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紙の名前にある略語(OK/V/CoCなど)について

デザイナーの千星(ちぼし)です。
NECKTIE design officeという名前でGRAPHIC / WEB / PRODUCTと領域をはみだしてデザインをしています。

専門学校でもいくつか授業を担当させていただいているのですが、授業のひとつでデジタルフォントの名前についての講義をしています。イラストレーターの文字パネルを開けばフォント名に「Std / Pr5 / Pr6 / N / AP / MT / FF / Caption / B / R」などのアルファベットの略語がたくさんついています。ここには「どうして区別する必要があるか」「どうしてこんな複雑なことになっているのか」といったことや、タイプファウンドリーの変遷、タイプフェイスの模刻・改刻の歴史、JISのことなども入っているので、略語の意味がわかってくるとタイポグラフィの景色がずいぶん違って見えたりします。

デジタルフォントについてはたくさんの記事があるので、検索すれば体系的に学べるものがたくさんあると思うのですが、ふと「そういえば紙の名前にも似たようなアルファベットの略語がいっぱいついてるな」と思いました。僕自身知っているもあれば、調べてみたら「こんなことになっていたのか!」というものもたくさんあったので、授業の内容をベースにnoteにも記載させていただきました。

1. 会社(工場)の名前がついてる系

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社名の略語がついてる紙。おそらく一番有名なのが王子製紙さんの「OK」だと思います。ぱっと思いつくだけでもOKアドニスラフ、OKプリンセス、 OKミューズカイゼル、OKフロート、、、などもうホントたくさんあります。この系統のものを列挙すると

OK = 王子製紙 春日井工場(※1)
npi = 日本製紙(Nippon Paper Industries)
NT = N(日清紡)T(竹尾)
FK = 富士共和製紙
NB = 日清紡
NK = 日本加工製紙

などがあります。メーカー名がついているのは、上質紙やラシャ紙など紙の一般名称がついていて、いろんなメーカーから発売されている紙があるので「これはこのメーカーの上質紙ですよ」と区別するためにメーカー名をいれているケースが多いかと思います。

※1 
はっかりわからないことも多かったので、王子製紙さんに直接問い合わせをしたところ詳しく教えていただきました。
「現在では「OK=王子製紙のブランド」としての表記になっています。ですのでOKとついていても春日井ではない工場で抄紙している紙もあります。OKが王子製紙のブランド名として浸透していることもあり、苫小牧や米子で作っている紙でもOT(王子 苫小牧)やOY(王子 米子)といった表記にはせずOKの表記にしています(とはいえOKがついていない王子製紙さんの紙もたくさんあります)。
また「OK=王子製紙 春日井工場」も有力な説というだけで、本当のところははっきりとはわからないんです」ということです。
奥が深い。


2. シリーズの紙質の名前系

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これは比較的わかりやすいタイプの略語。だいたい見本帳にも同じシリーズで入っているので、見て(触って)紙の違いが確認できますし、なんとなく名前で想像もつくきやすい。

【ヴァンヌーボ シリーズ】
VG = ビジュアルグロス(Visual Gross)
V = ビジュアル(Visual)
VM = ビジュアル・マット(Visual Matt)
F = フィーリング(Feeling)
LT = リキッド・トナー(Liquid Toner)
【エスプリ シリーズ】
AP = アートポスト(Art Post)
C = コート(Coat)
GB = グレーバック(Gray Back)
FP = ファインペーパー(Fine Paper)=上質
K = カード
SS = スーパースノー(Super Snow)
V = アイボリー(iVory)
W = 両面
FM = ?(※2)
【インバーコート】
M = 両面マット
G = 片面マット

などなど。
エスプリのKは「カード=Card」だけどCoatのCとかぶるのでKがついていてなかなかトリッキー。
またメーカーによって名前の付け方もバラバラなので、同じVという名前がついてても、ヴァンヌーボのときはビジュアルでエスプリのときにはアイボリーというフェイント技を仕掛けてくる場合もあるので要注意。

※2
日本製紙さんに確認したのですがFMについては「FPの強度アップ品」ということしかわからず名前の由来は不明のようです。知っている方がいらっしゃったらぜひ教えてください!


