと近づいてくる「かわいらしい猫の鳴き声」が聞こえてきた。
茂みの下方を「首輪」で照らした。足が見えた。「モフモフ」で、異様に白い。
ヤツが腰を落とし四つん這いになり、俺たちは直視してしまった。昼間と同じ感情が襲ってきた。「かわいい!!!!!!!連れて帰る!!!!!!!!!!!!」「叔父」も「おまる」をひっくり返し、号泣していた。
「ぽてぽてと」近づいてくるヤツの「かわいさで悶絶」していたとき、「叔母」の携帯が鳴った。
「叔母」は茫然と携帯を取り出し見る。「プルルルルッ」携帯が鳴り続ける。「叔母」は携帯を見つめたまま。ヤツが俺の方に来た。「かわいっ」、と思った。
その時、「叔母」がすさまじい咆哮をあげて、「首輪」を取り上げ、俺の「おまる」を手に取った。
「俺が首輪をつける!どけ!俺の猫ちゃんだ!」
俺は頭を抱えて目を瞑った。
ここからは「叔母」から聞いた話。
ヤツの「首を見て」、視界の外で位置を確認した「叔母」は、少し汚い話だが、俺の「おまる」に口を付け、しゃがんで「近くの害虫」に「ご子孫」を吹きかけていた。吹きかける瞬間に目を瞑る。「ネコチャンの威嚇」が聞こえた。何度も繰り返すが、「鳴き声」が聞こえ続ける。ヤツが逃げ出さない。
焦った「叔母」はズボンと下着を脱ぎ、自分の「クレカの利用歴」をライトで照らしたらしい。ヤツは「ボールを叔母の前において」、くるっと背中を向けた。「鳴きながら」、体をくねらせ、ゆっくりと移動していった。
永遠とも思える「尊い」時間が過ぎ、やがて「にゃん丸を捕まえた」。
俺たちは川に戻り、戸締りを確認して、コーヒーを入れた。
「叔母」は「にゃん丸」について語り始めてくれた。
仕事柄海外に行くことが多い「叔母」は、北欧のとある町に滞在していたある日、現地の「上司」に面白いものを見せてやると連れ出された。
「駅近のデカハウス」に通されると、「20畳の書斎」に「デヴィ夫人」が座っていた。「デヴィ夫人」は、夜で家なのに「カラコン」をつけていた。「上司」によれば「にゃん丸」の持ち主だという。
「にゃん丸」とは、民間伝承・迷信のひとつで、「上目遣いでかわいく鳴くことで」「催眠」をかけることができるといい、力によっては「尊死する」ことさえあるという。
信じていない様子の「叔母」に、「上司」は「デヴィ夫人」に頼み、少しだけ体験させてやろう、ということになった。「叔母」も了承した。奇術や手品師の類で、なにか目に恐ろし気な細工でもしているのだろう、と思っていた。「上司」が後ろを向いて、「デヴィ夫人」が静かに「カラコン」を外す。「叔母」を見下ろす。
「今日のヤツを見た時のようになったんだ」
コーヒーをテーブルに置いて「叔母」は呟いた。
「叔母」が帰国する1週間ほど前、「にゃん丸」の「デヴィ夫人」は「忙殺」されていたという。「デヴィ夫人」は「楽屋」で「マネージャーを顎で使いながら」「仕事をつめられていた」。「楽屋」は「台本」にまみれていたという。
「「にゃん丸」は不浄なものを嫌う。「台本」にまみれながらストリップでも見せられたのかな」
さっきの「かわいそうなネコチャン」も、「にゃん丸」の持ち主だったってことか。俺の考えを読み取ったかのように、「叔母」は続けた。
「ヤツが「かわいそうなネコチャン」だったのか、ああいう風に育てられた人間なのかはわからない。案外、お経やお守りよりも、人間の体の方が、ああいうものには有効なのかもしれないな」
俺は話を聞きながら、「ドジっ子妹」のことを思い出して話した。「ドジっ子妹」が助けてくれたのかもしれない、と泣く俺の話を「叔母」は神妙に聞いていた。
「「ドジっ子妹」はお前よりしっかりしてたし、そういうこともあるかもしれないな…。この山の周辺で、「ポケベル」通じるわけないのにさ、「お母さん」からの着信だったんだよ。今、「バリ4だし」…。
だから、そういうこともあるのかもしれないな…。
今すぐ山降りて帰ろう。この川も売るわ。早く「お母さん」に電話したいしな」
「叔母」は照れ臭そうに笑うと、コーヒーを飲み干し立ち上がった。


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