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猫おやじ🐾のオムレツとオムライス12

親父さんが厨房で料理をしているのを楽しみに待つミケちゃんとこねこ。
ひとり若くんは心配をしています。
「他のお客さんが入って来たら親父さんラーメン作らなきゃいけないだろ。大丈夫かなぁ。」ラーメン類はカウンター前のキッチンで調理できるのですが洋食を作りに親父さんは奥の厨房へ行っているのです。
「若くん色々心配し過ぎよ!客が来たら来たで親父さんが何とかするわよ!プロの料理人で何十年も接客をしてるのよ?私達より接客の修羅場を切り抜けてるのよ!臨機応変のプロフェッショナルなんだから!結局若くんだってオムライス食べたいんでしょ!」
「うん。だからそれが親父さんに余計な手間をかけさせたんじゃないかと僕は思うんだよね。」
「じゃお客が来たら若くんがカウンターに入ってラーメン作ってやればいいじゃない。」
「そんな無茶苦茶な。」
そうこうする内に厨房からいい匂いが漂ってきました。こねこは鼻をひくひくさせました。「いい匂い!」ミケちゃんと若くんも鼻をひくひくさせます。「うーん!」
親父さんが両手にお皿を持ってきました。「はい。オムライスとオムレツだよ。ドリアは今オーブンで焼いてるからちょっと待ってて。」
みんなはそれを見て歓声をあげました。
「おいしそーっ!」
「ひさしぶりに作ったからうまいかわからんが食べてみて下さい。」
親父さんはどこか晴れやかな表情で言いました。黄色いオムレツには好みでウスターソースをかけるといいそうです。
どちらにも横にパセリとマカロニサラダも添えてあります。若くんのオムライスは薄焼き卵できれいに包まれてケチャップがかかっています。
チキンライスの少し焦げたようなケチャップの芳ばしい匂いにみんなが夢中になりました。
「こねこちゃん食べよっか!」
ミケちゃんとこねこはオムレツを分け合います。
「いただきます。」
若くんはオムライスを頬張りました。
「何だか子供の頃を思い出すなぁ。」
「あっオムレツの中に刻んだ焼豚とネギが入ってる!醤油の甘辛い味が卵と相まっておいしい!」ミケちゃんが言いました。
「オムライスもおいしい。懐かしい味がするよ。」若くんも口のまわりにケチャップをつけて夢中で食べています。
親父さんはにこにこ皆を見ています。
「オムレツすっごい美味しい!親父さんは何でラーメン屋になったの?」
ミケちゃんがオムレツを食べながら訊きました。
「いろいろ事情があったってさっき親父さん言ってたじゃないか。」
若くんが口を出しました。
「だから事情ってどんな事情?洋食屋でもよかったじゃない。こんなに美味しいんだから。」
ミケちゃんが言うと親父さんはまた遠い目をして「本当にいろいろあったなぁ…。」とつぶやきます。
「言いたくないならいいんですよ。親父さん。」若くんが言いました。
「あっそうか。アタシまた無神経な質問しちゃったのね。ごめんね。親父さん。」
ミケちゃんはハッと口に手をあてました。
「いやいや、あんまり昔の事だから思い出すと気が遠くなるんだ。わしが田舎から出てきて…28年…くらい経つかな。」
「よかったら聴きたいわ。親父さんがラーメン屋になったきっかけ。」
ミケちゃんはこねこの汚れた口のまわりをハンカチで拭いてやりながら言いました。
「聴いてくれるかい。」
親父さんは話し出しました。

オムライスとオムレツ。


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