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実行は実験

いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきまして、ありがとうございます。今月は壽田が担当致します。
 熱中する組織は「実行は実験である」というコンセプトを提唱しています。構想、計画、実行、検証、そして協働、この5つはどれも非常に大切ですが、結果に直接作用するのは「実行」のみです。実行されなければたとえ他の4つの要素をうまく行ったとしても成果を上げることはできません。それだけ実行は重要なのです。
 クライアント企業様の多くがお盆休みになり、いつもよりも多く時間を確保することができましたので、熱中する組織のnoteを読み返してみましたが、実行のコンセプトについて、まだ書いておりませんでしたので、ここで改めて整理して、ご紹介したいと思います。

なぜ実行できないのか

 新しい行動が実行される確率はそれ程高くありません。それは、多くの組織では実行が担当者に任されているという背景があります。つまり、実行することは「個人の意志」に依存しており、上から降りてきた方針をいつどのように行うのかは個人次第だということです。「やる」と決まったことを実行するのに、もはや担当者の意志以外に何も必要がないようにも思えますが、特に「新しい行動」を対象とすると、完全に個人に任されていることが、実行されない原因を作り出していると言えるでしょう。その原因は主に2つあります。

実行されない原因①:現状維持バイアス
 「継続は力なり」と言いますが、この「継続の力」は良くない方向にも働きます。「これまでやってきた」という理由だけで、これからも盲目的にやり続けてしまうということが組織ではよく起こります。それは環境や前提が変わったことを正しく認識できないことが多く、これまでと同じことを続ける安心感に疑問を抱くことが難しいからです。新しい行動を実行できない原因のほとんどは、この変化を恐れる人間の本能(現状維持バイアス)にあると言えるでしょう。少し厳しい言い方ですが、組織を前提とした場合、「定期的に何かをし続ける」ということにあまり価値を置き過ぎないのが肝要です。目的や前提が変化しているにも関わらず、それらに合致しない行動を単に続けることは、百害あって一理なしと言えるでしょう。

実行されない原因②:実行すると決まっていない
 現状維持バイアスが働くため、新しい行動を実行するには「それなりの決意」が必要になります。つまり、これまでにやってきた行動に優先して「やろう!」と思えなければならない訳です。しかし、個人の意志に任せていたら、タイムリーに決意が固まるとは限りません。日頃の忙しさにかまけて、新しい行動が後回しになり、ついには実行することすら忘れてしまうことがあります。あなたも、上司から「○○はどうした?」と言われて、やらなければならなかったことを思い出した経験があるのではないでしょうか。これは、「実行することを決めていない」と言えるでしょう。決めていないのですから、実行されないのは当然かもしれません。

成功するまで実行する

  個人の意志に任せた結果、新しい行動が実行されないという問題を解決するのが、「実行は実験である」というコンセプトです。現状維持バイアスに打ち勝って、「やる」と決めたことを実行するには、組織的に実験を行うことが最適です。実験をするのは、「失敗をしてもいいから取り組む」という消極的なものではなく、「何度失敗しても成功させるまで挑戦する」という意欲を持って取り組むことを意味します。「物事には成功と失敗のどちらかがある」のではなく、「失敗の先に成功があり、失敗とは挑戦しているからこそ生じる学習機会で、成功の源である」という考え方がベースになっています。成功に早く辿り着くためには、明確な意図をもって取り組み続けることが大切だというわけです。ここでは、「実行は実験である」というコンセプトを支える3つの前提をご紹介します。

①やる前に意外と結果は予測できる
 「実行は実験である」と言うと、失敗を恐れる気持ちが収まり新しい行動を実行する障壁が下がる効果がありますが、だからと言って何も考えずに、場当たり的に行動することを奨励している訳ではありません。環境変化・状況変化を正しく認識し、合理的に考えることはここでも変わりません。ただし、あなたが実行しようとしている新しい行動の多くは、すでに他の人が実行していたり、冷静に考えたら、普通に想定できる結果しか起こらなかったりと、やる前に意外と結果は予測できるものです。十分にはない経営資源を無駄にしないためにも、「新しい行動」の目的や結果を明確にしましょう。

②望む結果と新しい行動の完了基準を決め記録する
 実験とは、仮説が正しいかどうか実地で確かめることを言います。実験をうまく行うためには、望む結果を明確にし、どのような行動をどこまで行うことで狙った結果を生み出すのか、行動の完了基準を予め定めておく必要があります。仮に、最初の行動で望む結果に到達できなかったとしても、次の行動でさらに結果に近づくためには、新しい行動を実行する前に、条件を具体的に設定しましょう。この設定は、マネジャーと担当者がじっくりと話し合いながら行い、疑問や懸念を解消して、実行することについて合意が取れるまで続けましょう。さらに実行を確実にするためには、この決定をマネジメント・ツールに記録しておくと良いでしょう。

③すぐに振り返る
 結果と行動の完了基準を決定し合意が取れたら、条件通りに実行しましょう。ここで大切なのは、新しい行動の完了基準にもとづいて振り返るタイミングを実行する前に担当者と約束しておくことです。例えば、8月20日に新しい行動が完了する場合には、当日や翌日など実行後すぐのタイミングで一緒に結果や行動を確認する機会を設定してしまうということです。
 そして、望む結果が出せたのか、もし出せなかった場合には、条件通りに行動したのかどうか、良くも悪くも想定した結果にならなかった行動は何かなどについて、事実に照らしながら振り返ります。この振り返りを行うことで、そもそも実行しなくてよい行動、量や頻度が足りない行動、対象を変える必要がある行動など、望む結果により近づくためのヒントが得られるはずです。このヒントは次の行動への強力なエンジンになります。ヒントを事前の条件に反映させて、あとは次の行動に移る、この繰り返しをやり続けることが大切です。

最後に

 いかがでしたでしょうか。今回は、実行について細部を語る前に、熱中する組織が大切にしている実行のコンセプトをご紹介しました。
 チャレンジングな目標に挑もうとする場合、あれこれと考えを巡らせて行動が遅れたり、いろいろと調べ上げた結果かえって情報過多となって何が正しいかわからなくなったり、結果に確信が持てず実行に踏み切れなかったりと、新しい行動には障壁がつきものですが、「実行は実験である」という発想のもとに、その障壁を乗り越えていただきたいと思います。
 今回も最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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