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読書記録。好きな作家は瀬尾まいこ

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読書記録。好きな作家は瀬尾まいこ

最近の記事

君が夏を走らせる/瀬尾まいこ

「続・あと少し、もう少し」 タイトルの通り、著者の過去作「あと少し、もう少し」に登場する大田が主人公の物語である。 本作だけ読んでも充分面白いのでおすすめ。 これは高校生になった大田が先輩からベビーシッターを頼まれ奮闘した一夏のお話。 駅伝のために皆と走った中学時代の夏が忘れられない大田。もう不真面目で不良の自分には戻れないのに、真面目にもなりきれない日々をモヤモヤした気持ちでやり過ごしている。 走っているときの自分が好きな大田はきっと不良だったころ、自分のことが嫌いだっ

    • むらさきのスカートの女/今村夏子

      「認められたい」 サクッと読み終えてしまい、あまりに内容が強烈で惚けてしまったのでもう一度読んだ。 全体的に見ると「狂気」な小説。 でも大多数の人間が、多少なりとも抱えている感情を主軸にしていると思った。 これはストーカー紛いのイカれた女の話ではなくて、透明人間から脱したい女の話。 格下と思っている「むらさきのスカートの女」が自分よりも格段に周囲に認識されていることが羨ましい。 友だちになりたいと語っているが、実際は自分が周囲に認識される存在になりたいのだ。 他人を見

      • あと少し、もう少し/瀬尾まいこ

        「金継ぎ」 瀬尾さんの著書「夏が君を走らせる」を読みはじめて、おや?と思った。「あと少し、もう少し」に登場する大田が主人公らしいのだ。 随分前に読んだ作品だったので復習が必要だなと思い本棚に向かう。当時はただただ面白い!という気持ちで読んでいたが、数年経った今読むと感慨深い気持ちでいっぱいになった。 私の中学時代の部活動そのものだから。 駅伝練習に打ち込んだあのときの気持ちも沢山散らばっている。 この作品はもう、私のタイムカプセルなのだ。 練習量や学校の状況などそれぞれ異

        • 小公女/フランシス・H・バーネット

          「My favorite princess story」 私が「小公女」を初めて読んだのは小学生の頃で、それは図書館で何度も借りては読み返すほどに好きな物語だった。 実は成人してから読むのは初めてである。 ふと、大人になった今はどう感じるのかと思い本屋で手に取ったのだ。もしかしたらもう面白いと思うことができないかもしれないなと考えながら、恐る恐る本を開いた。 その考えは一瞬で打ち消された。そこにはページをめくる度に夢中になった、あの頃と全く変わらぬドキドキとわくわくが詰まっ

        君が夏を走らせる/瀬尾まいこ

          美の法則/冨永愛

          「遥か彼方ではない」 ランウェイモデルという、一般人には到底足を踏み入れることのできない世界。 そこで闘い抜いてきた“冨永愛”という女性を少し身近に感じることのできる一冊だった。 美容法からトレーニングメニューをはじめ、恐らく彼女にとっての日常の抜粋なのだけれど、ストイックさとプロ魂をとてつもなく感じられる内容である。勿論自分の日常に取り入れられそうなメソッドも沢山ある。それを続けてみて、というのが著者の勧め。 私が面白いと感じた項はLesson6と7。 今までどう生きて

          美の法則/冨永愛

          トロッコ/芥川龍之介

          「思い出」 短編ってこんなに短いの?!!というくらい驚きの短さ。「トロッコ」は教科書にも載っていなかったので初読み。 芥川といったら「蜘蛛の糸」「羅生門」くらいしか思いつかない。しかし調べてみると「かちかち山」「猿蟹合戦」といった幼い頃に読んだような話もあってこれまたびっくり。今まで私は文豪の作品を学生時代の勉強以外で読んだことが殆どないので知らないことがあまりにも多い。常識かもしれないことすら知らないのだと実感した…。無知って辛いな。 この作品、短すぎて考える暇もなく読

          トロッコ/芥川龍之介

          対岸の彼女/角田光代

          「無意識のうちに変わった色々」 私が今まで読んだ小説の中で1番現実的な内容だったように思う。 同類で群れを成し、枠から外れた人はおかしいと言われる。子供も大人もあまり変わらないこの世界でいったい「私たちは何のために年齢を重ねるのか」 この著書の答えはとても前向きだった。 生活に逃げ込んでドアを閉めるためではなく、また出会うためである。選んだ場所に自分自身で歩いて行くためだと。 "結婚"に対する答えも同じようなものかなと感じた。私は結婚に前向きな気持ちを抱いたことがないの

          対岸の彼女/角田光代

          駈込み訴え/太宰治

          「鏡」 文豪の本を読むのはとても久々で少し気負いしていた。が、すぐ読めるよ!と勧められたこの話は本当に一瞬で読むことができたので、私のように「時代が違うし…文章も難しそうだし…」と思っている人は是非読んでみてほしい。騙されたと思って。(※自己責任でよろしくね!)  話は主人公の語りで進む。 途中まで主人公と「あの人」が男なのか女なのかわからない。読み進めていくうちに状況が色々と視えてくる。 加えて、私は読了してから主人公の名前をググって物語の舞台を理解した。話の内容的に舞台

          駈込み訴え/太宰治

          やさしい訴え/小川洋子

          「新田をめぐるマウンティング」  主人公・瑠璃子については最後まで好きになれなかった。あまり共感できなかったということである。 薫に対しての想い等、序盤から「卑しい女」という印象を抱いていた。そのため薫を贔屓にして読んでいたのだが、途中でふと気がつくのである。これは新田をめぐる女2人のマウント合戦なのだと。 マウンティングとは動物社会における順序確認の行為のこと。改めて読んでみると、瑠璃子はわかりやすく嫌がらせをしており、薫は静かに対抗している様子が窺える。だから前者を悪

          やさしい訴え/小川洋子