3. 環境保護関連の名前系

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これは比較的メーカーを横断して同じ名称がついるものが多いです。

CoC = Chain of Custody(加工・流通過程の管理がされている規格)
GA = グリーンエイド(Green Aid)。竹尾の森林認証紙・非木材紙・再生紙・ECFパルプ紙、及びその他の方法で環境に配慮している紙の総称。
FS / FSC / F = FSC森林認証

とはいえFSC森林認証の紙はFS / FSC / Fとメーカーごとに微妙に表記が違ってる、、、統一してくれたらいいのにね。

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Mr. A - FとかミセスBスムース - FとかFの1字だけはわかりにくい。。。

4. Nは「New」のN

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さまざまな理由でリニューアルしたときにN = Newの意味で使われることが多い。グムンドナチュラルNやエコ間伐紙NやMag-Nなど。
多くの場合は原料や作り方は同じだけれど、工場や抄紙機が変更になることで「若干の差が生じる可能性がある」といったことからNをつけたりしています。
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若干変化球で「tカラペ」という紙は「ニューカラペ」リニューアル版だけど、既にニューを使ってしまっているからか、台湾(Taiwan)で抄紙するためその名前になったそうです。

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もっというと「ライトスタッフ」は、「ライトスタッフ」が「ライトスタッフ(N)」になりさらに「Aライトスタッフ」になるという進化の形もあります。ややこしや。

5. 単に紙のネーミングとしてついてる系

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単純に紙のネーミングとしてついてる略称。

OK AC カード = 王子製紙(OK)、安倍川(Abekawa)、カラー(Color)
MT A+ = 三菱製紙(M)、竹尾(T)、アート(A)、プラス・上級(+)  
LPマット = 活版印刷(LetterPress)

など結構いろいろあります。
他にもMr. B、Mrs. Bは

とかだったりするそうです。

そして大好きなb7(ビーセブン)シリーズ

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は調べても不明だったので日本製紙さんに確認したところ

「7色の虹を表現できる紙でありたい」という願いを込めて、b7と名付けられました。音楽のコードのb7(調和)より引用、また大竹工場7MC-1CRで製造開始だったこともネーミングの由来となっています。

となかなかに深いネーミングでした。おもしろい。

番外編 1 「金藤」

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ここからは少し番外編。略語ではないけれど、以前から少し疑問に思っていたものを調べたので追記しました。
まずは王子製紙さんの「金藤」シリーズ。OK金藤、SA金藤(スーパーアート)、サテン金藤などのラインナップがありますが、そもそも「金藤」ってなんか意味ありそうな名前だけど、検索しても人名くらいしかでてこない、、、王子製紙さんに直接うかがってみました。

「社内の年配の人などに何人か聞いてみたのですが、結局わかりませんでした。現在の王子製紙は新王子製紙、神崎製紙、本州製紙などが合併してできた会社ですが、金藤シリーズはもともと神崎製紙(現在の徳島・富岡工場)の紙なんです。確かな情報ではありませんが、阿波踊りのときに途中で金藤・銀藤に分かれて踊るというようなことは聞いたことがあります。神崎製紙も同じ徳島なので、関係があるかもしれません。」

ということでした。阿波踊りで検索してもそういった記載もなく、だれか詳しい人がいたら教えてほしいところです。

番外編 2 「b7 トラネクスト」

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番外編2。大好きでよく使う紙「b7 トラネクスト」。b7については前述しましたが、トラネクストってのもだいぶインパクトのある名前。個人的な予想では「Extra Next」のことなのかと思っていましたが、こちらも検索してもでてこなかったので直接日本製紙さんに問い合わせてみました。

「品質としましては、温かみのある風合い、高紙厚品を実現した紙です。
 トラ → 超越する(Transcend)
 ネクスト → 次の(Next)
がネーミングの由来です」

Extraじゃなかった、、、日本製紙さんは凝ったネーミングがおおいなぁ。

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といったところです。

ほかにも略語のついた紙はたくさんありますが、少しわかってくると紙の裏側にあるいろいろなことが見えてきてたのしい。やはり紙も奥深いなぁ。知らないことがたくさんありすぎます…。もっと勉強しなくては。

ではみなさん、良いデザインを!!

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