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#宇宙開発

人工衛星の「光害」は、社会に何をもたらすか 国立天文台・平松正顕さんインタビュー

米スペースXの衛星通信サービス「スターリンク」を筆頭に、民間企業による人工衛星の打ち上げが加速度的に増している今、天文学者の間で「光害(ひかりがい)」に懸念の声が高まっている。人工衛星に太陽光が反射して天体望遠鏡に写り込むなどして、天文観測に大きな支障をもたらしかねないとするものだ。 「影響は天文学だけではありません。2030年頃には10万機ぐらいの人工衛星が飛ぶ世界になるでしょう。そうなると私たちが見ている星空が、これまでとは質が違うものになってしまう可能性がある」

【堀江貴文×野口聡一】日本版スターリンクで時価総額1000兆円超も。衛星ビジネスの無限の可能性

「宇宙というと『夢や希望がありますよね』だとか、そんな話を期待されますが、僕のなかでは宇宙はもう完全に事業になっています」 こう断言するのは、実業家で、ロケット開発に取り組むベンチャー、インターステラテクノロジズ株式会社 取締役・ファウンダーを務める堀江貴文さんです。 国際社会経済研究所(IISE)が2月9日に開催した「IISEフォーラム2024 ~知の共創で拓く、サステナブルな未来へ~」では、堀江さんをゲストとしてお迎えし、基調講演とパネルディスカッションで宇宙産業を注

自然災害と人工衛星 防災と減災に向けた、観測・測位・通信衛星の活用事例

日本は、地震や大型台風、集中豪雨や洪水などの被害に見舞われる事が多い、自然災害多発国です。避けることが難しい自然災害ですが、被害の甚大化を防ぎ、最小限に抑えるための予測・予防に、人工衛星および人工衛星によって取得した「衛星データ」の活用が進んでいます。 観測衛星を用いた、災害予測と減災の取り組み 災害に関連した観測衛星の用途は、大きく「災害予測」と「被害拡大の抑制」の2つに分けられます。 衛星データを用いた、災害の予測 衛星データを分析することで、災害リスクの高い箇所を

「インターネットの黎明期」から考える、宇宙開発のいま

もともと国や政府が主導していた宇宙産業。近年はロケットや人工衛星の開発・打ち上げコストが下がったことで民間企業のビジネス参入が相次いでおり、宇宙が特別なものではなくなりつつあるとともに、新たな一大産業へと育とうとしています。 こうした現在の宇宙産業は「インターネットの黎明期と似ている」という話もよく目にします。特に、ロケット開発企業・インターステラテクノロジズの創業者である堀江貴文さんが2021年のインタビュー記事で答えた、「いまの宇宙産業はちょうど、インターネットを民主化

米国NASAで導入が進む政府からのアプローチ アンカーテナンシーとは?

宇宙開発技術を発展させる手段として、アメリカ航空宇宙局(NASA)が導入した「アンカーテナンシー」。アンカーテナンシーとは、「政府が民間企業の開発した製品およびサービスを継続発注および調達という形で購入する契約」のことを指します。 主に宇宙ビジネスで使用され、日本ではあまり浸透していない概念です。本記事では、アンカーテナンシーの特徴とその効用、実例について解説します。 アンカーテナンシーとは? アンカーテナンシーとは、政府と民間企業との間で交わされる「企業が開発した製品・

【図解コラム】通信における「電波」と「光」の違いは? それぞれの長所と短所

民間企業による人工衛星の打ち上げが急増し、これから10、20年で市場が爆発的に広がると期待されている宇宙産業。現在、人工衛星の通信には主に「電波」が使われていますが、近い将来「光」も多くの通信で用いられるようになると、さらなる高速・大容量・低遅延の通信が実現すると言われています。 私たちは普段、音声や画像、映像などさまざまなデータをスマホやPCで送り合っていますが、この通信にも電波や光が使われています。光回線、光ファイバーといった単語には聞き馴染みがあっても、なぜ光のほうが

「宇宙開発に対して、市民が意見を持たなければいけない」意見の持ち方と、その議論のプロセスとは

各国政府や民間企業が強く推進した結果、宇宙開発事業——いわゆる「宇宙ビジネス」が盛り上がりを見せています。 斬新なビジネスを展開するベンチャー企業の登場や世界のビリオネアがプレイヤーとして参入、大きなムーブメントが生まれつつある……ものの、その「新たな動き」を感じている人はごく一部。「いち市民」の目線に立つと、宇宙開発の話題やそれによってもたらされる変化を身近なものとして感じられないケースがほとんどでは無いでしょうか。 そんな、宇宙開発とは縁遠い人々と専門家との間にあるギ

