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心因性の発作(PNES):診断と考え方


心因性非てんかん発作(PNES)とは

**心因性非てんかん発作(Psychogenic Nonepileptic Seizure:PNES)**は、「突然発生し、てんかん発作に似た精神的・身体的な症状で、身体的または生理学的な原因が認められないもの」を指します。かつては「偽発作(Pseudoseizure)」と呼ばれることもありましたが、これは「偽物」「本当の病気ではない」といった誤解を招く表現であり、適切ではありません。PNESは、例えば患者が自分をコントロールできなくなった結果として生じる症状であり、基本的には意図的に発作を起こしているわけではありません。よって、患者に責任を問うべきものではありませんし、その発作そのものを否定してはなりません。

PNESの特徴

PNESの発生率と診療現場での割合

  • 発生率:ある調査によると、PNESの有病率は10万人あたり約24人と報告されています。

  • 診療現場でのPNES患者の割合

    • てんかん専門外来の初診患者の約5~10%がPNES。

    • 長時間のビデオ脳波検査を受けるために入院する患者の20~40%。

    • 救急受診で発作症状が見られる患者の10~30%。


PNESが起こりやすい年齢と性別

PNESは思春期から若い成人期に最も多く見られますが、子供からお年寄りまで、幅広い年齢層で発生することがあります。性別については、知的障害やてんかんがない場合には女性に多く見られますが、これらの障害がある場合には男女差ははっきりしないとされています。


PNESの臨床的特徴:発作・病歴


以下に. PNESを示唆する症候や病歴を示しています。特異度と感度を意識しなければなりませんが。いずれにしても単一でPNESと判定することができるような所見はありません。総合的な判断が必要ですし、最終的にはビデオ脳波での確認が理想的です。


PNESを示唆する発作時の症候

l  発作中の閉眼
l  発作中の首振りや、非同期性の動き、非対称性の動き
l  発作中の泣き出し
l  閉眼したまま反応しない
l  腰を突き出す運動
l  外傷が少ない


PNESを示唆する病歴
l  発作の持続時間が長く、動揺性
l  抗てんかん発作薬を追加すると悪化する
l  医療従事者が発作に遭遇しやすい


PNESの特異性と診断の難しさ

PNESという用語は、てんかん発作の評価・鑑別の視点から成り立つものです。つまりてんかん発作かどうかを判定するプロセスにおいて、「真のてんかん発作に似ており、誤認されやすい発作」としてPNESがポジショニングしています。よって、てんかん発作としての対立候補としてPNESという鑑別が存在することになり、PNESはてんかんミミック(てんかんと間違われやすい発作)と言えるでしょう。

一方で、脳神経内科医にとっては、発作がてんかんではなくPNESと判断された場合、精神科で治療すべき「心因性の病態」として扱われがちですが、果たしてそれは適切でしょうか?



知的障害やてんかんとの関係

  • 知的障害がある方の中では、PNESが起こる割合が異なる報告があり、平均して約9.4%とされています。

  • てんかんが併存する割合は、全体の約22%

  • 生活状況や家族環境などもPNESの発症に関わるとされ、特に知的障害やてんかんがない場合には、家族関係などの成育環境が重要な要素とされています。


精神科におけるPNESの位置づけ

精神科の観点から見ると、PNESはやや曖昧な位置づけにあります。そもそも、PNESはDSMなどの精神科の診断基準で公式に定義されていません。また、PNESの症状は非常に多様であり、一言で説明することが難しいですが、一般的には転換症状解離症状が近い状況と捉えられています。

多診療科での連携の重要性

一方で実臨床においては、PNESは精神科医のみが対応すべき症状ではありません。というのもPNESはER対応することが多いので、実際には救急医や小児科医、脳神経内科医、脳神経外科医などが初期対応を行うことが多く、各診療科の連携が重要です。PNESに対する理解を深め、多職種での協力が求められています。PNESは多くの医療従事者が関わるため、てんかんとの鑑別や診療科間の連携が不可欠なのです。



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