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旅に使うオートバイを考える②
埼玉の同級生が福岡にUターンする事が決まった2016年。
私達はバイク三昧キャンプ三昧じゃんと喜び勇む訳だが、九州という島は割とコンパクトに見所が詰まっている。
そこでもう1日500kmを超えてくるような移動も無いのではないかという話から、
「のんびり走れる小排気量車」
というテーマを設定し、各々バイクの制作に取り掛かった。
一般的に車よりバイク、バイクより自転車、自転車より徒歩と、移動速度が遅くなればなる程に旅の濃度は増すと言われる。
とはいえ自転車や徒歩まで速度を落とす勇気と体力の無い我々は、結局原チャリに落ち着く訳だ。
私が選んだバイクは、実家に転げていた高校生の頃通学に使っていたHonda Benly50Sというバイクだった。
選んだ、というよりこのバイクの存在により小排気量車という選択に落ち着いた、と言う方が正しい。
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高校生の頃から放浪癖を拗らせたように思う。
元祖冒険号、Honda Benly50S
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新車ワンオーナー車ではあるが18年も経てばこうなる。
バイク屋に勤めていた経験もあり、修理やカスタムは基本的に自分でやる事にしている。
旅先で予期しないトラブルに会うなんて、しょっちゅうだ。
旅に必要なのは先ずは整備力。無ければ経済力。
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ちなみに友人はHonda JAZZ
正確に計量した事は無いが、キャンプ道具を積載するとだいたい30kg増にはなる。
60kg位の乗組員だと90kgの負荷をバイクに掛ける事になる。しかも、長時間。
結果、
ものの見事にぶっ壊れた。
50ccベースの88ccボアアップというのは、基本的に馬力を稼ぐ為に高圧縮比の物が多く、熱的に非常に厳しい。
そんな物に荷物を載せて峠道を駆け上る。
壊れて当たり前だ。
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幸い走行不能にまでは陥らなかったが、やはりバイクが壊れるというのは気分が良くは無い。
ただ、壊れはしたが当初の思惑通りに、小排気量というのはとにかく何をしても楽しい。
そりゃそうだ、乗組員の頭の中は高校生の頃と大差無いのだから。
ここで諦める訳には行かない。
と思いながらも、働きながらそうじっくりバイクを弄る時間など取れなかったし、ちょっとした、キャンプや遠出に行くなら車に乗る事の方が多かった。
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しばらく出張やなんやと時間も取れずキャンプも行けず悶々とした日々を送り、本腰を入れた頃には2019年を迎えていた。
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更なる高圧縮比のエンジンになってしまった。
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図らずして高出力を得たエンジンは燃費も悪く、9Lのビッグタンクを装着されるも航続距離は300kmを切る。
荷物の積載を見越してサスペンションも延長された。
明らかに何かを間違えた。
どうせ変えるならアップグレードを、みたいな考えを早くに捨てるべきだった。
組み上がったバイクは別の何かだった。
もちろん、自分で組んだバイクだし乗っていて楽しいし速い。だが私は速さを求めた訳ではない。
とはいえ、せっかく組んだバイクを使わない手はない。
これはダメだと決を下すのもまた、自分自身なのだ。
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先ずは様子見に近場で済ます。
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勘所、みたいな物が分かってきて、どう言う状況でも乗れるようになって来た頃、私はコイツと旅に出る事にした。
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当初の目論見からは外れたが、これはこれで面白い。
例えて言うなら2ストロークのバイクのようだ。
低回転と高回転で明確にキャラクターが違う。
荷物を積んでもそこそこ走るし、求めていた感覚にかなり近い。
しかし高出力化の代償として、明らかに振動が増えた。
最初はノリで組んだエンデューロ用のタイヤも振動に追い討ちをかける。
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ちょっとそこまで乗る使い方ならいざ知らず、あくまでも目標は旅するバイクなのだ。
トータル10日間、2000km近く走って四国を一周し、マフラーステーが振動で折れて無くなった。
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悪くはないけどダメだったわと残念会。
福岡に帰った私を見て、父が言った。
「ホンダが新しいバイクを発表したぞ」と。
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CT125 ハンターカブだ。
ふーん位に聞き流して、暇があったら見に行ってみるよ、と答えた。
つづく