注目の「衛星コンステレーション」とは? 背景や仕組み、代表的な企業、メリットやビジネス分野を紹介

はじめに 従来、宇宙に関する産業は、日本のJAXAやアメリカのNASAが代表されるように、国が主導する事業がほとんどでした。しかし最近では、民間企業が人工衛星やロケットを打ち上げ、それをもとに新たなサービスが提供されるようになってきました。 中でも注目されているのが「衛星コンステレーション」。多数の人工衛星をある軌道に打ち上げ、一体的に機能させる技術構想を指します。 近年は、低軌道に何百機、何千機もの大規模な衛星コンステ―レションを築くことで、いままでにない新しい価値や

軌道上に増え続けるスペースデブリ 「ケスラーシンドローム」を避けるための対策とは

政府や民間企業による宇宙開発ビジネスが加速し、地上から宇宙へ向けて送り込まれる宇宙機は年々数を増やし続けています。JAXAの調査によると、2019年時点では年間490基だった人工衛星をはじめとした宇宙機の打ち上げ数は、2022年には2368基に。今後も、軌道上に投入される人工衛星はより増えていくことでしょう。 そんな中で、今後も宇宙開発を続ける上で大きな課題になっているのが、地球の軌道上を漂う宇宙ゴミ、つまり「スペースデブリ」対策です。 宇宙に漂うミッション終了後の人工衛

人工衛星による「光害(ひかりがい)」、天文観測へ深刻な影響 夜空の文化遺産を守るためには

地球から高度200km~1000kmほどの低軌道上に、何百機、何千機もの人工衛星を打ち上げて一体的なサービスを展開する「衛星コンステレーション」ビジネスが、近年盛り上がっています(※参考記事)。世界に大きな市場をもたらすと期待が寄せられる一方で、衛星による「光害(ひかりがい)」を懸念する声も天文学者の間で年々高まっています。 天体観測が阻害されるだけでなく、人類が築いてきた“夜空における文化遺産”が失われるとも指摘される、衛星コンステレーションの「光害」。世界で交わされてい

「光通信は、実装のフェーズに入ってきた」ワープスペースが構想する、通信衛星とそのマーケット

「宇宙の通信をよりシームレスに」という目標を掲げ、地球と宇宙を結ぶ光通信ネットワークの実現を目指す宇宙スタートアップ企業、株式会社ワープスペース。 同社が構想する「WarpHub InterSat(ワープハブ・インターサット)」は、中軌道上の人工衛星3基による衛星コンステレーションです。3基の衛星の役割は、地上局と人工衛星との間で行われる通信を中継すること。光通信を利用して、従来よりも大容量かつ高速に、人工衛星が取得したデータを地上へと伝送するのがサービスの目的です。 ワ

【2023年版】宇宙ビジネスを知る おすすめの本5選

2040年までに1兆ドル(約140兆円)規模と、市場がいまの3倍にまで拡大すると予測されている宇宙ビジネス。2000年代以降多くの民間企業が宇宙開発に参画するようになったのはなぜなのか、成長が期待されている分野や事業は何なのかーー一般のビジネスパーソン向けに背景や注目すべきトピックを解説する書籍も毎年刊行されるようになりました。 本記事では2023年までに刊行された書籍の中から、宇宙ビジネスを学ぶのにおすすめの本を5冊紹介します。宇宙開発の現在地点を網羅できるだけでなく、他

【図解コラム】スターリンクで注目の「衛星コンステレーション」 メカニズムを解説

スペースXの「スターリンク(Starlink)」を筆頭に、今後10年から20年で世界に大きな市場をもたらすとして注目を集めている「衛星コンステレーション」。 一体どんなシステムなのか。これまでの人工衛星とどう違うのか。そして地球上の私たちの暮らしにどのような影響を及ぼすのか……まだまだ聞き馴染みの薄いこのキーワードについて、図や表をつかってわかりやすく解説します。 多数の人工衛星が一体的に働く 衛星コンステレーションコンステレーション(英: constellation)とは

国内の衛星コンステレーション構築に取り組む企業、それぞれが提供しているソリューションは?

宇宙空間を舞台にした経済活動に取り組む企業が増える中で、地球の軌道上で、独自の「衛星コンステレーション」を構築する企業が増えてきています。 衛星コンステレーションとは、軌道上に多数の人工衛星を打ち上げて、一体的に機能させるシステムのこと。現在は、人工衛星1機あたりの打ち上げコストが抑えられるようになったことから、地球上の低軌道(地上200km〜2,000km)に打ち上げた複数の人工衛星による「低軌道かつ大規模」な衛星コンステレーションが注目を集めるようになっています。 海