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深沢七郎

私にはいつも心に残って疼く言葉がある。
「生きてても意味なんかねぇんだ。虫みたいに這いずりまわって生きるだけだ。」
何だか虚無的な事を母がよく言った。
すると、私がこうして、あらゆる事に不安を感じ、怯え、苦しんでいるのも意味などないのだろうか。
母は深沢七郎を例に出し、そういう事を深沢七郎は書いていて、まったくその通りだと思うから悩むなんてバカだ。と私によく言った。
それで私は深沢七郎のエッセイ集を図書館から借りてきて読んだ。
だいたい母が言っていたような事は「非行も行いのひとつだと思う」に書かれてあった。
(ああ、母が言っていたのはコレだな。)

人間なんて、どうせ、虫みたいなものだもの。
いま、生きていくことが大変だから可哀そうだと思うもの。
だいたい自分だけでも、生まれてきて馬鹿みたいだもの。生きていて、ちっともいいとは思わないもの。
俺はいつでも、善悪ってことは考えない。
昔から自分の好きなことは善だし、厭なことは悪だな。
女といても、厭なことがあると、もう、ゼッタイに厭だね。女が肺病になって血を吐いたのを見て、寄りつかなくなっちゃたもの、薄情だとか、ひとでなしとか言われたけど後悔しないね。              (非行も行いの一つだと思うの中から抜粋)

      

深沢七郎集 第七巻 筑摩書房

確かに母はこの話をよく言ってた。
女が肺病になって寄りつかなくなっちゃた話をよく言ってたな…。
しかし、そんなんで生きていて、虚しくて苦しくならないのだろうか…。
私は毎日、虚しくて苦しくてたまらない。

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