現場で社員を育成する力
いつも熱中する組織のnoteをお読みいただきありがとうございます。
今週は安澤が投稿致します。
これまでのnoteでアップデートという概念を何度か紹介をしてきました。「含んで超える」と表現をしたこともありましたが、過去の常識や過去の経験によって作り上げられた価値観を超えて、必要な行動を取れるように自らを進化させることをアップデートと言います。
(1)現場で社員を育成する力を取り戻せ
このアップデートのみならず、人は実務で成果を出したときに成長します。泳ぎ方の授業を受けても泳げるようにはならないように、研修で知識をインプットしてもそれだけでは成長とは言いません。実際の業務の中で活用し、効果を出せるようになって初めて成長です。
そういう意味で、OJTのノウハウがある組織は強いです。かつては、OJTとして現場で社員を鍛えることが日本企業の強みでしたが、忙しさにかまけ、即効性がないからと後回しにし、目先の業績向上に邁進する企業が増えたように思います。人材育成投資を増やしているものの、社員教育を研修会社に外注しているだけで、本丸の現場で社員を育成する力を養っていないという企業もあります。教育投資をしたからには業績が伸びないといけません。業績を伸ばした分社員が成長していると考えると良いでしょう。
「現場で社員を育成する力」に問題意識を持たれながらも、「研修以外の方法として何をすれば良いのか分からない」「時間やコストをかけないといけないことは分かっているが、企業規模から考えても大きな投資はできない」と考えられている経営者の方々にお薦めしている手法があります。それは、「実践学習により学び合う場づくり」です。この場は、組織の学習、そのなかでもマネジメントのような、知識を持っていたからといって結果が伴うとは限らない領域においては特に有効な手法です。
(2)実践学習により学び合う場
「実践学習により学び合う場」は、ビジネス上の成果を創出するための議論をする場とは別に設けます。扱う題材は、リアルなビジネスの実践内容になりますが、成長に主眼を置きます。成果創出のために実践している自分の姿を振返り、自分の見えていない点を他者の視点で補い、各人が行動変化を起こしていきます。少しゆったりとした時間を作り、自然体で鎧を脱いで話をしないと、素直な気づきを得られなかったりしますので、場を分けるのです。
この実践学習の場を運営するにもいくつかのポイントがあります。
基本的には以下の3ステップを繰り返し進めていきます。
① 共通で実践するテーマを決め、実践経験を持ち寄る。
② 経験した事例を共有し、自分であったらどうしたか、起きたことについてどう感じたか、多様な意見を出し合うことで、視野を広げ、気づきを得る。
③ 新たな理論や視点をインプットし、それについて自分はどうしているか、どう感じるかについて対話をし、次の実践テーマを決める。
例えば、マネジメントの知見が体系的に掲載されている本を使って、順番に実践を進めていくのも一つの方法です。数人から十数人でチームを作り、毎週60分とか、隔週90分などと時間を決め、互いの経験の棚卸しをします。場をコーディネートするファシリテーターは必須になりますが、ファシリテーターを担わせることでマネジャーを育成するということもできます。半年〜1年続けると、参加者の視野は開け、結果を出す力が養われていきます。
(3)4つのポイント
この場をうまく機能させるには、以下のようなポイントがあります。
企業秘密ですが、公開しちゃいましょう。
(A)主体的に新たな行動に挑戦するメンバーが混じっている
学習とはどこまでいっても自分がするものであり、興味・関心が湧かなければ、頭の中に入ってきません。一方で、同じ興味・関心を持っているメンバーばかりではありませんので、テーマによっては興味・関心が湧かないけど参加をしている。という人も出てきます。そういう人が混じっていても良いのですが、中に、「そのテーマに関心がある」という人がゼロだと進みません。自分の興味関心で取り組むメンバーが積極的に取り組んでいくことで、場は立ち上がっていきます。
(B)設定されるテーマが現場の課題認識や力量にマッチしている
そのように内発的動機で取り組むメンバーを増やすには、現場の課題感にマッチしたテーマ設定をすることが重要になります。ここはファシリテーターの腕の見せ所でしょう。現場の実態を捉える、参加メンバーの考えを捉える、参加メンバーにとって今必要なテーマを想定する。そのようにして、2歩先、3歩先を想定しながら、「次の一歩はこのテーマだよ」というテーマ設定を出せると、エネルギーの流れは非常に良くなります。
(C)全員が対等であること
場の中に「先生」を作ってしまうと、学びが停滞します。先生は正解を教えます。正解ができてしまうと、思考が停止するから学びは停止するのです。ベテランも若手も同じ立ち位置で学び合うということが大切です。上司と部下で対等になることは難しい場合もありますので、そのような時は上司が「学ぶ姿勢」を見せること。「対等でありたい」ということを伝えることは最低限必要です。マネジャーであっても、「今のメンバーはどう感じているのか」「今のメンバーにとっての最善手は何か」など、一般解ではなく個別解を探すようにすれば、必ず学ぶことはできます。
(D)良い実践経験が生まれるよう、個別フォローを加える
基本的には、各自思い思いの実践で良いのですが、個別フォローをして高いレベルの実践結果を生み出すと、経験を持ち寄った際に、チーム全体の成長が早まります。また、遅れが出てきたメンバーの行き詰まりを個別に取り除くことで諦めさせないことも肝要です。諦めずに実践をできていれば日替わりヒーローも生まれやすく、多くの好事例をチームで学ぶことができるので、成長スピードが上がります。チーム全体を見ながら、手をかけすぎないようにしながらも、急所を支援していくのです。
「実践学習により学び合う場」は、組織行動学者のデイヴィッド・コルブが提唱した経験学習モデルをベースにしています。このモデルが良いところは「常に学習の途上にある」という前提があることです。環境の変化に対してなすべきことを構想し、ストレッチした目標を掲げ、その状況に合わせた組織運営をしていくことは、永遠に探求する「終わりなき旅」だと言えるでしょう。一緒に旅をしてくれる仲間がいて、自分をアップデートし続けることができれば、その旅は間違いなく充実していきます。これからも「実践学習により学び合う場」を経営の武器にする企業を増やしていきたいと思います。
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