根羽村福祉と健康の集い

 4年ぶりに福祉と健康の集いが開催されました。今回で25回を数えます。教育委員会と、根羽村社会福祉協議会の共催で、健康講座、体操など色んな催しをほんわかと開催します。毎年目玉企画で芸能人の方を招待して、公演を行なって頂きます。今年はなんと言っても3年ぶりです。みんなの期待が膨らんでいました。そこでドウルるるるるるるるるるるるるるるーダム!(ドラムロール)発表!今年のゲストは、林家正蔵師匠!おおー、村がざわつきました。「落語協会副会長の大物だよ、おい。」
 「あ、教育長、新幹線ホームまでお迎えと、済んだ後のお見送り名古屋までお願いします。」「ええ〜?俺?ほんとに?責任重大じゃん。なんか粗相あったらどうすんの?俺だよ?」「代々、教育長に行ってもらってるのでよろしくお願いします。粗相の無いように!」「ぐ。」プレッシャー。「気難しい人だったらどうしよう。」昔、こぶ平さんだった頃はテレビでよく見たけど最近はあんまりテレビに出ずに落語と後進の指導に専念してるって何かで聞いた。息子さんがユーチューブで話してるのを見たら、「俺の弟子になるなら、親子の縁を切る!」って言い切ったって。やっぱ厳しい芸の世界でやってきた人だからおっかない人かも。「どーしよー!」とひと月前から「どないしたらええかしらん。」とジリジリしていました。
 当日!運転してくれる職員の彼が、几帳面に事前リサーチをしてくれて、「時間になったらピックアプここでします。合流できたら電話下さい。」「こっちの方が近いです。」逐一場所を教えてくれました。なんて、頼もしい。デスクではそんなこと思ったこともなかったのに。新幹線ホームで「根羽村」のカードを持って待っていると、小柄で、華奢でお洒落なロマンスグレーの方が近づいてきて私に頷きかけます。「え?正蔵師匠?全然分かんない。人違い?」オロオロ。お弟子さんのまめ平さんが「お世話になります。」えー!全然イメージ違うよー。しまったよ、やっちまった。きっと気分を害されたに違いない。やべい。困った。と思いながら公用車までご案内。「遠路はるばるありがとうございます。ここからまだ2時間ほどかかりますのでもうしばらくご辛抱願います。」と言ったと思います。あんまり覚えてません。車内は、、。すごい静かです。話しかけてもあまりお返事が返ってこないのでこれは「きっとお疲れなのだ、ペラペラ話しかけるときっと事態が悪化する。黙っていよう。」決めました。そのまま2時間。まる2日ぐらいに感じました。根羽に到着!根羽のおばちゃんたちが手をブンブン振ってお出迎えです。わーとか、きゃーとか言ってたような気がします。すると師匠、とっとっとっと、降りて行かれて「ありがとうございますー。」あっという間に打ち解けられました。あれ?怒ってないかな?「写真撮っていいですか〜?」いや、ダメでしょ!「撮りましょう撮りましょう。」えー?ほんとに?それとは別に村長や村の歴々との記念撮影を到着後すぐ撮る予定です。忙しい師匠は分刻みらしいと聞いている。写真に収まるはずの村の人がいません。「どこ行っちゃったの?」「帰ったらしい。」「おいー!勘弁してよ!」「師匠すみません、そんなわけで、落語の後に記念撮影でいいですか?高座は観にくると思うので。」「うん。全然問題ない。」あー、よかった。怒ってない。その後出番まで、イベントを見てまわられています。一体何人の村民が師匠だと気づいたでしょうか、すっかり溶け込んでいました。
 「会場が見たいんです。」おっしゃってスーと普通の村民のように会場入り、「客席が遠いのは良くないから近づけましょう。」「はい!やりやす!」「あ!師匠、師匠はやらなくていいです。椅子はわれわれが動かしますんで。え!ほんとにやらなくていいですっていうか私たちにやらせてくださいほんとに。」師匠と一緒に会場をセット。師匠自ら照明、音響チェック。何?9代目林家正蔵師匠ですよね?ぜひ、座ってドンとしていて欲しいんですが。
 さ、会場はできました。まだ時間があるので師匠も控え室に戻られます。
 お、そろそろ開演の時間だ呼びにいかなくちゃ。って!もうステージにいるんですけど!えー!開会式とかどうしよー!「みんな前にいらっしゃい、近い方がいいから。そんな後ろにいちゃダメ。いらっしゃい、いらっしゃい。そうそう。じゃあ、始めましょうか。」ガー、師匠自ら始めちゃったよ!もー完全にわしの失態じゃん。腹を括りました。
 まずは講演会です。笑い9割涙1割で師匠の半生を熱く語っていただきました。純粋に楽しかったですね。村のおじいちゃん、おばあちゃんもとても楽しそうで、大盛り上がりです。さすが、噺家、達人の話芸です。
 講演の後はお待ちかねの落語です。まずは、前座のお弟子さん、まめ平さんです。まだお若いので期待していなかったのですが、面白かった。会場も盛り上がりました。みんな笑っていました。名古屋出身の方です。
 さあ、いよいよ師匠の出番はやっぱり流石ですね。色々書くとかえって伝わらないので書きません。私がかつてテレビで見知っていたこぶ平さんは居ませんでした。
 そして分刻み。私も年甲斐もなく走り回って速攻出発できるように準備しました。お二人も車に乗り込みいざ名古屋へ、見送りのおばちゃんたちに窓を開けて手を振っていただきました。雨降ってるのに。
 よーし、なんとか間に合いそうだ。安全かつ迅速に名古屋へ向かわねば。車内はまたもや静かでしたが、しばらくすると後部座席から師匠の柔らかい声が朗々と聞こえます。時折、まめ平さんの、「はい、わかりました。」「こういうことですか?」など聞こえてきます。うっわ!稽古してる。やべい。プロの稽古の様子体験してるよおい!運転手をしてくれている職員の彼ものちに、「めちゃくちゃ貴重な体験させてもらいました。」と言って感動していました。
 名古屋駅に近づくと、職員の彼に「重労働でしたね。ほんとにありがとうございました。」ねぎらいの言葉を。ワシなんか何もしてないのに何度も「ありがとうございました。」と言っていただきました。恐縮至極。無事送り届けて大役終了。あー良かった。いいひとで。
 まとめ
正蔵師匠は物静かで穏やかな紳士でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?